技術局員が臨時災害放送局「女川さいがいエフエム」に技術支援
[2012年6月25日更新分]
女川さいがいエフエム東日本大震災後、被災した各地域に「臨時災害放送局」(臨災局)が開設されました。これは、災害時の被害軽減のため、地方自治体等が臨時かつ一時の目的で設置するFMラジオ局です。
このうち宮城県牡鹿郡女川町にある「女川さいがいエフエム」では、2011年4月の開局から同町の住民に給水・炊出し等の救援情報を提供し、自治体からのお知らせや防災情報、住民を元気づける番組等の放送が続けられています。
開局当時のスタジオ
今回の復興には長い時間を要することから、各地の臨災局が史上最長の運用期間に入っており、ボランティアスタッフを中心に維持される「女川さいがいエフエム」でも日々の負担軽減が運用継続の大きな課題となっていたそうです。
そこで同局の天谷さんは、手動で行っていた番組の送出を、一般の放送局のように「APC」(Automatic Program Controll system:番組をスケジュールに従って自動送出するシステム)で自動化できないかと考え、その設計経験のある私をFacebookを通じて知り、臨災局が使える安価なAPCがないか相談するに至りました。
一般的な放送局が使っているAPCは、高機能ですが大規模で高額でもあるので簡単に導入できる訳ではありません。さらに、私も現在は送出部門に所属している訳ではありません。ただ、幼い頃からソフトウェア開発の経験があり、日曜プログラマーとして個人で簡易的なAPCの研究や自作を行っており、フジテレビ社員として、これは<放送技術を生業に放送技術で生活している者の社会的責任である>と感じ、協力したいと考えました。
そこで、自作したAPCを「女川さいがいエフエム」に無償提供することにして、休暇を使って同局の機器に合わせた最適化を行い、2012年5月にこれが完成したので現地に導入して来ました。
今回の協力によって、同局では手動で行っていた番組送出が自動化され、さらに番組スケジュールの管理もコンピュータで行えるようになりました。これによりスタッフの運用負担が軽減し、今後も女川町の防災や復興を支える地域の身近な臨災局として運用が継続されるよう願っています。
なお、本システムのAPCの開発と臨災局への導入の取り組みについては、2012年6月15日に行われた「映像メディア学会の放送技術研究会」でも報告を行って参りました。
文:伊藤正史(フジテレビ 技術局放送技術センター回線管制部)