数々の有力選手を指導する長光歌子先生が
フィギュアスケート界を楽しく語ります!
歌子の部屋
vol.22
今シーズンの展望
歌子先生に2017-18シーズンの展望について伺ってきました。
今シーズンの影響
■今シーズンは世間からの注目もいつも以上になると思いますが―

フィギュアスケートは日本で人気のスポーツですので、シーズンはじめから何かと注目されます。ですので、どうしても選手たちは出場する全ての大会を全力で挑まないといけないですよね。それはとても大変なことだと思います。フィギュアスケートの試合は、体力や技術だけでなく、集中力やプレッシャーが常についてまわるものです。それは、演技している選手にしか分からない異次元の世界です。そういう世界で戦い続けるというのは並大抵のことではありません。
その中で選手たちはシーズンのプランとして、それぞれピークの持っていく大会が違うと思いますが、今シーズンはやはりオリンピックの選考会も兼ねている、全日本選手権に最大のピークを持っていく選手が多いと思います。注目されている選手達は、GPシリーズに2戦出ると思いますが、そこでのプロセスに関して周りの方々には見守って欲しいですね。
GPシリーズやGPファイナルの成績で、選手たちのそのシーズン全ての技量が全日本選手権が始まる前に、なんとなく風聞として出来上がることがないよう願っています。
■今シーズン、女子ではトリプルアクセルに挑む選手が多くなりそうですね―
ジュニアの紀平梨花選手がトリプルアクセルを着氷したことで、選手たちは「自分もできるんじゃないか」という感じになっていると思います。『できない』と思うのと、「できるかも」と思うことは大きく違いますよね。もちろんトリプルアクセルができたからといって勝てるものではないですが、女子は今3回転-3回転のコンビネーションジャンプが普通になってきて、ジュニアの選手たちのレベルも上がっていますよね。ロシアの女子のジュニアの選手が4回転のコンビネーションジャンプを成功させている動画も最近目にしました。平昌オリンピックの次の中国でのオリンピックでは、ひょっとすると女子でもトリプルアクセルや4回転ジャンプをトライするのが当たり前になっているかも知れませんね。今、私たちは若い選手達を教えていますが、これからの4年間は全く予想がつきません。
でも私は、技術面ばかりを詰め込んで余裕がない構成になってしまうと、演技の質が下がってしまうのではないかということが心配です。もちろん採点競技なので点数を取ることは大事ですが、やはりフィギュアスケートの素晴らしさは、『演技を魅せる』という部分だと思います。そこが疎かになってしまう事が、フィギュアスケートを面白くなくしてしまうのではないかと心配になります。
■若い世代の選手たちには、進化し続けるフィギュアスケート界で、何を感じていって欲しいと思いますか―
日々技術は進化していくでしょうから、その流れや空気は常に感じて練習していかなければなりません。またその技術を成功させる体作りも必須ですね。しかしフィギュアスケートの根幹はスケーティング。その部分をおろそかにせず、また様々な異種の芸術に触れ自分の内面の厚みを増やし、表現をするときの豊かな感性を磨いて行って欲しいと思います。
そして、平昌オリンピックで活躍する先輩たちの輝かしい場面や爆発する感情、大会全体を通しての熱狂などのエネルギーを肌で感じて、「同じ舞台に上がりたい!」という気持ちを持つことも、大きなパワーになりますね。
- 長光歌子(ながみつ うたこ)