NONFIX過去放送した番組

取材日記(3)

2002年2月15日 金曜日

武道館公演の日。今日のLIVEはDVD用に収録されるとのこと。
早めに会場に到着したので、うろうろしながら観察。
シンプルなステージの上手にはザックのマーシャルが4基セットされている。Bullseyeの模様が施されているので、これもシグネチュア・モデルか。
チケットはステージ下手側なのでちょっと残念。
客電が落ちた大歓声の会場に、カルミーナ・ブラーナが流れると、オジーをはじめメンバー登場。「I DON'T KNOW 」でLIVEはスタート。
ザックが例の白いレスポール・カスタムから弾き出すエッジの立ったリフと、透き通ったピッキング・ハーモニクスが気持ちイイ。
ギター・ソロは意識的にランディ・ローズが弾いたフレーズをトレースしているようだ。
「THAT I NEVER HAD」に続き、次は「JUNKIE」だな、とセット・リストを思い描いていると、なんと(!)「BELIEVER」が…。歓声は一段と大きな渦となってステージを包み込んだ。
帝王オジーは、「Let me see your hands !」、「Make a fxxkin' noize ! Louder !!」などと連呼しつつ、カエル跳びも健在だ。
アンコールでは、満月の夜だけの特典と思われた「BARK AT THE MOON」も披露してくれ、大興奮のままLIVEは終演となった。

(F)



2002年2月16日 土曜日

オジーとシャロンのインタビュー日。
取材スタッフと合流する前にお土産を物色。
ソニー・ミュージックのWEBにUPされていた来日中のレポートを参考にさせて頂き、シャロンには池袋限定"キティちゃん"グッズで決まり!
後にわかったことだが、ソニー・レコード・インターナショナルのT氏が、毎晩苦心して記したらしい。LIVE感溢れる爆笑レポートは必読。
<http://www.sonymusic.co.jp/Music/International/Special/OzzyOsbourne/>

オジーには「Dreamer」にちなんで「夢」の文字を表した屏風にした。こんなオーソドックスな品物にするのは結構リスキーでもあるが、ディスカウントしてくれるというので購入。
インタビュー会場のフォーシーズンズ・ホテルに到着。
スタッフと待ち合わせ場所のティー・ラウンジに行くと、M氏が待つテーブルのすぐ横のカウンターに、バイカー風の男が座っている(!)
わ!ザックだ!
なにやらツアー・スタッフと話しているが、さっぱりわからない。平静をよそおい、さりげなく観察すると、意外にもビールは飲んでいないようだ。
席についてドリンクを発注。ランディ・マニアのK氏は、当然アイスティ。ここのラウンジは、アイス・キューブをそのドリンクで作っているし、おいしい。
そこへシャロンが登場。
わ、若い!オジーのヒストリー・ビデオでしか見た事が無かったが、断然若く見えるし、キレイだ。
シャロンは軽くザックと談笑したあと、なんと!すぐ隣のテーブルに席をとったではないか。われわれのテーブルはシャロンとザックにはさまれた状態になり、さらに御大オジーが窓際の席に鎮座した時には、われわれの内なる興奮はピークに達した。愛娘ケリーの姿も見える。
そこへソニー・ミュージックのS氏とN氏が見える。
早速打ち合わせと思いきや、開口一番、今日のインタビューがキャンセルになったとの説明を受ける。
一瞬言葉を失うが、日本滞在中に機会を調整して下さるというお言葉にすがるしかないので、オジー・ファミリーを間近に見ながら、あえなく撤収。
本国アメリカで収録するはずのインタビューが流れて、来日公演中のスケジュールに組んで頂いているのだが、意思疎通がうまくいっていないらしい…。
翌日予定されていたザックのインタビューも一時白紙となった…。

(F)



2002年2月19日 火曜日

つ、遂にOZZYとSharonそれにZakkのインタビューができる!!
昨日までで2002年日本公演は終了。今日は次の公演に旅立つ前日である。
先週の取材延期で、今日のインタビューができるか不安ではあったが、無事取材許可がでてひと安心。
インタビューはこれからが本番・・・。

Zakk
取材の準備も終えインタビュー・ルームで彼を待っていると、廊下から「ガランガラン」という音が聞こえてきたと思ったら、Zakkと共にスタッフの1名がクーラーボックスを抱えて部屋へとやって来た。Zakkはビールを片手に。
いざインタビューを始めると彼は紳士な態度で真剣に質問に答えてくれて、見た目とは違った印象だった。
インタビューの最後、彼にサインを求めると自分のサインを書く前に"Randy Rhoads"としたためた後に自分のサインを書くのを見て、彼の優しさを感じてしまった。
日本のお土産として"ピカ○ュー"のぬいぐるみをZakkに渡すと、とても喜んでくれた。
その後アンプ無しではあるがギターを掻き鳴らし、我々の眼の前でプレイしてくれたのだ!(ん~、感動!!)

Sharon
髪を赤く染め、とても素敵な洋服を着たお洒落な彼女。
当然ではあるがSharonもとても丁寧に、そして時折ジェスチャーを交え我々の質問に答えてくれた。
Randyの才能は勿論、彼のやんちゃな性格や繊細な部分について笑顔で語ってくれていたが、インタビューの最後、「日本のRandyへメッセージを」と問い掛けると彼女は今までの明るい表情が一変し「ごめんなさい」と一言だけ答えると眼元から一筋の涙が・・・。
その涙からSharonがRandyをどれだけ愛していたか自分なりに理解したつもりだった。
私だけではなく、その場に居た取材スタッフは全員涙ぐんでいた・・・。
その瞬間はSharonの優しさに包まれた瞬間でもあった。

OZZY
今までも様々なインタビューにRandyとの想い出を語っているので、何かで読んで知ってはいるものの、OZZYを目の前にして彼が直接話しているのを聞くと、やはり何かが違う。
我々の質問にOZZYは「I can't・・・」と言いながら必死に過去のRandyとの想い出を手繰りながら答えている姿が非常に印象的だった。
特にOZZYが水玉Vのケースを開けた時の様子は、インタビュー記事として読むものより何倍ものインパクトを受けてしまった。
それと、今回のインタビューで初めて明かされた「Randyは電車のミニチュアを集めていたんだ」と話している時のOZZYも印象的だった。
その他にもRandyの素晴らしい才能や、作曲についてなど様々な思い出を聞かせてくれたが、OZZYがどれだけRandyを信頼し、尊敬し、懐かしんでいるかを感じさせてくた。
OZZYはインタビューの最後、「私は彼と過ごす時間をもてて光栄だったし名誉な事だ。彼はもう居ないから君達が私と同じ恩恵に与る事はできないけど、彼の音楽は生きている」とのコメントに全てが語られている様に思えた。

(M)



同2月19日 火曜日

先週に引き続き、再びフォーシーズンズへ。
ソニー・レコード・インターナショナルをはじめ、皆さんのご尽力を頂き、オジー、シャロン、ザックのインタビューの機会を得ることができた。本当に感謝!
昨日が日本公演最終日で、一行は明日ソウルに発ってしまう。その後はアラスカ公演だから、今日がラスト・チャンスだ。
ティー・ラウンジへいくと、ソファにまたザックの姿があり、2,3人の日本人とギター片手に談笑している。
我々も軽く打ち合わせをしていると、ザックが席を立ったので、後を追うようにインタビュー会場へ移動する。
意図せずザックと同じエレベーターになり、インタビューを担当するK氏が声をかけると、以前仕事をしたときのことを覚えていた様だ。
インタビュー会場の部屋で、一度自分の部屋に戻ったザックを待つ。
インタビュー収録はザックが最初で、次がオジー。最後がシャロンの予定だ。
彼等のスケジュール表を見ると、我々の後には、有名な音楽誌等の予定がズラリと並んでいる。最初からヘタを打てば、後へ悪影響が及んでしまう。
しばらく待つと、廊下の向こうから何やらガラガラと音が聞こえてきた。
ギター・ケースを2丁提げたザックの前を、日本人のツアー・スタッフがクーラー・ボックスを抱えて歩いてきた。中身はすぐ察しがついたが、何とも豪快である。
控えの部屋にギターを置いてきたザックは、すぐさま缶ビールをプシューッ!
ザックは終始穏やかで、無事インタビューは終了した。
控えの部屋で、「お子さんへのお土産に」とピカチュー・グッズを渡すと、「これはオレが貰う」と、喜んで頂けたようだ。

2年ほど前だったか、ザックのソロ・ユニットである「BLS」が、クアトロでプレイしたのを観たことがある。その時すでに「ザックはプロレスラーになっちまった」と思っていたが、ヒゲに埋もれた顔は意外と小さい。それにT氏のツアー・レポートで書いていたようには、臭くない! フロ入ったんだな。
ザックが提げてきたギター・ケースの中は、1本は例の白いカスタム。もう1本はメイプル・ネックに迷彩ペイントのカスタム。こんなのあったっけ?と思っていると、後に黒いのをリフィニッシュしたものだと判明。
ソファに座ってギターを弾きだすザックを、かぶりつきで観る。
生音で弾くかなり速いパッセージでも、1音1音が粒立っている。
フィンガー・ピッキングを多用するのも間近で観た。
延々と弾き続けるザックは、我々の存在を全く意に介していない様だが、構わず質問。
ゲージを尋ねると、「64」と返ってきた。え?ロー・Eが0.64ってこと? 例によって弦はテイルピースを逆向きに張っているし、テンションは緩いはずだが、ベースじゃあるまいし。聞き違ったのだろうか?
最後に記念撮影もおねだりして部屋を後に。

次はオジーだ。
30年以上、ロック・ヴォーカリストのカリスマとして君臨し続けてきた男である。
心地よい緊張感の中、オジーが部屋にはいって来た。
薄いブルーのサングラスに黒装束のオジーは、トランスレーターのK氏といきなりハグ。以前にインタビューされたときのことを覚えていたらしい。
これだ! やっぱり、これなんだ! この瞬間、いいインタビューになるに違いないと確信した。
ソファに腰を下ろしたオジーの左手指に「OZZY」のタトゥーを確認。右手指にはユニオンジャックのリング。「本物だ!」
インタビューが始まると、時折はさまれる簡略された和訳意外には、ほとんど何を話しているのか不明。
しかし、身振り手振りをまじえて語るオジーの豊かな表情や、思わず立ち上がって、ランディとの出会いの件を語ってくれた時には、確信が現実になったと実感した。
物事に長時間集中できないといわれているオジーだが、インタビュー後、スタッフが手にしていた「ランディの写真集」を、いつまでも食い入る様にながめる姿が、強く印象に残った。

シャロンのインタビューまでには間があったので、ファミレスに移動して昼食&休憩。
オジーに敬意を表して(?)カレーライスを注文、ザックとオジーのインタビューでスタッフ一同盛り上がる。
「ねえ、ねえ、あの時オジー、なんて言ってたのお?」
くせのあるオジーの英語は、留学経験のあるスタッフでもわかりにくかったらしいが、いいインタビューが録れたのは間違いないようだ。

部屋に戻ると、時間通りにシャロンが笑顔で登場。
某誌のインタビューで、ランディのことを質問され泣いちゃったらしいが、今日も美しく、凛とした振舞いは、やはり長年オジーのマネージメントとして切り盛りしてきたキャリアからだろうか。
単語1つ1つが聞き取りやすいし、順調にインタビューが進行しているのが自分にもわかった。
インタビューも佳境に入り「ランディへの想い」について尋ねると、シャロンが急に泣き出してしまった。「20年」という単語に、これまでずっとこらえていたに違いない想いが、一気に噴出してしまったようだ。やり手として知られ気丈なマネージャーが、一転して、かよわい女性に変わってしまった、そんな瞬間だった。目頭が熱くなった。
インタビュー後に、ランディとこの番組に対する想いをシャロンに伝え、固く手を握りしめながら、何度もお礼を言った。
廊下へ送り出すと、オジーと長男ジャックの姿があり、一緒に部屋へ戻って行った。

インタビューの余韻をかみしめながら、この人たちに、ずーっと現役で頑張り続けて欲しい。と心から願った。

今日で取材はひと通り終了。これからやることは山ほどあるが、番組の為、いやランディの為に、協力してくださった皆さんひとりひとりに報いるためにも、決してヘンな番組は創れないと決意を新たにした。

(F)



2002年3月30日 土曜日 深夜

当日もCS用のVTR編集で夜まで作業をしていたが、一段落し同僚に連絡を入れると近場の居酒屋で飲んでいるとの事。早速合流し一杯。
たまたま後ろの席に陣取っていた10名以上の団体が、何とバンド仲間の集まりと聞いてRandyの事を聞いてみるとファンだと言うので、私は今日の番組の事を話すとすっかり盛り上がってしまった。その時の皆さん、番組を見てくれたのかな~?
「ランディ・ローズに捧ぐ」は、是非とも録画ではなく放送を見たかった。しかも何処で見るか悩んでいたが結局は居酒屋で合流した同僚と知人の家にて数人で見る事にした。
私はL.A.にて撮影し、Sharonが泣いてしまうシーンも幾度となく見ているのに何故か1人では見る気がしなかった。何となく1人で見るのは寂しかったのだ・・・。

ドキドキしながら時計を見ている、編集で見慣れたオープニング画面が! 制作に参加してくれたG氏も一緒に居るのだが、彼も画面を見ながら「うんうん」と頷いている。多分彼と私は同じような印象で番組を見ているのだろう・・・。
無事、放送も終わり同僚と話し込んでいたが、フジテレビのホームページの書き込みが気になり覗いてみると、番組を見た視聴者からの書き込みが。
皆さんからのメッセージを見て、やっと肩の荷が降りた気分だった。

(M)



後記:
最初にも書きましたが、この番組を制作するにあたりかなりの月日を費やし、紆余曲折ありながらも"After Hours"の使用をSharonに理解して頂き、出演者のコーディネーションをして頂いたHyper ImageのJunさん、余りにも急な依頼を受けて頂いたフェルナンデスの小島氏、制作協力して頂いたSONY MUSICさんとUDO音楽事務所さん、日本での取材の通訳をして頂いた方々、編集プロダクション及び各社様、番組にナレーションで華を添えて頂いた八木亜希子さん、それに何よりも番組に協力して頂いた出演者の皆様と、我々を快く迎えて頂いたMrs.Rhoadsに感謝しております。

三村 直幹