数々の有力選手を指導する長光歌子先生が
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歌子の部屋

vol.21

対談企画 ゲスト:平井絵己先生

マリオン・デ ラ アソンション選手と共に5月に引退、これからは若手の育成を目指す平井絵己さんにお話を伺いました。

単身フランスへ

平井絵己先生

今はフランスと日本と拠点はどちらに置いているのですか?

半々くらいですかね。でもフランスにいることが多いですね。リヨンに渡ってもう6年になります。

大学院の時にリヨンを選んで渡仏しましたが、どういう経緯だったんでしたっけ?

私は日本で2人の選手とパートナーを組んでいたんですけど(湯澤綾人さん・水谷太洋さん)、リヨンに行くきっかけになったのは、有川梨絵先生と宮本賢二先生に勧められたからです。その当時は水谷さんとパートナーを組んでいて一緒にリヨンへ行きました。でも彼が現地で練習中にケガをしてしまって、中々復帰ができなくてパートナーを解消することになったんです。それで彼は帰国したんですが、私はまだリヨンでアイスダンスを続けたかったですし、現地の先生もとても温かい方だったので、リヨンでパートナーを探しながら練習をしていました。

一人で大変だったんじゃないですか?

大変だったと思います。けれど、ホームシックになりかけていた頃にちょうど歌子先生と大ちゃん(髙橋大輔)が来てくださって、すごくうれしかったですしパワーをいっぱいもらいました。先生たちが帰られた後に、マリオン(・デ ラ アソンション)と出会い、一緒に滑ったら相性が良かったのでパートナーを組むこととなりました。

絵己ちゃんが教えていただいていたミュリエル・ザズーイコーチは、とても良い先生ですので私たちも安心していました。世界中の沢山のコーチとお会いしましたが、ミュリエル先生は素敵なマダムという感じで好きなコーチの一人です。
フランス語は、現地で勉強されたのですか?

はい。本格的に覚えたのはマリオンとパートナーを組んでからだと思います。パートナーもレッスンもフランス語だったので、リンクの中と、あとは本で勉強しました。皆さん英語も喋れるのですが、熱が入ってくるとフランス語になってしまうんですよね(笑)。

それは大変!!

そうですね。語学とコミュニケーションには一番苦労しました。マリオンとパートナーを組んですぐは全然フランス語が話せず、彼が話しかけてくれるのですが理解できなかったので全く会話はない状態でした。でも、アイスダンスやペアのカップル競技は根本的にコミュニケーションがないとダメじゃないですか。それで出来るだけコミュニケーションをとるようになって、そのうちにお互いのキャラクターや個性も理解できるようになりました。私はあまり自己主張しないタイプだったのですが、主張しないと相手も理解ができずに苛立ってしまうので、ちゃんと自分の意志を主張するようになりました。それからはマリオンとも息があってきて、表現も共有できるようになったと思います。

日本人は我慢して黙ってしまうことが多いですからね。

そうですね。マリオンは優しい方だとは思うんですけれど、ステップで合わなかったりするとガーって言ってくることはありましたね。そんな時もただ黙って相手の意見を聞くだけじゃなくて、自分の主張はしっかり相手に伝えることが大事だって思いました。

すごいですね!

私は強い女性ではないですが、言わなきゃいけない時は言わないとダメだと思っています。

ニコライ(・モロゾフ)の所で大輔が練習していた時ニコライは、6~7組のカップルを受け持っていたのですが、あっちでもこっちでも氷上でケンカしていましたね。アイスダンスの先生ってケンカの仲介役も大事な仕事の一つなんだなとその時思いましたね(笑)。

ケンカを始めると練習がほとんど進まず、そのまま終わってしまうこともあります(笑)

引退・パートナーについて

昨シーズンをもって現役引退、本当にお疲れ様でした。

はい。ありがとうございました。2~3年位前から進退は考えていたのですが、中々納得のいく終わり方ができなくて今年まで続けていました。その期間マリオンともすごく話し合いました。それで、これまで目標を決めて続けてはいたのですが、昨シーズンは本当に最後になるかもしれないという想いがありました。その中で四大陸選手権に出させていただいた時、ミスは色々ありましたが、自分たちがずっとやってきたこと、やりたかったことがしっかりと出せたので、お互いにすっきり辞めれるという感覚が一致して引退することにしました。

パートナーの解消ではなく、引退を決意された理由は?

6年間という長い時間を2人で続けてきました。だからお互いが別の道を選ぶのではなく、2人で一緒に引退しようと意見が一致して、2人で引退しました。

絵己ちゃんとマリオンは本当にいいパートナーですね。

毎日ケンカはしていましたけどね(笑)。引退してからもリンクの上ではケンカになります(笑)。お互いのやりたいことを曲げられないんですよね。

そんなマリオンに今一言メッセージを送るとしたら?

そうですね。「私と組んでくれてありがとう」ですね。ここまで続くとは正直思っていなかったんですよ(笑)。やっていくうちにマリオンの事も良くわかってきたし、彼も私の事を理解してくれたから、ここまで続けてこられたんだと思うので、本当にここまで一緒にやってきてくれてありがとうという気持ちですね。

現役時代の目標と思い出のプログラム

フランス人のマリオンとずっとパートナーを組まれていて、オリンピックへの想いなどはなかったのですか?

もちろんオリンピックに出たいという夢は持っていました。でもだからと言ってパートナーを日本人に変えるという考えは私にはまったくありませんでした。マリオンと出会って凄くいい経験が出来たと思うので、オリンピックを目標にすることよりも、マリオンと一緒に踊ることの方が私にとっては大事なことでした。お互いに満足が出来るところまでアイスダンスをやりたいという気持ちがありましたので、オリンピック出場と同じくらいと言っては失礼かもしれませんが、素晴らしい経験が出来たと思います。

今までで一番思い出に残っているプログラムはなんですか?

2年前の全日本選手権(2015年真駒内アイスアリーナ)で踊った「トゥーランドット」ですね。あの時は演技がいつの間にか終わっていたという感じで、伝えたい表現や感情もしっかりと観客の方々に伝えられたと思いました。お客さんもそれを感じてくださったのかスタンディングオベーションしてくださって、本当に感動しました。

長光歌子(ながみつ うたこ)
長光歌子(ながみつ うたこ)