2022年度 支援国

モザンビーク共和国

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モザンビーク共和国

現地取材レポート

懸命に生きる子どもたちと出会って

フジテレビアナウンサー 堀池 亮介
2022年10月18日、19日『めざまし8』放送

現地取材レポート

2022年9月4日。
私は人生で初めてアフリカ大陸に降り立ちました。
アフリカの南東部に位置し、南北に2,500kmも続く美しい海岸線を有している国、モザンビーク共和国。国土面積は日本の約2倍。飛行機の窓から外を見てみると、広大な土地が延々と広がっていました。
日本を出発して約30時間。私たちは首都マプトに到着しました。ここはインド洋に面した港町。街中には歴史的な建造物とともに近代的なビルやホテルが立ち並び、マーケットはたくさんの人で賑わっていました。
都市部は大きな発展を遂げているモザンビークですが、実は世界最貧国の一つとも言われています。

首都のマプトから北に約1,500㎞。そこはそれまでいたマプトとはかけ離れた環境。移動中の道は舗装されていなくガタガタで、あたり一面に草原が広がっていました。その中に小さな家がいくつも集まった集落がありました。それがマグマノ集落です。家と言っても土を固めて作った壁に茅葺屋根。電気やガス、水道といったインフラ設備はなく、家の中は日中でも真っ暗。
そんな集落を歩いてみると至る所にサイクロンの爪痕が残っていました。家は跡形もなく崩れ落ち、巨木のバオバブの木は根元から裂けるようにして折れてしまっています。学校の屋根もサイクロンの影響で飛ばされたまま。屋根代わりに大きなシートが吊るされ日差しを遮ろうとしていますが全体を覆うことはできず、端に座る子供たちには強い日差しが照りつけていました。

そんな厳しい現状の中で私たちが出会ったのがチーチャンという10歳の女の子。チーチャンの家もサイクロンによる大きな被害を受けたといいます。突風と雨が襲い家は壊されてしまったのです。そんな大きな被害から未だ立ち直れない中の生活に私たちは密着させてもらいました。
お母さんの手伝いをよくするというチーチャンは、大きなバケツを頭に抱え水汲み場へと向かいます。水汲み場と言っても澄み渡る水がたまっているわけではなく、1m以上掘られた大きな穴に、わずかな水が湧き出ているだけです。その水は薄く濁っていて、まさか飲み水とは最初は思いませんでした。

現地取材レポート

モザンビークは近年、深刻な気候変動の被害に悩まされ「世界で最も気候変動リスクが高い国」の一つです。サイクロンが襲来する雨季には強い雨が降る一方で、干ばつも発生する乾季には何か月も雨が降らないのです。私たちが取材に行った時期は「乾季」。十分な量の水を汲むことができないため、長い時には1日待つこともあるのだといいます。水汲み場の近くにはいくつものバケツが並ぶ光景を毎日目にしました。この地域では命をつなぐための水を確保するのもギリギリな生活を強いられているのです。
水汲みから帰ってくると次はキャッサバ芋の皮むきの手伝いへ。主食となる穀物で、目の前に山積みになっているキャッサバの皮を手慣れた手つきで一本一本剥いていきます。「一緒にやろう。」と言ってくれて皮むきを手伝いましたがこれがまた難しいのです。キャッサバには厚い皮と薄い皮が存在し、勢いをもってナイフを入れないとしっかりと剥くことができません。なかなか綺麗に剥くことができない私に、チーチャンは手を取って丁寧に教えてくれました。まだ10歳ですが、しっかりものの女の子。優しい笑顔がとてもかわいらしかったです。
そんなチーチャンは学校が大好き。他の子たちよりも早く登校すると、率先して教室の掃除を行っていました。屋根もなく風が吹き抜ける教室では、ごみを集めてもまた飛ばされてしまいます。しかし黙々と掃き掃除をして授業に備えていたのです。そして授業が始まると大きな声でポルトガル語を発音し、黒板に書かれたものも一生懸命ノートに取っていました。将来の夢を聞くと「先生になりたい」と答えてくれました。もっともっと勉強がしたいと願い、夢を持って前へ進むチーチャンがいつか素敵な先生になって、たくさんの子供たちに夢を与えてくれる日を楽しみにしています。

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モザンビークでは気候変動による被害以外にも様々な問題を抱えています。その一つが「栄養不良」です。
人口の6割以上が一日約320円以下で生活しているモザンビークでは、十分に食料を得られず、栄養不良になってしまうこともあります。首都から離れたマデモ集落でも厳しい生活を強いられている家庭が多くありました。
そこで出会ったのが8歳のベントという男の子。113㎝、21㎏。同世代の周りの子と比べても一回り小さく、どこか元気がないように見えます。現地の医師に話を聞いてみると、ビタミンやミネラルなどの必要な栄養素が日常的に不足することによっておこる「慢性栄養不良」だというのです。そしてベントにはエデレニオという1歳の弟がいます。エデレニオも体がやせ細り「重度の栄養不良」の一歩手前という診断でした。
そんなベントの家族に密着させてもらうと厳しい現実を目の当たりにしました。ベントの両親は農業に従事していますが、今年のサイクロンにより畑が被害を受け、食料も収入も減ってしまったといいます。家にある食料も主食となる穀物の粉のみで、その量も家族5人で分け合えるとは思えないほど少ないものでした。家庭の月の収入は日本円で460円。近くに井戸がありますがその使用料は日本円で約50円。そのお金も払うことができないため、衛生面に不安を抱えながらも、土から湧き出た水を飲むしかないというのです。

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そんな厳しい現実と向き合いながらもベントが笑顔になる瞬間がありました。それはサッカーをしている時です。
モザンビークの子供たちはサッカーが大好きで、みんなで日が暮れるまでボールを追い続けます。
しかしサッカーボールと言っても私たちが想像しているようなものとはかけ離れているものです。避妊具を空気で膨らませ、そこに布やビニールを集めて紐で結び付けたものが彼らにとってのサッカーボールなのです。広場に木の枝を2本立てればゴールができ、そして誰かが蹴りだせば、一斉にボールに集まり試合が始まります。その輪の中にベントもいました。小さい体ながらも必死でボールを追い続け、その目はキラキラと輝いていました。将来はサッカー選手になりたいと夢を語ったベント。
もっとたくさん練習して頑張るんだと話してくれました。
取材最終日、取材を終えて帰ろうとする私に、ベントは恥ずかしそうにしながらも勇気を振り絞って言ってくれた言葉があります。
「また一緒にボールを蹴りたいな。」
いつかサッカー選手になったベントと一緒にボールを蹴れる日が来るのを心から願います。

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気候変動や栄養不良など様々な問題を抱えているモザンビーク。
厳しい環境の中でも「勉強したい」「夢をかなえたい」と切実に願う子供たちがたくさんいます。
そんな子供たちのために何ができるのか。
一人の力は小さいかもしれませんが、その一歩を踏み出すことが大きな力に変わると信じています。

どうか皆様の温かいご支援をよろしくお願いいたします。

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