外堀沿いに進むと海に面したベンチを発見。ベンチは全部で10カ所。それが一定間隔で配置してある。
僕とA子は、北西側のベンチに座り、コンビニで仕入れたおにぎりを頬張りながら海を眺める。
東の方角に見える第6台場は立ち入り禁止になっている。そこは植物や野鳥のサンクチュアリ。
そして、僕らがいるこの島には、それと対峙するかのように砲台跡が残されている。
「この砲台って、ペリーの黒船来航にびっくりした徳川幕府が、江戸を護るために作ったものなんだ。でも、結局、使うことはなく、そのままになっちゃったんだけどね。まあ、それがあるから、この台場っていう場所があるんだけど」
レインボーブリッジから逆に位置するベンチには何組かのカップルがいる。
僕たちが座った南西側からは、フジテレビやアクアシティなど、お台場の風景が見渡せる。
いよいよ凹みの部分に降りてみる。ほとんど舗装された感じはなく、少し道が急になっている。
なんとか降り立った僕らは、まず中央にある陣屋跡へ足を向けた。
「この石が並んでるのは?」
「陣屋の跡なんだって」
「あっちにある石積みは何かしら?」
「あれは大谷石で作ったキャンプ用の竈(かまど)で、火薬を使っている場所だから、陣屋とは別に、周囲と隔てられていたらしいね」
他にも、洞穴のような弾薬庫跡や井戸跡がある。
都会の喧噪はすぐそこにあった。そして、この場所だけまるで時が止まったかのように、不思議な静けさに包まれている。
タイムスリップにも似た感覚と夕焼けのせいで言葉少なになった僕たちは、台場公園を後にした。
自由の女神のあたりまで戻ると、すでに陽は落ちていた。僕はしっとりとしたA子の背中を見つめながら声をかけた。
「もう少しいいかな。とっておきの場所があるんだけど」
「…うん。行ってみよう」
◎砲台跡
◎竈
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