<第7回> <第8回> <第9回>


<第7回>
 高志(三觜要介)を取り返したいと強く思うあゆみ(深田恭子)。そんなあゆみを、優しくサポ-トする譲(藤木直人)だが、二人が親しくしているのが気に入らず和之(小橋賢児)が、猟銃を持ち出してきた。危ない!。譲が和之から猟銃を取り上げようと、二人がもみ合う内、猟銃が暴発した。
 この事故で側にいた百合子(中村愛美)の左耳が不自由になった。譲は幸彦(生瀬勝久)に平謝りだが、幸彦は興奮して、話を聞こうともしない。事故は幸彦にも責任の一端があったのだが、そんなことはお構いなしに興奮する幸彦。あゆみも「私のせいでもある」と責任を感じていた。
 譲の助言から、あゆみは、幸彦らが、東京の自宅を売った際、ロ-ンの残りなどなかったことを知る。ロ-ンの整理に金がかかったと、恩着せがましく言われ、こき使われるのにも耐えてきたあゆみは憤る。贅水館を出ていこうとするが、高志に電話を掛けると、どうにかうまくやっている様子。あゆみは、百合子のこと、譲のことなどもう少し、見守ろうと、一旦は、出ていくことをあきらめる。
 あゆみが、静枝(伊藤幸子)の世話をしながら話をしていると、静枝が苦しみだし、昏睡状態に陥った。深刻な表情で枕元に集まる医者や、幸彦と尚子(岡江久美子)ら。「こんな旅館、売ってしまう」という幸彦に対して、「売るなら、私に下さい」と言い争いをする。二人が話をしていると、静枝が突然目覚め、「尚子にやるぐらいなら、あゆみにやる」と言い、これが遺言になって静枝は、あの世に旅立っていった。
 「エ!私が女将!」。あゆみは、できるはずがないと、混乱ぎみだが、リ-(ケリ-・チヤン)に「これで弟さんと一緒に暮らせる」と励まされるの。
 そんなことを考えながら、ふき掃除していたところ、あゆみはバケツの端で指を切ってしまう。そこへ譲が現れた。譲は、百合子の見舞いを兼ね、わびに来たのだが、そんな譲に幸彦は、責任を取るなら、百合子と結婚してほしいと言い出す。無茶な申し出だが、譲は、きっぱり断れない。
 譲は帰り際、あゆみのけがした指に絆創膏を巻いてくれた。エンゲ-ジリングのようでもあり、あゆみにとっては、うれしい絆創膏だった。
 あゆみは高志に電話を掛けた。元気なはずの高志の様子が、なにか変だ。高志との電話は、スピ-カ-で、沢嶋夫婦にすべて聞かれていたのだった。高志は沢嶋夫婦に叱られるのが怖く、あゆみには、元気なように装っていたのだった。高志の異変に気づいたあゆみが、沢嶋夫婦に抗議すると「16歳の娘に何ができる!」と一方的に電話は切られた。
 あゆみが女将になる|と従業員に噂が広がる中、譲が父親の佐々岡(にしきのあきら)とともに贅水館にやってきた。初めは、百合子との結婚を断る佐々岡だが、幸彦に、ちょっと脅されると、「責任を取れ」と、譲に百合子と結婚するよう命じる。うんざりする譲だが仕方がない。あゆみも悲しくてたまらず、一人仕事をしながら、涙が止まらなくなるのだった。
 しかし、元気印のあゆみは泣いているうち「泣いていてどうする!高志のためにがなばらなくては」と、元気が湧いてくる。さんざん悩みもするが、ついに決意するあゆみ。ブツブツ言う従業員らを前に「女将になる!」と宣言するのだった。

<第8回>
 女将になると宣言したあゆみ(深田恭子)は早速、沢嶋家に高志(三觜要介)を返してくれるよう電話。しかし、沢嶋夫婦は「16歳の娘に何ができる」とけんもほろろに電話を切る。そんなことに腹を立てている間もなく、あゆみには、女将としての仕事が山ほど待っていた。
 千寿子(江波杏子)や他の仲居たち、調理場の職人たちは、あゆみを女将と認めていなかった。そんななか、リー(ケリー・チャン)だけが、あゆみを励まし協力的だった。そのリーの姿を見て、あゆみがあいさつしている旅館組合の関係者が、不法就労問題を話題にした。
 「リーのことは確認してますよね」と尚子(岡江久美子)が、幸彦(生瀬勝久)を問いつめると「ビザがないことを確認している」と幸彦は薄笑いを浮かべた。
 問題が起きてからでは遅いと、あゆみは、女将として、リーを辞めさせなければならない立場に追い込まれる。再三、助けてくれ、家庭の事情も知るあゆみは、リーに「辞めて」とは言い出せず、悩むのだった。
 そんな時、沢嶋夫婦が、高志を連れて贅水館にやってきた。相変わらず「敬太郎」と高志を沢嶋夫婦は呼び、その上、死んだ敬太郎が、左利きだったことから、高志に右手を使わせようとしない。思うように食事もできない高志だった。「敬太郎じゃない」とあゆみは夫婦に食ってかかるが、聞く耳持たない沢嶋夫婦だった。
 譲(藤木直人)がやってきた。あゆみが、その姿にホッとしていると、百合子(中村愛美)が現れ、がっかり。と、そこへ「お客さんがけが!」の声。けがをしたのは高志で、リーの不注意で左手をドアに挟んだという。カンカンに怒る沢嶋夫婦だが、無理矢理、左手を使わせられている高志を見かねたリーが一計を案じた芝居だった。怒鳴られながら「笑うのをこらえるのが大変でした」と言うリーに、あゆみは、またまた「辞めて」とは言い出せなくなる。
 たまたま現れた、佐々岡(にしきのあきら)に、リーが働いていられるよう、あゆみは頼んだ。「早く手をうってやろう」と珍しく了解してくれた佐々岡。
 その夜、あゆみが自室で旅館業の勉強をしていると、高志が入ってきた。久しぶりの姉弟二人だけの時間。腕相撲をしながら、あゆみは高志を「頑張るんだよ」と励ますのだった。
 翌朝、千寿子が「辞める」と言い出した。リーを不法就労させていることに「大女将だったら絶対許さなかった」と千寿子は、引き留めるのも聞かずさっさと出ていってしまった。その矢先、入国管理官が贅水館にやってきた。佐々岡が通報したのだった。
 リーを布団部屋に一応は隠したあゆみだったが、千寿子が辞めてしまったことで、贅水館は大混乱。冷めた、まずいと料理の返品が相次ぎ、電話は取る人なく鳴りっぱなし、せっかく来た客も帰ってしまう始末。あゆみもついに、リーを隠し通せなくなった。
 「最後にリーにウチの露天風呂に入れてやりたい」というあゆみの願いもむなしく、警察官が布団部屋に踏み込んだ。「出てきなさい」という警察官の呼びかけに出てきたのは高志だった。リーはだれにも告げずに、行方をくらませていたのだった。
 その高志が「敬太郎」と呼ぶ沢嶋夫婦に「ぼくは敬太郎じゃない」ときっぱり言い放つ。そんな高志や、沢嶋夫婦に向かいあゆみは「自分自身の強く生きる道を探し続けることでしか、先へは進めない」と、力強く話すのだった。女将業にてんてこ舞いのあゆみと、無理矢理左利きにさせられている高志の運命は……。

<第9回>
 あゆみ(深田恭子)が、女将部屋の前を通りかかると、幸彦(生瀬勝久)と尚子(岡江久美子)の言い争う声が聞こえてきた。「いいんだな」と幸彦が、興奮して話したことは、あゆみと高志(三觜要介)は、本当の姉弟ではなく、あゆみは、尚子が産んだ子だという衝撃的な事実だった。贅水館を救うため、尚子は、幸彦以外の男と一夜をともにした。以来、幸彦の自暴自棄な生活が始まったのだが、その時できた子供が、あゆみというのだ。
 大きなショックを受けたあゆみの頭の中を、これまでの出来事が、かけ巡った。両親の葬式後「あゆみだけでも引き取りたい」と幸彦に懇願した尚子。和之(小橋賢児)が、あゆみに襲いかかった時、異常に叱った幸彦。「巡り巡ってここへきちまったんだね」と言った大女将・静枝(伊藤幸子)の言葉。どれも、あゆみが、尚子の子であればこその言葉のように思えた。
 あゆみが混乱して部屋に戻ると、高志が掃除機をかけていた。大きな掃除機に振り回される高志に、あゆみはいとおしさがこみ上げてくる。
 百合子(中村愛美)と譲(藤木直人)の結納の日が近づいてきた。尚子は、母子関係のことで、あゆみになにか言いたそうだが、あゆみは、女将として、その結納をしっかり取り仕切る覚悟を固める。しかし、譲のことが好きなあゆみは、譲と百合子が仲良くする姿を内心見たくない。「妹なんだって」と言う百合子の言葉に譲は、あゆみに、なにかを聞こうとするが、それを無視するようにあゆみは淡々と式の説明をする。あゆみにも譲の優しさは伝わっていた。
 千寿子(江波杏子)がリー(ケリー・リャン)の問題もかたづいたようですしと、戻ってきたが、そのリーと和之が、どこかの旅館で出会い、内緒で贅水館に戻っていた。リーは布団部屋に隠れていた。あゆみは、結果として追い出すようなことになったことを、リーにわびるのだった。
 結納の日に百合子がつけるというパールのイヤリングをあゆみが百合子の部屋に持っていくと、百合子は相変わらず嫌味いっぱい。百合子に電話がかったため、あゆみは部屋を出るが、イヤリングの箱を持っているのに気づき、もう一度、百合子の部屋に戻ると、百合子は、聞こえないはずの左耳に受話器をあて、話していた。
 「耳が聞こえないなんて嘘。譲と結婚したいために嘘をついていたんだ」と悟るあゆみ。あゆみの冷たい視線に気づき、百合子は、あわてて、受話器を持ち替えた。
 怒り心頭に発したあゆみだが、「私の夢」と百合子が小学生時代にかいた絵を見て、グッとその怒りを心にしまい込んだ。絵は百合子と譲の結婚式を描いていた。
 あゆみに耳のことが嘘だとしれ、百合子はびくびく。しかし、絵を見たあゆみは、相手にしない。そんなあゆみに百合子は余計にいらだつ。
 結納の日。譲、百合子を中心に神妙な顔で並ぶ、幸彦、尚子、和之、それに佐々岡(にしきのあきら)ら。結納品の交換をしていると、突然佐々岡が、寿留女(するめ)がないと、騒ぎ出す。和之が酒のつまみにしてしまったのだった。それを知り幸彦も怒り出し、式がめちゅくちゃになりかけた時、しっかり式を取り仕切ると覚悟していたあゆみが、大人たちを前に怒りを爆発させた。「いい年して大人がギャーギャー。情けない!」。この怒りには居並ぶ大人たちも、グーの音も出ない。
 式が終わり譲は「ありがとう。君のおかげで無事すんだ」とあゆみにお礼を言う。本当は譲が好きなあゆみは何も言えない。勇気を奮い起こし、やっと「お幸せに」と譲に言うあゆみ。そんな二人を百合子がじっと見ていた。
 その表情には百合子の決意がうかがわれた。そして、あゆみに同席させ、結納のやり直しを始めるのだった……。


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