あらすじ
<第1回> <第2回> <第3回>

<第1回> 「今夜実現夢の競演」
 カップルが宝石店のショーケースを熱心にのぞき込み、結婚指輪を選んでいる。
男は鈴懸彰(中井貴一)、37歳のカメラマン。女の方は若い。杉野恵美(仲間由紀恵)25歳、資産家令嬢だ。人目もはばからずアツアツの2人だが、店を出た彰は「やられた!」と絶句した。さっきぶつかった外国人に財布をすられたのだ。追いかけようとする彰に恵美が抱きついた。「良かった、彰さんは無事で」。恵美の笑顔に彰はそんな事件すらつい冗談事に思えてしまうのだった。これが悪夢の始まりだとは気づかずに。
 その頃、BJは財布の束をフェイ・リン(フェイ・ウォン)という中国系の女性に手渡していた。フェイは彰の免許証に目がとまり、じっと見つていた――。
 2人の新生活が始まる杉野家では、彰の引越し荷物があふれていた。恵美を手伝う為、杉野家の秘書、天野志津江(木野 花)がやって来た。「いいの、2人のことは2人でするから」と言う恵美が心配な志津江は恵美の父親で杉野グループの会長である杉野栄之介(布施 明)に念を押した。「あれでいいんですね、恵美ちゃんの結婚」。栄之介は確信をもってうなずいた。「恵美が初めて自分の意志で決めたんだ。幸せになるように見守ってやろう」。
 翌日、彰は“鈴懸写真事務所”に片付けの為、訪れた。手伝いはカメラ助手の本郷剛(中村俊介)と彰の親友、角田亮一(生瀬勝久)。「しかし、貧乏カメラマンのお前がいきなり億万長者とはね。お前たちの婚姻届、受理するのやめようかな」。角田は区役所の戸籍係なのだ。
 その頃フェイ・リンはアパートの部屋で彰の免許証を見ながら、何かの書類を書いていた。ウエディング・マーチを歌いながら・・・・・・。
 結婚式当日。新郎、新婦の入場を待つ栄之助ら親族たちが大巳殿の前にいる。そこへ静々と向かう彰と恵美。とその時角田が飛び込んできた。急いで彰を連れ出す。
「お前はすでに結婚している!お前にはもう妻がいるんだよ!」。
彰は角田からは突きつけられた自分の戸籍抄本を見てガク然となった。
配偶者の欄に『フェイ・リン』の名前がある。彰には全く身に覚えない。「どういうことだよ!」「こっちが聞きたい。とにかくお前は法律上その女と結婚してるんだ!」。
 「本人の知らないうちに、間にブローカーが入って、戸籍が売買されてんだ」角田の説明に彰はあわてた。彰は、外国人が日本に居続けるために企む偽装結婚に利用されたのだ。剛は言った。「恵美ちゃんは先輩に惚れているんだし、話して協力してもらえばいいじゃん」「しかし、恵美ちゃんが納得しても杉野家のその他がなあ。名門だけにこういったトラブルは嫌うわな」角田の一言が彰の胸に重くのしかかった。
「あの家族に迷惑をかけるわけにはいかない。」彰は恵美には打ち明けず、フェイを捜し出して離婚届にサインさせることに決めた。
 大城戸隆(鴻上尚史)探偵に彰はフェイを捜してくれるよう依頼した。
「偽装結婚するような外国人は、それなりに理由があって違法と判りながらも懸命に生きてるんですよ。この際、その異国の女性と幸せになること考えたらどうなの」と軽口を叩きながらも、彰の切羽詰った表情に、捜索を引き受けてくれた。
 たしかにフェイには理由があった。彼女はファッションデザイナーを目指して日本
で勉強していたが、学生ビザの期限が切れたため、やむなく偽造結婚に踏み切ったのだった。
 そして、彰の妻として日本国籍を取得したフェイは、憧れの世界的デザイナー森村ミチオ(大杉 漣)のオフィスを訪ねた。フェイのスケッチを見た森村は彼女の才能を認めた。「新世紀に活躍するデザイナーはきっとアジアから出てくると思っているんだ」「私を雇って下さい」。森村はフェイに来春向けデザインの課題を与えて、1カ月後の再会を約束した。
 「例の中国人女性、スッゴイ美人でした」。大城戸はフェイの居場所をつかんだらしい。
彰は、大城戸から聞いたフェイのアパートへ向かった──。

<第2回> 「取り返しつかない嘘」
 フェイ・リン(フェイ・ウォン)のアパートに乗り込んだ彰(中井貴一)は結局、離婚届にサインをもらえず帰るハメになってしまった。しかもフェイはいつの間にか彰の結婚指輪をすり取っていた。「次の満月までイイ旦那でいたら返してあげる」
 とにかく恵美(仲間由紀恵)には隠し通すしかない。「指をケガしちゃって」。左手の薬指に大げさに包帯を巻いた。
 しかし、恵美にいつバレるかと気がきでない彰は、角田(生瀬勝久)に勧められて、婚姻無効の申し立て、離婚調停を行うことにした。彰は、再度、フェイのいるビルの屋上を訪ねた。「これに出てもらう」。彰はフェイに家庭裁判所出廷願いをつきつけたが、フェイはいたずらっぽく笑うと、彰の指の包帯を2人の首に巻きつけた。
「運命の人とはこうして1本のタイで結ばれているのよ」。彰は不覚にもドキリとしたが、かろうじて言った。「裁判、必ず来いよ」。フェイは余裕の笑みを返してきた。
 彰のオフィスに剛(中村俊介)が1人でいると、突然フェイが現れ、自分のカメラを剛に向けた。いや、剛を撮影していると見せかけて、実は彰のオフィスのいたる所を撮っていたのだ。
 いよいよ、離婚調停当日がきた。フェイはなんと、剛のバイクで家庭裁判所に現れた。剛は悪びれた様子なく、彰に言った。「女と正義には弱いんです」。
 「結婚前に彼女との接触が一度もなかったのは事実ですか?」「はい、嘘偽りありません」。彰はきっぱりと答えた。「彼女の偽装結婚の疑いは濃厚と思われます」。
 調査員の言葉にフェイは深々と頭を下げた。「あなたの言葉、従う。あなたに捧げられる最後の愛だから」。そしてフェイが泣きだすと同時に、フェイのアパートの住人がある写真を取り出した。「2人は愛しあって結婚したんだ。これを見て下さい!」。
 それは、彰のオフィスの写真の束と、彰の文字の入った湯飲み茶碗。どちらもフェイが、剛と一緒にいたあの時に、自分で写真に撮ったものだ。
 裁判の流れが、急に、彰に不利に変わってしまった――。

<第3回> 「ダーリンじゃない!!」
離婚調停が失敗に終わった挙げ句、彰(中井貴一)はビルの屋上でフェイ・リン(フェイ・ウォン)と一緒にいるところを恵美(仲間由紀恵)に見られてしまった。
 今度ばかりは言い訳できない・・・と思ったが、恵美はあくまで彰を信じている様子だった。「モデルさんにポーズ教えていたんでしょ」。彰は胸をなでおろした。
 「フェイ・リンに金を渡してサインしてもらうしかないな」。角田(生瀬勝久)の提案に彰はうなずいたが、渡すだけのお金がない。諦めかけたら、栄之助(布施明)がスタジオ資金だと勘違いしてポンと5百万円を用立ててくれた。
 彰は500万円をフェイに突きつけた。「これで離婚届にサインしてくれないか」。ところがフェイは離婚届を破ってしまった。「日本人はお金さえ出せば何とかなると思ってる。あなたもそうなの?がっかり」。彰は帰るしかなかった。
 「安心しろ。もう次の手をうってある」。角田が仕入れてきた情報によると、偽装結婚を工作する中国人グループがあるらしい。「あの女を別の男と偽装結婚させるんだ。その前に、もちろんお前とは偽装離婚させてからだ」。
 彰がオフィスに戻ると、クリーニングスタッフがてきぱきと掃除していた。フェイと外国人アパートの住人たちなのだが、目深に帽子をかぶっているので彰と剛は気づかない。実は入国管理局が彰とフェイの生活状況を調べに来るという情報をつかんで、こんな芝居をうったのだ。そして彰が角田からの電話を受け、オフィスから出るのと入れ代わりで、当の入管の職員が到着した。「私、とても幸せです」。チャイナドレスに着替えたフェイもそつなく応対したので職員は偽装結婚の疑いなしと判断して帰ってしまった。
 「何してた、ここで!」。オフィスに戻った彰はフェイにつめ寄ったが、一難去ってまた一難。恵美がお弁当を届けに来たのだ。「いいか、絶対に声出すなよ」「ファイト、アナタ」。あわてふためく彰をフェイは面白がっている。
 緊張のランチタイムが終わり、恵美は何も気づかずに帰っていった。フェイはいつの間にか、彰が撮影した夕陽のパネルを胸に抱えて子猫のように眠っていた。
 彰と角田は紫煙たちこめる怪しげな麻雀クラブを訪ねた。偽装結婚グループはいきなり1千万円をふっかけてきたが、角田が5百万円に値切った。「これでやっと離婚できるな」。
 彰は角田と別れると、撮影を依頼された森村(大杉 漣)の新作コレクションの準備会場へ向かった。「私の新境地を思いきりフィルムに焼きつけて下さい」「頑張らせていただきます」。本番はいよいよ明日だ。
 コレクション当日。彰が支度を整えていると角田から電話が入った。「偽装結婚の相手が見つかったから連中がすぐに金を持ってこいと言ってる」。彰は角田と再び先日の麻雀クラブに乗り込み、5百万円と引き換えにフェイのサイン入り離婚届を手に入れた。ところがよく見たら、女の名前はフェイ・リンならぬフェイ・チンになっている。「やられた!」。あわてて麻雀クラブに戻ったが、すでにもぬけのカラだった。
 「もう時間がない」。とにかく彰は森村のコレクション会場に駆けつけた。そこで彰が見たものは――。


戻る

バックナンバー
[第1-3回] [第4-6回] [第7-9回] [第10-11回]