<第10回> <第11回> <第12回>


<第10回>
 修道院で食事をとった男性が食中毒で入院した。この事件を嗅ぎ付けマスコミは一斉に修道院に押しかけ、事態の真相を聞き出そうとした。
 院長の沢木(吉行和子)は、一人矢面に立ち「責任は全て私にあります」と言うが、「一体だれが調理をしてたのか」などと取材陣はなかなか納得しない。
 修道院に対する不満の声が目に見えて高まってくる。
 テレビでこの様子を見ていた日下部(長塚京三)は、シスターまりあ(観月ありさ)たちのことが心配になり岩田(城島茂)と修道院に急行した。
 罵声と投石。修道院への仕打ちは、日下部と駆け付けた警官によってなんとか静まったが、この騒ぎに割って入った岩田は軽い傷を追ってしまった。
 それでもシスターまりあに治療してもらう岩田は、なんだか嬉しそうだった。だが、この時岩田は思いがけないことを切り出した。
「食中毒をおこしたのはなぜ一人なんだろう。あれだけの人が食べたのに…」。これにはシスターまりあ、日下部も同調。岩田は早速病院に運ばれた患者に会いにいくことになった。
 そして面会謝絶の札をかいくぐって、必死の思いで岩田が患者と会ってみると患者は、以前日下部を見張っていた前島(西田健)の手下・河崎(木下ほうか)だった。借金のかたに今回の事件をおこすよう迫られたという。
 日下部は、岩田から報告を聞くと前島のあくどいやり方をマスコミにぶちまけることを決意する。だが、その時修道院の土地の権利者としてインタビューに答えるテレビに映った前島を見て、不気味な予感を感じるのだった。
 その頃、シスターまりあは、空腹で倒れそうになっている若い男・小暮隆介(柏原収史)に食事を提供していた。行く宛てもなく、孤独な隆介の様子を気の毒に思ったのだ。
 しかし、同情をひいていた隆介は食事を終えるとガラリと態度を豹変させシスターまりあに迫ってきた。「綺麗だね」「彼氏とかいるの?」。
「わたくしはシスターです…」と必死に逃れようとするまりあに、「キリストに身をさざけているってこと?じゃあ罪の告白とか聞いてくれるの?」と尚も迫ってくる男。思わずまりあは、「あなた、何か悪いことでもしたの?」と聞き返していた。「人を殺したことがあるんだ」。隆介はこう言うと、驚くまりあの頬にキスをした。
 そこへ、食中毒の件は前島の仕組んだことだったと伝えにきた岩田が現れた。 隆介はさっさと修道院から出て行ったが、まりあはその背中を心配そうに見送ったのだった。 
 岩田の活躍もあって再び静けさと平和を取り戻した修道院。しかし、それはわずか一夜にしてかき消されてしまうことになった。
 翌日、修道院のある町内会の責任者が沢木を訪ね、ここから出で行って欲しいと立ち退きを求めてきたのだ。
 何をやっているかも計り知れず、おりからの事件の余波もあって、町内に居られては困るといってきたのだ。これにはさすがの沢木も反論できなかった。
 そして、とうとう修道院を明け渡す決意をし、全員にこれを伝えたのだった。 早急に行き場を探すシスターたちだったが、どうしても離ればなれになることができないと感じたまりあたちは、許しも得ず日下部の事務所に押しかけるて、共同生活を始めてしまう。
 うむをいわさぬ行動力に、さすがの日下部も何も言わずこの状況を受入れるだけであった。
 そんな時だった、日下部の元に妻殺しの犯人の手掛かりの品が安田刑事(左右田一平)によって持ち込まれたのは。それは日下部が妻に贈った十字架だった。

<第11回>
 ある日シスターまりあ(観月ありさ)たちは、岩田(城島茂)たちと一緒に遊園地に出かけた。気晴らしの意味もあり、いつになくはじゃぎまくるまりあたち。引率役の岩田も、まりあと一緒でもちろん嬉しい。だがずっと日下部(長塚京三)に連絡を取れないことがひどく気掛かかっていた。
 そして、その岩田の心配は的中した。事務所に戻ってみると日下部は不在。 しかも、テレビからは、5年前日下部の妻を殺害された容疑者が指名手配されたことを伝えるニュース。シスターまりあと岩田は、容疑者の顔写真を見て以前修道院にきた男・小暮隆介(柏原収史)だと気付くのだった。
 小暮の出現は、日下部を変えた。刑事の安田(左右田一平)と共にまりあへの聞き込みに立ち会い、どんな些細なことでも小暮に対する手掛かりを見つけようとする。そんな日下部の鬼気迫る表情を見て、まりあは思わず「もし犯人が捕まったらどうするつもりですか?」と尋ねていた。
 「それなりの償いはうけてもらう」。日下部はやはり自分の手で復讐することをにおわせるのだった。
 まりあは、院長の沢木(吉行和子)のもとを訪れ、日下部のことを報告、一体この先どうしたらいいのか…と苦しい胸の内を打ち明けた。
 その時だった。修道院にまたも小暮が現れたのだ。まりあと沢木は、犯した罪を認め、警察に自首するよう説得。警察を呼びなんとか安田刑事に身柄を引き渡すことに成功する。
 しかしその直後、今度は修道院に小暮の手掛かりを求めやってきた日下部は、この件を聞いて、怒り出したのだ。なぜ警察に渡す前に自分に知らせてきくれなかったのかと……。
 まりあは、なすすべを失う。しかし、そんなまりあに沢木は「あなただけがあの人を救ってあげられるはずです」と言い聞かせるのだった。
 その日。夕食も取らず出かけていく日下部を、まりあは追いかけた。妻の墓のある墓地から夜の繁華街へ。日下部を心配するまりあの尾行は一晩中続けられた。
 翌日。日下部法律事務所で大事な二つの話し合いが行われていた。
 ひとつはシスター馬場(深浦加奈子)の提案する、食堂経営のこと。
 全員の受入れ先が決まらない以上、自らの力で自立の道を探そうというのだ。
 そして、もう一つは、まりあと岩田による、日下部と小暮を会わせて謝罪させるというものだった。
 早速、警察に安田刑事を尋ねる二人。しかし、親族以外を会わせるわけには行かないと安田はきっぱりいう。どんなに頼んでも決まりは曲げられそうにない。仕方なく、あきらめて帰ろうとするまりあたちの前を、刑事たちに連行されれる小暮が通って行った。そして、丁度そこへ日下部が現れたのだ。
 「日下部さんっ」まりあは咄嗟に叫んだ。
 しかし、日下部は小暮につかみかかると首を締め上げ始めた。
 なんとか刑事たちによって引き離されたものの、日下部の無謀な行動はこれに収まらなかった。安田の腰から銃を抜くと、小暮に銃口を向けたのだ。

<第12回>
 警察署で妻を殺した犯人・小暮(柏原収史)とハチ合わせした日下部(長塚京三)は、安田刑事(左右田一平)から奪った拳銃を小暮に向けた。
 シスターまりあ(観月ありさ)は咄嗟に銃口の前に立ちふさがり日下部が犯罪を犯すことを食い止めようとした。「そんな事しても奥さんは喜びません。私、日下部さんのことが好きだから罪を犯して欲しくないんです!」。
 ハッとなる日下部、そして岩田(城島茂)。
 まりあは必死でそう叫び、日下部にしがみつくとそのまま倒れこんでしまった。 病院のベッドの上で目覚めたまりあは、院長・沢木(吉行和子)とシスター吉野(上原さくら)から日下部が思いとどまり、誰も怪我しなかったことを聞かされた。しかし日下部の行為が許されるはずはなく、安田は事情はどうあっても、殺人未遂であることには変わりないと日下部の取り調べを始めるのだった。
 新聞にも日下部の発砲事件が掲載されており、弁護士資格が剥奪されるかもしれないと書かれていた。
 その頃、沢木は修道院の鍵を渡すために前島(西田健)と会っていた。
 前島は日下部の一件にふれ、殺された日下部の妻と知り合いだったことをポツリと沢木に打ち明けるのだった。前島の後ろ姿を心配そうに見送った沢木。
 だが、その直後前島は何者かに狙撃され、命を落とした…。
 前島は、日下部にある書類を託していた。それは修道院の土地をシスターたちに返すつもりである。法的な手続きをしてほしいという内容のものだった。
 死を予感していたのか、前島が最期にしめした改心のあらわれだった。
 再び修道院に戻れることになったシスターたち。でも、これに甘えることなく自立の道を模索するべきというシスター馬場(深浦加奈子)の提案で、食堂を始めることが決まる。
 活気づく修道院。だが、まりあだけは一人沈んでいた。あれから日下部とずっと会っていない。面会に行っても「会いたくない」と拒絶されてきた。たまりかねたまりあは、ある晩こっそりと修道院を抜け出すと日下部の妻が眠る墓地へ向かった。
 するとそこには日下部がいて・・・。


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