あらすじ
<第4回> <第5回> <第6回>

<第4回> 「忘れられない人・・・」
 ちはる(中谷美紀)は福祉施設建設の県庁担当者との接待に出ることになった。市長の職務に目覚めたわけではなく、ふぐ料理と日本酒がお目当て。「くれぐれも暴力はなしですよ」。友枝(小野武彦)と小日向(高橋克実)からクギを刺されたにも関わらず、相手が馴れ馴れしくちはるの体にタッチしてきたものだから、気づいたらテーブルをひっくり返していた。「ごちそうさま」。酒まみれになった県庁の役人を残して、ちはるはさっさと料亭を後にした。「セクハラされて黙ってろっていうの?」。
 反省の色など一切ないちはるに、心ウキウキする出来事があった。高校の先輩で、初恋の相手でもある沢村剛(葛山信吾)が市役所のイベント企画課にいたのだ。すぐさま企画課に向かうと、当の本人とバッタリ。「覚えてますか?」「もちろんです」。ちはるはうれしくてマリ(山口紗弥加)に知らせた。「これって運命の再会よね」。
 沢村は市の恒例行事であるミスコンテストを担当していた。「もしよかったら一緒に考えませんか?」。ちはるは沢村と近づきたい。そこで打ち合わせを口実にして、藤田(松崎しげる)の店で一緒に食事する約束をした。
 「初恋の人に会っちゃったの」。ちはるは上機嫌でケーブルテレビの取材にのぞんだ。風間(吉沢悠)はちょっとショックを受けたが、優子(奥菜恵)は構わずマイクを突きつけた。「今の時代に女性市長があえてミスコンテストを開催する理由は? ミスコンはセクハラじゃないですか」。ちはるはひるまない。「女ならきれいになりたいって思うでしょ。どこが問題なの? 開催を中止する気はないわよ」。ちはるはきっぱりと言いきった。
 その夜、沢村は約束どおり、藤田の店にやって来た。「彼女なんかいませんよ」「ホントに?」。ちはるは小さくガッツポーズ。ちゃっかり同伴したマリは別のテーブルで八潮(柳場敏郎)に猛アタック。「彼女いないんなら、私が立候補してもいいよね」「さあ、それは」。たまらず八潮が店の外に退散すると、さっと身を隠した女がいた。沢村と同じイベント課の川井綾乃(馬渕英里何)だ。店内の様子をうかがっていたらしい。八潮はなぜか気になった。
 翌日ちはるが登庁すると秘書課の面々が険しい顔をつき合わせていた。「市民からのクレームが殺到してます」。高井(長野里美)から渡されたファックス用紙の束には、どれも”ミスコン開催反対!”の文字が書かれていた。抗議の電話も鳴りやまない。さらに女性団体までつめかけた。それでもちはるはつっぱねた。「中止は考えてないの!」。
 週末になってちはるは沢村から呼び出された。「僕のことは気にせず中止にして下さい。僕は市長の判断を信じてますから」「やだ、そんな」。ちはるは内心うれしくて、舞い上がらんばかりの気分。2人は高校時代の思い出いっぱいの商店街を歩いた。「いらっしゃ い」。なじみのせんべい屋のタエばあちゃん(由起艶子)も元気だった。すっかりデート気分を満喫したちはるだったが、翌日市長室に入るなり、思わず大声を上げてしまった。
 「私がセクハラしてるって?」。ちはるが市長の権限を利用して沢村に交際を迫っている。そんな内容の匿名メールが市役所の全職員に届いていた・・・。

<第5回> 「史上最悪の一日!」
 市の防災訓練でちはる(中谷美紀)は災害対策本部長を務めることになった。「ヤダよそんなの。すっごい責任重大じゃん。どうしてもやらなきゃダメ?」「ダメです!」。友枝(小野武彦)と小日向(高橋克実)から強く言われて、ちはるは渋々うなずいた。隣りの秘書課がなにやら騒がしい。苦情処理を訴えて、直接市長に会わせろとやって来る市民が後を絶たない。抗議の電話や脅迫めいたFAXもひっきりなしに届く。「こういうのも毎日だと慣れちゃうわね」。高井(長野里美)をはじめ秘書課の面々は淡々と対応していた。
 県への陳情を終えたちはるは、いつものように藤田(松崎しげる)の店へ。激辛タコスにパクついていると、横で静かにウーロン茶を飲んでいた八潮(柳葉敏郎)の携帯電話が鳴った。「どうした、元気か?」。こんなにうれしそうな八潮を見たのは初めて。 「誰かな?」。ちはるが首をかしげると藤田がそっと教えてくれた。別れた妻、妙子(斉藤慶子)との間には小学生の息子がいた。電話の相手はその息子、健作(片岡涼)らしい。「よくあるケースね。家族も守れないのにSPか」。ちはるは八潮に聞こえないように憎まれ口をたたいた。
 防災訓練の当日がきた。「だっさー」。訓練服とヘルメット姿の友枝と小日向を見て笑ったちはるだったが、自分も同じ格好をさせられた。非常ベルが鳴り響いて、訓練スタート。「かったるぅーい」。非常階段の込みように嫌気がさしたちはるは、勝手にエレベーターへまっしぐら。「市長!どこへ行くんですか!」。あわてて小日向と八潮も飛び込んだら、ドアが閉まったきり動かなくなった。「ちょっと嘘でしょ」。ちはるは半笑いを浮かべたが、小日向と八潮から無言でにらみつけられた。
「マジで?」。「市長はどうしたんだ」。対策本部ではちはるがいつまでたっても姿を現わさないので、秘書課の面々が右往左往。もうすぐ自治大臣が到着する。「何とか説明しておくから」。友枝は高井らに市役所に戻ってちはるを探すよう命じた。取材に来ていた優子(奥菜恵)と風間(吉沢悠)が異変に気づいて後を追った。
「市長いますか!」「いまーす」。エレベーターの中からちはるの声が聞こえた。すぐさま整備係が修理を始めた。ドアが開くと、顔面そう白の小日向がトイレに駆け込んだ。限界まで我慢していたらしい。「ちょっと何撮ってんのよ!」。ちはるはマイクをつきつけてきた優子にくってかかった。「だって階段が混んでいたんだから、しょうがないでしょ」。またもやちはるの不祥事が生中継された。呆れ返った自治大臣は怒って、とっくに帰ってしまった。
「あー、疲れた」。ちはるが市長室のイスに深々とへたりこんでいると、小早川(高知東生)が息せききって現れた。「またやってくれましたね。この不祥事は議会で徹底的に追及しますから」。毎度のことだからちはるは聞き流した。その小早川と入れ代わりにマリ(山口紗弥加)がやって来た。「テレビ見たよ」。ちはるに向かってニヤリと笑った。  その頃、八潮は市役所の食堂にいた。妙子が健作を連れて面会にきたのだ。妙子は近々再婚するという。「だからもうこの子に会わないでほしいの」。思いもかけない申し出に八潮はぼう然。しかし、そのころ市長室ではとんでもない事件が発生していた。
「よかったら、これ食べませんか?」「わー、おいしそう」。小日向から訓練中止で残った弁当を勧められてマリは大喜び。ちはるは隣りの秘書課の様子が気になって仕方ない。「ヤケに静かじゃない?見てきてよ」。小日向が重い腰をあげた途端、ドアが開いて猟銃を抱えた男が乱入した。
「これって、何の訓練?」。マリに聞かれて、ちはるは首を横に振った。もちろん防災訓練にこんな予定はなかった。
「おとなしくしてろ」。男はちはる、マリ、小日向を床に座らせた。市長監禁のニュースはまたたく間に市役所内をかけめぐった。「警察には?」「知らせました」。八潮は市長室の表で立ちつくした。もし自分がそばについていたなら。八潮はこみ上げてきた悔しさをじっと押し殺した。やがてパトカーが次々に到着した。「お前みたいなヤツが市長だからこの町はダメなんだ」。男の名前は倉田雄三(市川勇)。館浜市内で土木工務店を経営しており、市の工事を請け負っていた。倉田はテレビカメラを呼び入れるよう要求してきた。「お前らがどれだけひどいヤツらか、世間に訴えてやる」。
 「こんなスクープめったにないわ」。立ち上がった優子を八潮が制した。「俺に行かせてくれ」。風間が脱いだスタッフジャンパーを着ると、八潮はテレビカメラをかついだ。そして市長室のドアをノックした。

<第6回> 「涙のバレンタイン」
 八潮(柳葉敏郎)にガードされたちはる(中谷美紀)が廊下を足早に行く。後ろからついてくる秘書課課長の高井(長野里美)に今夜の予定をたずねた。「エステを予約しているのよ」。生真面目で仕事一筋の高井はきっぱりと言いきった。「市長は女優ではありません。きれいではなくても仕事はできます」。
 ちはるがぶ然として市長室に入ると、友枝(小野武彦)と小日向(高橋克実)が室内をあちこち点検している。「盗聴器も隠しカメラもないようです」「どうしたの?」。この半年、市の公共事業を大手5社の業者が順番に落札している。談合の可能性が高い。入札情報がもれているらしい。「談合って何?」。説明してもらってもちはるにはイマイチ理解できない。そこで友枝たちが背を向けて対策を相談しはじめると、たまらずちはるは叫んだ。「勝手に決めないでよ!市長は私よ!」
 友枝と小日向は犯人探しにやっきになっていた。入札書類は秘書室に保管されている。
 自由に出入りできるのは秘書課の高井課長と部下の山田(正名僕蔵)とユミ(松丘小椰)。八潮もふくまれる。友枝たちは尾行までした結果、山田とユミを容疑者からはずした。とはいえ、連日一人で黙々と残業をこなしている高井とも思えない。ましてや警察官である八潮も。友枝と小日向は行きづまった。「ヤシオッちはお休みの日って、何してるんですか?」「洗濯と掃除でしょうか」。藤田(松崎しげる)の店でマリは八潮にぴったりと寄り添って猛アタック。ちはるが半ば呆れて見ていると、優子(奥菜 恵)と風間(吉沢 悠)が現れた。「なによ、こんなところまで」「そんな暇じゃありませんから」。顔を合わせれば、ちはると優子はきまってケンカごしになってしまう。それでも今夜はバレンタインデーの思い出話で盛り上がった。店を出た帰り道、ちはると八潮は高井が見知らぬ男と楽しそうに歩いているのを目撃した。
「へぇ、意外。彼がいたんだね」。素直に驚いたちはるは、八潮がけげんそうな表情をのぞかせたことに気づかなかった。
 翌朝、ちはるは登庁するなりマスコミの取材陣にとり囲まれた。市長印の押された来期の事業計画書のコピーが各所にFAXで流されたのだ。送り手は機密漏洩に気づいた同業者か、それとも大手5社の誰か。いずれにしろ何者かが重要書類を盗み出したことは間違いない。「いったい誰が」。ちはるたちが疑心暗鬼でお互いの顔を見合わせていると、早速小早川(高知東生)が駆け込んできた。「市長の責任を徹底的に追及しますよ」「あなた、それしか言えないの」。ちはるはウンザリした。
「ったく、アタマきちゃう!」。ちはるが藤田の店でグチをこぼしていると、高井が書類を届けてくれた。「こんな時にこんな大事なものを忘れるなんて、しっかりして下さい」。ちはるは高井の紙袋からリボンのついた包みがのぞいているのに気づいた。「あ、それ、彼にプレゼントでしょ。どんな人なの、結婚するの?」「それは」。
 高井は職場とは別人のように、まるで少女のようにうろたえた。「頼りなくて、だらしなくて、不器用で。でも誠実で正義感の強い人なんです」。高井はうれしそうに告白した。夢中なのだ。「いいね、人を好きになるって」。ちはるまで幸せな気持ちになった。  ところがちはるは八潮からショッキングな情報を伝えられた。高井の交際相手は機密漏洩で問題になっている建設会社の社員だった。1人きりで残業していれば、重要書類をコピーするチャンスはいくらでもある。「彼女を犯人とは思いたくありませんが、気になります」「ちょっと待ってよ」。さっき見た高井の様子とつながらなくて、ちはるは戸惑いを隠しきれなかった。
 翌日、再び匿名のFAXが市役所の全部署に届いた。”秘書課の高井梓の不倫を断固、追及すべし!”。ちはるは動揺を懸命に隠してFAX用紙を破った。「不倫がいいとは言わないけど、当事者の問題でしょ。さ、仕事仕事」。なんとかその場は収めたちはるだったが、2人きりになると八潮にたずねた。「どうしたらいい?」。八潮は冷静に答えた。「事実を明らかにすること。それが市長の責任です」。
 ちはるは高井を藤田の店に呼び出した。「不倫を責める気なんて全然ないの」。本当に確認したいのは機密漏洩のことだが、さすがに切り出せない。ためらっていると、高井のケータイが鳴った。「ちょっと急用が。失礼します」。高井は一礼すると店を出ていった。離れて座っていた八潮が立ち上がった。ちはるも戸惑いながら立ち上がった。
 高井は深夜の公園にむかった。誰かを待っている様子だ。尾行してきたちはると八潮は物陰に身をひそめた。ちはるの心はまだ揺れていた。「こういうの、よくないよ」。八潮は小声で、しかしきっぱりと言い切った。「真実を明らかにするためには、無数の疑惑を消していくことが必要なんです」。
 やがて高井のつきあっている村上(小林すすむ)が現れると、いきなり彼女の前で土下座した。「不倫を追及するっていうFAXを市役所に流したのは女房なんだ」。
 彼女のほうから家を出てすでに2年。慰謝料が目当てらしい。「本当に済まない。君 まで巻き込んでしまって」。しかし高井は村上を責めなかった。「離婚が成立するまで、私、待てます」。2人のやりとりはちはるたちの耳にも届いた。けれど機密漏洩にまつわる話は一切出なかった。 翌朝、出かける支度をしていたちはるはケーブルテレビの画面にくぎづけになった。「このスクープ映像をご覧下さい」。優子のアナウンスに続いて映し出されたのは、昨夜の公園での高井と村上の姿だった。「なんなのよ、これ!」。ちはるは市長室に優子を呼びつけると、いきなり平手打ちをくらわせた。「何するんですか!」。優子が血相を変えた──。


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