数々の有力選手を指導する長光歌子先生が
フィギュアスケート界を楽しく語ります!

歌子の部屋

vol.23

対談企画 ゲスト:佐藤操先生

田中刑事選手の「千と千尋の神隠し」など個性的な振付けに定評がある振付師、佐藤操先生にお話を伺いました。

2017.10.16

佐藤操先生
佐藤 操(さとう みさお)
佐藤 操(さとう みさお)
横浜銀行アイスアリーナ所属の振付師。佐々木彰生さんのプログラム全般や佐藤洸彬選手の「ボレロ」、三宅星南選手の「アフロサーカス」、田中刑事選手の「千と千尋の神隠し」など個性的な振付けを行っている。

佐藤操先生について

歌子(以下:歌)先日は、林(祐輔)先生と一緒に会食楽しかったですね。

佐藤操(以下:佐)こちらこそ本当にありがとうございました。歌子先生とたくさんお話もさせていただき盛り上がりましたね!スゴく楽しかったです。

(佐藤)操先生と言えば、私は佐々木彰生さんの振付けやコーチをされていて、プログラムが非常に素晴らしくとても印象に残っています。

彰生とは二人三脚でやってきたので、苦労もありましたが、スゴく色々な経験をさせていただきましたし、彼には頭が上がらないですよね。本人の前では言えませんが…(笑)。私が彼の振付けを始めの頃、まだ振付師というスタイルがそこまで確立している時期ではなかったですし、彼には「これをやると首の筋が痛くなる」だとか「ジャンプの前に何も入れないでください」って言われたり色々格闘して育てられましたね。最後の方は何も言われなくなりましたね。

彰生さんは、ダンスも踊れますし独特な魅力のあるスケーターですよね。先日の氷艶(アイスショー)でも拝見しましたが、彼はファンからもすごく人気がありますね。

ありがたいことですね。彼のダンスは、持って生まれた才能みたいなものですね。

エンターテイナーだと思います。それを目覚めさせたのは操先生だと思いますよ。

ありがとうございます。彰生は、凄く良い時期にスケートをやって育っていけたことも良かったと思います。髙橋(大輔)君がいて、小塚(崇彦)君や織田(信成)君がいて、三者三様の色の違う選手たちがひしめき合っていた時代にやってこれたことで、彼なりのスケートを模索できたんだと思います。彼は、大ちゃんのことが昔から大好きだったんですよ。選手時代は、大ちゃんの演技をよく映像や生で見たりしていました。大ちゃんがタンゴをやった時には「俺もタンゴありじゃないですか?」って身内のショーで披露したんですけれど、後から動画を見てすぐに「俺タンゴ辞めます!」って言っていましたね(笑)そういえば、先日はこの「歌子の部屋」で彰生がお世話になりました。対談の前に、私のところに連絡がきたんですよ。滅多に連絡は来ないのに、「僕、歌子先生と対談するんですよ!」って言って、私は「何かの間違いじゃないの??」って答えたんですよ(笑)。

新米コーチとして、大変そうですがとても充実している様子でしたよ 。

そうですね。私は何度か彼のコーチをしている姿をこっそり観に行ったのですが、普通に生徒さん方を教えていましたね。その時彼と話したのですが、平池(大人)先生に振付けを頼まれて、ある生徒さんの振付けを作ったらしいんです。「僕が振付けしたんですよ!」って自慢されました。

すごいじゃないですか!

それでも「僕がやった方が全然上手いですけどね。」って一言多い感じでした(笑)。

(笑)。

実は私、昔彼に何度か「振付師にならないか?」って誘ったことがあるんです。でもその当時は「僕は先生みたいに考えるのは得意じゃないです。」って言っていたんですよ。

へー、そうなんですね。

彼のことは影ながら応援していきたいですね。今は大阪の慣れない土地で、お休みも少ないですし大変だと思いますけど、彼だからこそ教えられることもこれから出てくると思いますし、若い選手たちに引き継いでいってもらいたいと思います。

振付師という仕事について

操先生は振付けをする時、どんなことを気にされていますか?

私の場合は、選手のことをしっかりとリサーチしたいタイプですね。何が得意なのかをしっかりと把握した上でジャンプを飛ぶ順番を考えたり、スピンに関しましても回転速度によって振付けを変えています。あとはできる限り選手やコーチの方と事前にお話をしたいですね。やりたいことやイメージ、コーチの方の方針もありますし、そういったことを共有していきたいと思っています。それと私はなによりも私が振付けしたプログラムを選手自身が好きになって欲しいと思っています。

選手たちは、こういう演技をしたいとかオーダーを出してきたりするものですか?

そうですね。上のクラスの選手に関しては、比較的自分で意思を持ってオーダーをしてくれますね。

そうなんですね。(髙橋)大輔の場合は、自分の表現の幅を広げるために振付師の方に全面的にお任せすることが多かったですね。ジャンプの順番や種類はある程度、私と大輔と本田(武史)先生で決めていました。

そうだったんですね。

操先生は、彰生さんのプログラムも彼の魅力を生かして素晴らしいですが、三宅星南選手のエキシビションのアフロサーカスや、佐藤洸彬選手のエキシビションの肉襦袢ボレロなど斬新な振付けも魅力的ですよね。

ありがとうございます。なぜかそう言ったオーダーも集まってくるんですよね(笑)。

振付けへのこだわり

操先生の場合、選曲はどのようになさっていますか?

元々私は(佐々木)彰生の振付けをしていた時、曲目は全て私が提案していました。その頃は、曲を色々かけて似合いそうかどうかを考えていました。当時はスタッフというような立場でしたので、振付師というようなスタンスではなく、じっくり時間をかけて楽しんでいました。その頃から変わっていませんが、「この選手がこの曲で踊ったら面白いな~。」などを考えるのはスゴく好きです。

操先生は選曲が好きなんですね?

そうですね。今でもコーチの方から「この選手はこんな子だから、こんな感じの雰囲気を出してほしい。」なんて言うオーダーがあると燃えますね。

その他にこだわりなどありますか?

トータルコーディネートというか、振付けや曲だけでなく、衣装について考えることもあります。例えばコーチの方が「この選手は赤が似合うと思うから赤が似合うような曲にしてください。」とか「今年はこの選手は白いスーツでこういう感じでやりたい。」いうオーダーがあったりもします。そういった時は、衣装さんと調整を行うこともありますし、衣装さんに相談をしにいったりすることもあります。そういうのは、本当に面白いと思います。

色から始まるのも凄く斬新!初めて聞きました!

衣装もとても大事だと思いますよね。戦略的な部分で例えれば「今年はオリンピックシーズンだから、きっと重い色が多くなるからあえて、黄色っぽい感じで!」といった感じで仕事が始まることもあります。彰生の振付けや衣装は、そう言ったところで誰にもかぶらないようにって思いながらやっていました(笑)。

振付けだけでなく、引き出しの広さも操先生は、本当にすごい!

長光歌子(ながみつ うたこ)
長光歌子(ながみつ うたこ)