<第4回> <第5回> <第6回>


<第4回>
 高志(三觜要介)が、青森の親類宅からあゆみの元に逃げて来た。叔父の幸彦(生瀬勝久)に見つからないよう、あゆみ(深田恭子)は高志を必死に隠す。高志と一緒にいられることで、あゆみは、今までよりずっと強く生きることができる、そう思えたからだった。
 「高志、靴はどこ!」。あゆみの心に心配がよぎった瞬間、幸彦が靴を見つけていた。「高志がいるんだろう!」。幸彦が布団部屋に駆け込んできた。そこには、リ-(ケリ-・チヤン)とあゆみ。リ-があゆみの帯を直していた。ブ然と、幸彦は高志を探しだすが見つからない。やっと諦めて出ていった幸彦に、あゆみとリ-はホッとする。リ-にあゆみはまた急場を救われた。
 あゆみが譲(藤木直人)に高志が贅水館に来ていることを話すと、「無事で良かった」と譲も一安心。その譲に「いつまでも、隠し通せない」と、叔父さんや叔母さんに話した方がいいと勧められるが、どうしても高志と一緒にいたいあゆみは、譲に「なんでも持っているあなたにはわからない」と、つい言ってしまう。
 その夜、宴会が長引くからとあゆみが布団部屋に立ち寄ると、高志の姿がない。高志はどこへ?必死に探すあゆみの耳に、8、9歳の少年が一人、露天風呂にいたと、板前たちの話。保護者は見当たらず、客とは思えないとも。露天風呂に急ぐあゆみの前に、千寿子(江波杏子)が立ちはだかった。千寿子の小言を聞くうち、その少年が板前たちに取り囲まれてしまった。やはり高志だった。「旦那さんを呼んでこい」。だれかが言ったとき譲が現れ、「僕の甥」と少年を皆に紹介した。窮地を救われるあゆみと高志だった。
 譲に思いを寄せる百合子(中村愛美)は、あゆみと譲が、親しそうに話すところを見ては、嫉妬の炎を燃やしていた。
 見つかりそうになりながら、高志を隠し続けたあゆみだが、ついに和之(小橋賢児)に見つかってしまった。しかし、和之は、幸彦には黙っていてくれると言う。何かヘン?と思いつつも、あゆみはホッとする。
 あゆみにとって、譲やリ-の優しさが救いだった。が、あゆみと高志がいるのは「鬼の棲家」。百合子は、譲に優しくされるあゆみに嫉妬し、和之は東大を卒業し、将来を嘱望される譲を、羨ましさとともに、憎々しく思っていた。その和之が、布団部屋で、高志と遊んでいるうち、譲のハンカチを見つけてしまった。「こんなものをあゆみが大切にしやがって」。和之は腹立たしさから幸彦に、高志が隠れていることを話してしまう。さんざん騙された幸彦は怒り心頭に達し、高志を布団部屋からつまみ出し、裸同然で湯の抜かれた露天風呂にほおり出した。寒さに震える高志。その小さな肩に雪が降り出す。あゆみは、必死に中に入れてくれるよう懇願、尚子(岡江久美子)も頼み込むが、幸彦は聞き入れない。高志を励まし、歌を歌うあゆみ……。あゆみと高志、姉弟の運命はいかに・・・

<第5回>
 高志(三觜要介)を置いてもらうため、あゆみ(深田恭子)は譲(藤木直人)と親しくしないことを幸彦(生瀬勝久)に約束させられた。そのため、譲にヒドいことを言ってしまったあゆみだが、ただ一人の肉親、高志と一緒にいられることにあゆみは大きな喜びを感じていた。
 幸彦の嫌がらせは、高志にも及び始めた。仕事はさせるが、姉弟に食事は一人分しか出さない。あゆみは、くじけそうになる高志を懸命に励まし、姉弟二人一緒の暮らしを守ろうとがんばる。
 「交通費がもったいない」と高志を迎えに来なかった青森の親類、勝子(橘雪子)が、子供を連れて贅水館にやってきた。「客として来た」という勝子だが、高志の養子話を持ってきたのだった。そのことを幸彦に言われ、あゆみは必死に、高志を置いてくれるように頼み込む。「何でもする。寝ないで働く」というあゆみの言葉に、幸彦は、それならと、仲居の仕事に加え、大女将・静江(伊藤幸子)の世話をするよう命じた。
 またまた、あゆみの仕事が増えた。静江は、幸彦同様、冷たいが、「お客様をお世話して、ありがとうといって帰られることがうれしい」というあゆみの言葉に、何かを感じたようだ。高志のために必死に働くあゆみは、高志が半分残してくれた食事の“ぬくもり”に励まされる。しかし、いくら若いとはいえ、あゆみは過労で倒れてしまう。そのあゆみを助け、部屋まで運んでくれたのは譲だった。譲もあゆみの気持ちがわかっていた。
 あゆみが、和之(小橋賢児)のいじめから高志を助け、ホッとしたのも束の間、高志を養子にしたいという夫婦がやってきた。亡くなった子供が高志に似ているらしいのだ。高志を大切に育てると言う夫婦。しかし、あゆみは「私の弟。高志は誰の替わりでもない」と養子話をきっぱり断った。その勢いでリ-(ケリ-・チヤン)にも「離れ離れでは家族じゃない」と言ってしまうあゆみに、家族を故郷に残し、一人日本で働くリ-は寂しそう。「心がつながっていれば家族です」というリ-に、あゆみは、すまないと思うのだった。
 腹を空かせた高志は、冷蔵庫をのぞいているところを板前に見つかり、叱られると思い逃げ、けがをしてしまう。切なくなるあゆみ。あゆみを気遣う譲は「正解なんてない。君が決めたとおりにすればいい」と、高志の養子問題についてアドバイスしてくれるが、尚子(岡江久美子)には「あんた、高志の将来まで責任がもてるの」と言われる。 
どうしたらいいのか迷うあゆみが出した結論は・・・?

<第6回>
 このままでは、食事も、勉強も満足に与えることはできないと、あゆみ(深田恭子)は高志(三觜要介)を沢嶋家に養子に出すことを承諾した。しかし、栓抜きのストラップの鈴が鳴るたび、あゆみは高志を思い出すのだった。そんな元気のないあゆみをリ-(ケリ-・チャン)は励ますのだった。
 譲(藤木直人)が「今夜、部屋あいてますか」とあゆみに事務的に声を掛けた。幸彦(生瀬勝久)らとした約束もあり、あゆみはよそよそしい態度。その様子を今年も大学受験に失敗した和之(小橋賢児)が見つけ、「約束を忘れたのか。いちゃいちゃしやがって」と言い掛かりをつける。譲は、あゆみがさせられた約束を知り、余計にあゆみと高志の姉弟の応援をしたくなる。
 あゆみが沢嶋家に電話をかけると「敬太郎」「敬太郎」と、高志は呼ばれていた。「大丈夫なの?」。あゆみが聞くと、高志は答えようとせず「あんじゅと、ずしおう……」など、わけのわからないことを言い出す。しつこくあゆみが聞こうとすると、電話は一方的に切られてしまった。
 高志はどうしているんだろう。不安なあゆみが青森の叔母・勝子(橘雪子)に電話すると「一千万円で……」と、勝子が口を滑らせた。勝子は一千万円を受け取り、高志を養子に出したらしい。高志のただならぬ様子もあり、高志を取り戻したくなったあゆみだが、一千万円なんてもちろんない。幸彦は「ソ-プにでも勤め、体を売ったらいい」と言い出す。
 一千万円、一千万円。一千万円なくちゃ、高志を取り戻せない・・・。頭から離れないあゆみは、たばこの火の不始末でボヤを出してしまう。「お金のことで頭がいっぱいで……」とあゆみが尚子(岡江久美子)に言い訳していると、襖越しに、代議士の佐々岡(にしきのあきら)がすけべ顔で聞き耳をたてていた。
 あゆみは、かつて尚子が、旅館の資金繰りのため、自分の体を犠牲にしたことがあることを仲居頭の千寿子(江波杏子)から聞く。「全体のために何を犠牲にするか。潔かった」という千寿子の言葉があゆみの心に残った。
 高志のため一千万円稼ぐにはソ-プで働くしかないのか。そんなあゆみに佐々岡が、寝てくれたら貸してやると持ち掛ける。再び沢嶋家に電話をかけると、電話の向こうで、上手に朗読できないと高志を叱る声。「お姉ちゃん、助けて……」と高志も、涙声で救いを求めてきた。
 「家族を守れず後悔することの方が怖い」「自分しか気に掛けてやる人間がいないとしたら」「(全体のため)どの枝を捨てるか、潔かった」。高志の助けを求める声、リ-、尚子、千寿子らの言葉が頭の中を駆け巡るあゆみ。
 しばらくして思い詰めた表情のあゆみは、佐々岡の部屋に向かうのだった……。


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