お知らせ
お知らせ
FNSチャリティ海外取材メモリーズ(内野泰輔アナウンサー【取材当時】)
南米ボリビアで出会った鉱山で働く12歳の少年
【取材当時】フジテレビ・アナウンサー 内野泰輔
2017年、私は南米ボリビアへ児童労働問題の取材に行きました。
ウユニ塩湖など、観光地としても近年注目を浴びるボリビアですが、実は南米で最も所得格差が大きい国と言われ、国民の50%が貧困層。そして貧しさゆえに家計を助けるため約50万人の子供たちが働いていると言われていました。
数人の子供たちを取材しましたが、特に印象深く残っているのが、鉱山で働く12歳の少年エフライエンです。
鉱山は、子供を含め1万5000人程が働いており、年間250人近い人が事故や病気で命を落とすと言われる事から、別名「人を喰らう山」と呼ばれる危険な場所でした。
彼は我々が取材する8ヶ月前、この鉱山で働いていた父親を亡くし、その代わりに働き始めていました。彼の仕事は、坑道に入り、大人が掘削した鉱石を拾い集め、大きな袋を4つ一杯にするまで終わりません。
彼は、一家の大黒柱を亡くし途方に暮れる母、そして家族を少しでも助けられればと考え、小さな体を酷使し、命の危険を冒して危険な鉱山で働いていたのです。
数日取材を重ねる中で、彼は「医者になりたい」と夢を教えてくれました。しかし、彼が置かれている現実は、そう甘くはありませんでした。日中仕事をしている彼は、学校になかなか通えず、満足に教育を受けていません。自ずと学業で遅れをとり、一層学校に行かなくなります。学業のフォローをしてくれる人もいなければ、夢を叶えるためには教育を受けることが重要だと教えてくれる大人が、彼の周りに誰もいない現実がそこにあったのです。
エフライエンのような子供は鉱山に沢山います。鉱山で幼い頃から働くことで、教育を満足に受けられず、夢を持ちながらも最終的には鉱山で働く道しか残らないという負のスパイラル。鉱山で将来働くことが悪いわけではないのです。ただ、鉱山で働くことしか選択肢が残っていない事が問題なのだと感じました。
この問題を多くの方に知っていただくためには、どのように伝えれば良いかなど、限られた時間の中で試行錯誤したのを覚えています。今でも何が正解だったのか、答えは出ていません。ただ、この問題を取材し、伝えるまでの経験が、私の取材者としての今後の人生に大きな影響を残しています。