NONFIX過去放送した番組

水玉V

■ 特報!「水玉V」の完全レプリカ製作決定!

今回の番組放送を記念して、Mrs.ドロレス・ローズが、「水玉V」のレプリカ製作を喜んで承諾して下さいました。
フェルナンデスのスタッフが、インタビュー時に“実物”の水玉Vを採寸!

カール・サンドバルの承認も得て、限定販売を予定されており、販売時期・価格等はまだ未定とのことです。
また、売り上げの一部はドロレス・ローズの管理のもと「ランディ・ローズ基金」に寄付されるそうです。

<お問い合せ先>
株式会社フェルナンデス /ランディ・ローズ係
E-mail:kojima@fernandes.jp

■ 「水玉V」レポート

はじめに…

当番組の中でランディ・ローズの遺品として紹介し、ファンの皆様にも最も興味があると思われる「水玉Vギター」について放送できなかった部分、そして水玉V完全レプリカ製作についてお伝えしていこう。

そもそもこの水玉Vは1979年7月にランディ本人からのオーダーにより元シャーベルのギタークラフトマンだったカール・サンドヴァル氏によってカスタムメイドされた、まさに1本きりのワンオフである。そしてクワイエット・ライオットのステージでも愛用されランディのトレードマークそのものといった印象を受けるギターだ。オジー時代もレスポールとともにその使用頻度は他のギターに比べ非常に高い。

長らく安眠していたそのギターが目をさます日がやってきた。「ランディ・ローズに捧ぐ」取材中のL.A. 2002年2月4日である。

とても長い月日で企画されていた当番組、一時は流れてしまうのではないかという状況にさえなったが、今現実として直後に起きるであろう貴重な体験がとても信じられない。
緊張しながらも万全の体勢そして気持ちを整えてミューソニアへ向かった。


■ ミューソニアへ

まず迎えていただいたのはランディの母上、ドロレスと対面、私がランディの生前からの大ファンであることを伝えると満面の笑みで歓迎していただいた。
あとからお姉さんのキャシーがあらわれるとドロレスは「彼は強力なランディ・ファンなのよ!」とキャシーに紹介してくれた。とても嬉しかった。
そして兄のケルが大きなギターケースをもって現れた!ケースにはRANDY RHOADSの文字!ランディと共に長いツアーをまわった証しでもあるたくさんのステッカー!
まさしく「POLKA DOT Vだ!!」とわかったが、大事な仕事であるインタビューを終えてからゆっくり見せていただこうと早まる気持ちをおさえた。

インタビューも事前にねってきたネタ、そしてアドリブもいれて無事終了!

そして、今回番組の放送を記念して水玉V完全レプリカ製作、限定発売を大変喜んで承諾していただいたドロレスに感謝の気持ちを伝えつつ、いよいよギターの採寸をさせていただくこととなり、私はインタビュアーからギターメーカーの人間にスイッチを切り替えた…。


■ 水玉Vと出会う

気持ちを整理し、重いギターケースのふたを開ける!
当時の空気を思わせるにおいとオーラを感じた。
当たり前ではあるが、やはり今までさんざん水玉Vの写真を見てきた通りの、まさしく「本物!」という印象を受ける。
ヘッドの先端など、思っていたところにキズがあることも確認。夢をみているのではない!
まず、驚かされたのはボディ全面に入った塗装のクラック。誰にも弾かられず20年間、ハードケースに保管され、15年前に「CRAZY TRAIN」のプロモビデオの撮影に使用されて以来と思われる。

近年、数本製作されたという、本家本元のサンドヴァル製の水玉Vの実物を見たことがあったが、やはり「本人使用の本物」は現代のそれとは全く違っていた。
無論、そのサンドヴァル製は本物がセットネックに対してスルーネック構造を採用するなど、そもそも復元という次元でなく、現在の作り手のこだわりから別物の仕様になっているのだと思うのだが。
その証拠に現代のものは、ネックがボディに深くジョイントしてあるためピックアップ、ブリッジがV ボディの下部に位置するので正面からみるとあからさまに「顔」がちがうのである。
現代のものはポジションマークが無いはずの1フレット上にもあり、また蝶ネクタイのインレイの形もちがう。
指板もエボニーを採用し高級感がある。無いはずのトラスロッドカバーもヘッド上にある。
ブリッジもローラーサドルを採用しチューニングを安定させている。
ギターとしてのクオリティは高そうだ。が、しかしである!
ますます本人のものを忠実に再現し後世に残さなければいけないという自分なりの責任感が高まった!


■ いよいよ採寸

採寸にあたっては、このギターにキズがつかぬよう万全の注意をはらい、スチールメジャーやプロトラクター、ステンレススケールの形態や大きさにもこだわり、日本で買いなおしてきた。念のため接地面には保護も細工した。
そこまでしなくても大丈夫だと思われるかもしれないが、これも聖なるものに対する敬意でもある。

採寸作業はまずスケール、ゼロフレットから12フレットトップを計り、念のためゼロフレットからサドルトップも計った。
瞬間、いままで想像されていたスケールと微妙に違うことが発覚した!
続いてゼロフレット幅、21フレット幅、ピックアップの中心でフロント、リア間の距離、コントロール類の距離間、ボディ厚、ヘッド形状、水玉の径などありとあらゆるところをサイジング。特にネックジョイント部などは、多方向から念入りに写真を撮り検証した。

思いのほか時間がかかったが、そんな最中もドロレスはやさしい笑みで見守ってくれていた。

ネックグリップなどは人の感覚によるところが大きいため、握らせていただいて重ねて確認。ランディの分身ともいえるこのギター、数々の名曲がここから奏でられていたと思うと緊張もはしったが…。

次の瞬間、思わず鳥肌がたった!!

ギターを弾く際に、丁度右手がのる部分のエスカッションのスクリューや、ブリッジ・サドルの片側イモネジだけが他にはない錆がある!
何とも言えないリアルさに胸が締め付けられる!

そしてパーツをチェックしていく…。
やはりピックアップはフロント ディマジオPAF、リア 同スーパーディストーションが搭載され、バックトレモロパネルはストラトキャスターなどの流用でなくオリジナルが作られていた。
ボリュームノブは白から黒に交換されたスピードノブ。トグルスイッチノブやプレートも黒だ。
ペグはシャーラーのM6 クローム。ストラップピンはシャーラー・セキュリティロック。シェクターのブリッジ。
ネックは御存じの「あれ!」を加工しセットアップされている。
ヘッドストックはとても斬新なデザインだがナットからペグにいく弦は6本ともまっすぐに張れるようにデザインされ、チューニングの安定にかなり貢献されている。

指板の使い込み具合やフレットの削れ具合、弾きキズ、ネック裏の塗装の変化等、言葉で表現することが難しいが見れば見るほどいろいろと感じていく。

不思議なことであるが、いままで数多くの有名海外アーティストのギターを見てふれてきて思ったことが、やっぱり愛情が注がれてきたギターは、弾き手にいかに愛されてきたかがうかがえる「何か」を共通して感じる。そしておのれの歴史をその姿で表現している。まさに生き物である。


■ レプリカ製作にあたって

採寸が無事終了した時、メーカーの人間なりの頭が働き、これを再現するには大量生産のそれとは違うこだわり製作上の「コスト」が頭をよぎった。
より多くのファンにいきわたるよう価格はおさえたい、しかしこだわると、どうしてもお手軽価格にはならなそうである。
しかし、できる限り本物に近づけたい!幸いにもファンの代表としてこのギターを分析することができたのだから、無駄にしたくない!
多くのファンに『かたち』として手元に届けられればと思った。
また、このボディのクラック(塗装のひび割れ)も再現するかどうか一瞬考えたが、天国のランディがそれを望むかと考えそれはやめた。
ランディが愛用していた時には割れていなかったし…。

パーツは前期と後期で交換されているが、本人の好みで交換されたのだと思うのでこれは現在の状態のブラックパーツ仕様にしようと思う。
もちろんヘッドにブランドロゴはいれない。

私はこの番組制作および水玉V完全レプリカ製作販売は営利目的ではなく、次世代にランディ・ローズのことを伝えたい!そして何かを残したい!
そのことによって自分なりのランディ・ローズへのトリビュートになればと思ってとりくんでいる。
そう!番組の制作も常に遺族と本人のことを考えてとりくんだつもりだ。
この水玉V完全レプリカ限定発売の売り上げの一部はドロレス・ローズの管理のもと「ランディ・ローズ基金」に寄付をする。

そしてオリジナル製作者のカール・サンドヴァル氏に敬意をあらわし、今回のレプリカ製作の意図を話したところ心良く了承していただいた。カール・サンドヴァル氏には感謝の気持ちでいっぱいである。

そしてローズファミリーならびにドロレス・ローズへの感謝の気持ちは言葉ではいいつくせない。

当然、完全レプリカギターが完成したあかつきには、その1本目が親愛なるランディ・ローズのもとに届けられるのは言うまでもない。

 

続く…。

HIROSHI KOJIMA / Fernandes Co.,Ltd.