数々の有力選手を指導する長光歌子先生が
フィギュアスケート界を楽しく語ります!

歌子の部屋

vol.16

対談企画 ゲスト:林祐輔先生

現在コーチとして田中刑事選手などの指導を行い、歌子先生とは関大で一緒に指導に当たっている林祐輔先生にお話を伺いました。

2017.1.30

林祐輔先生
林 祐輔(はやし ゆうすけ)
林 祐輔(はやし ゆうすけ)
大阪府立臨海スポーツセンター・インストラクター、日本フィギュアスケーティングインストラクター協会ディレクターズスタッフ。現在コーチとして田中刑事選手などを指導。大学卒業後、選手から指導者に転向。歌子先生の下で過去は高橋大輔の指導も行う。

お二人の出会いについて

歌子(以下:歌) 二人の出会いについてですが、覚えていますか?

林祐輔(以下:林)たしか、僕が小学校6年生になる前の3月ぐらいだったと思います。その当時、シーズン中しか営業していないリンクで練習をしていて、4月からは練習する場所がなかったので、当時歌子先生がご指導なさっていた高槻のリンクに行くことになって、そこで初めて歌子先生にお会いしたと思います。

それから私の所で生徒として来てくれたのは、何年生でしたっけ?

中学校2年生の時ですね。その頃僕はバッヂテストの5級までは取れていましたが、そこからが難しくて…。歌子先生に習っている生徒さんに「どうやったらジャンプが上手く跳べるの?」って聞いたりしていました(笑)それで歌子先生のチームに移りました。

そうでしたね。(髙橋)大輔と出会ったのは、林先生が大学生の終わりのころに行った8月の夏合宿でしたよね?

大輔とは合宿の前に1度会っています。最初に会ったのは高槻のリンクでの練習中でした。歌子先生のレッスンが始まる前に軽く滑ろうと思って早めにリンクに行ったのですが、その時たまたま大輔が練習に来て滑っているのを見たんです。第一印象は「スケート上手いな!」でした。彼はとても僕の好きな滑りをしていたんですよ!それで、レッスンが始まる前に歌子先生に「すごく良い男の子を見たんですよ!」って言ったのを覚えています。

そうでしたね(笑)私もよく覚えています。

それが大輔との初対面の時です。その後に夏合宿で「高槻のリンクにいたよね?」ってしゃべりかけたら「はい!」って素直に返事してくれて(笑)それから仲良くなりましたね。

林先生が引退の年の西日本選手権は大輔も一緒に出場したんですよね?

そうですね。あの時、大輔はジュニア1年目だったと思います。その後に行われた福岡の全日本選手権も見に来てくれたのを覚えています。

林先生がコーチになった理由

林祐輔先生

林先生には本当に感謝しています。就活をして内定ももらっていたのに、それを蹴ってまで、(髙橋)大輔のコーチを選んでくれましたから。

そうでしたね。僕は大学に5年間行ったのですが、4年生でスケートは引退していて、5年生のときに他にバイトをするんだったらスケートの仕事を手伝いたいと思ったんですよね。だから就職活動をしながら大輔を教えたり、歌子先生のお手伝いをしていましたね。そ れからやっぱりスケートの仕事を続けたいと思うようになってコーチの道を選んだんです。

私はよく覚えているのですが、大輔がジャッジズセミナーのデモンストレーターに選ばれて、沢山のジャッジの前で演技をしなければならないのに、その時ルッツが急に跳べなくなってしまって。それで林先生に「ルッツの調子を戻して~!」って頼んで、必死で大輔も練習をして、無事にデモンストレーターの役割を果たすことが出来たんですよね(笑)

そうでしたね(笑)僕は大輔がいたからコーチの道に進んだし、彼がいなかったら一般企業に就職していたと思います。

お二人の今の関係について

林先生がコーチになってから、最初は一緒に高槻のリンクで教えていて、高槻のリンクがなくなった後は、大阪の臨海スポーツセンターで受け入れを頂き教えていたんですよね。その後に関西大学ができて、私は関西大学の方で指導するようになり、林先生はそのまま臨海スポーツセンターに残りました。

そうですね。7年くらいは臨海スポーツセンターで指導していました。その後西宮のリンクに移る時に、歌子先生と二人でチームとして教え始めたんですよね。「また歌子先生と一緒にコーチがしたい!」ってずっと思っていましたから、一緒に指導するようになり本当にうれしかったです。

私はただ後ろで見守っているだけですけど…(笑)

歌子先生が後ろにいるだけで、とても心強いです。

田中刑事選手が世界ジュニア選手権で銀メダルを獲った時は、林先生は臨海スポーツセンターで指導していた頃ですね。

そうです。

今でも忘れられないのは「よかったね~」って林先生に連絡したら、「前に大輔が世界ジュニア選手権で金メダルをとった時に帯同させてもらって、海外の試合を経験していたのが、役に立って刑事が結果残せました。本当にありがとうございます。」と言ってくれて…私はその言葉がとても嬉しかったんですよ。

本当に役に立ちました!刑事には大輔の時と同じことをさせたんです。それは、会場をいかに味方に付けるかということです。大輔が世界ジュニア選手権で金メダルを取った時、公式練習がものすごく朝早い日があって、その日の練習は昼からもう一回あるので、他の選手は全員パスし、朝練習会場に行ってみたら大輔一人だけの練習になったんです。早朝から会場の音楽係始めスタッフは全員スタンバイしてくれていました。大輔が時間一杯使って練習し、終了後リンクの中央で感謝のバウをしたらスタッフ全員が暖かく拍手してくれ、会場の雰囲気が大輔色に染まったとうっすら感じました。その経験があったから、刑事の時も2011年の韓国の世界ジュニア選手権ですが、フリー前日の公式練習で他の選手が練習を終えた後も、刑事には最後まで練習をさせました。続々と他の選手が引きあげて行く中、残り15分くらいは一人で滑っていましたね。そうしたら音楽係の方が、BGMに日本の曲をかけてくれたんです。練習が終わった時には皆さんが拍手してくれて。刑事にとっても、僕にとってもすごく良い気持ちで大会に臨めました。前日のショートプログラムは6位だったんですが、フリーでは、なにかが起こるんじゃないかって感じたんですよね。そしたら案の定フリーでは1位になって、結果銀メダルを獲ることができました。

長光歌子(ながみつ うたこ)
長光歌子(ながみつ うたこ)