<第10回> <第11回>


<第10回>
 百合子(中村愛美)との婚約を破棄した譲(藤木直人)は、あゆみ(深田恭子)と自由に会えるようになり、この日も朝早く、庭にあった一番早く蕾をつけたスミレをあゆみに持ってきてくれた。そんな心優しい譲にますますあゆみは、惹かれていく。
 しかしあゆみが、ホッとしたのもつかの間、融資した三千万円をすぐ返済するように銀行から申し出。貧乏旅館に金はなくあゆみは窮地に立たされた。
 「こんな旅館早く売ってしまえばいい」と幸彦(生瀬勝久)は非協力的。あゆみは千寿子(江波杏子)に手伝ってもらい、蔵で高く売れそうな骨董品探しなど、金策に奔走する。そんな最中、和之(小橋賢児)が、高志(三觜要介)に、あゆみとは、血のつながった姉弟ではないと言ってしまう。高志は、大きなショックを受けたよう。言ってしまった和之も高志の変化に、顔色を変えた。
 そんな折り、あゆみと高志の両親の遺体が見つかる。両親は二千万円の保険金を掛けており、あゆみは、この金を返済に充てることにするが、どこまでもあゆみが気に入らない幸彦は、高志に「おまえの姉ちゃんは、本当の姉弟じゃないことがわかり、本来おまえの金なのに、旅館に遣おうとしている」と話す。
 ますます動揺する高志。少年の心の中では、姉と思っていた人が本当の姉でなかったことが、うまく整理できなかった。一方、あゆみは高志が、本当の姉弟じゃないことを知っていると聞かされても、自分が頑張れば、きっと本当の姉弟になれると、闘志を燃やすのだった。
 三千万円の返済額のうち、なんとか二百万円かきあつめ、二千万円の保険金と合わせ、残り八百万円。そんなとき譲が、「ぼくの大切な金。大切な人に遣ってもらいたい」と、まとまった金をあゆみに差し出してくれた。「じゃあ、これ、お借りします」と、譲の優しさにまたまたうれしいあゆみだった。だが、そんなあゆみと譲に尚子(岡江久美子)が、「実は」と二人は兄、妹だったと告げる。このまま二人が親しくなり、結婚へなんて進んだら大変と思う母心だったが二人は「エッ!」と驚き、しばし言葉もない。旅館を救うため、尚子が一夜をともにした男は代議士の佐々岡(にしきのあきら)だった。事実を知り、譲は酒浸りの日々を送るようになり、あゆみの前に姿を見せなくなる。
 三千万円を銀行に返済。従業員に安堵感が広がった。「どうせ旅館は、おまえのモノ」と、幸彦はじめ尚子、和之、百合子は引っ越していった。
 佐々岡が乗り込んできた。「俺の知り合いの不動産屋に、旅館を売れ」とあゆみに迫る。あゆみがきっぱり断ると「別の銀行の融資も止めさせる。今度は、二千万円だ」と言い残して佐々岡は出ていった。
 またまた窮地に立たされるあゆみ。譲の助けも望めそうにない。従業員にも不安が広がる。そして、本当の姉弟じゃないと知った高志は……。

<第11回>
 誰もいなくなった贅水館に、あゆみ(深田恭子)が、ぽつんと一人いた。
 従業員たちは、「資金を銀行から引き上げさせる」という佐々岡(にしきのあきら)の話を聞き、出ていき、高志(三觜要介)は、あゆみが両親の保険金を旅館のために使ってしまったことに反発、青森の叔母の所へ行ってしまった。こんな時に頼りたい譲(藤木直人)は、あゆみと異母兄妹とわかったショックから、酒浸りの日々らしい。
 「どうしたらいいんだろう」。思い悩むあゆみの目に、コンクリートのわずかな隙間から精一杯生えているタンポポが写った。そのタンポポを見ているうち、本来エネルギー満タンのあゆみに再び、活力が蘇ってきた。
 あゆみは佐々岡に「私はあなたの娘。旅館は売らない。私が守る」と宣言する。久々にあゆみの前に現れた譲にあゆみは「兄とわかったときは悲しかった。でも会えてよかった」とそっと励ます。
 あゆみは顧客名簿を頼りに客の勧誘を始めたが、客は一向に来なかった。そんな時、十一人の予約が入った。やる気を出すあゆみだが、その予約客は、佐々岡に引き連れられた千寿子(江波杏子)ら、元従業員たちだった。
 ほうれん草のバター炒めなどの料理をみて、元従業員らは「家庭科の授業じゃあるまいし」など、あゆみに冷たいが、なんと言われようと踏ん張るあゆみ。そんなあゆみの前に今度は、リー(ケリー・チャン)が、警官に連れられて現れた。近くのバーで働いているところを逮捕されたらしく、警官はあゆみに事情を聞きたいという。
 そのころ、宴会場では一悶着起きていた。佐々岡にすり寄る元従業員らをしり目に、千寿子が「贅水館がつぶれるのは我慢できない。私が勝ったら、手を引いてほしい」と佐々岡にサイコロ勝負を仕掛けていた。代議士の地位を利用して金儲けは不正と迫られ、佐々岡は「愉快に決着をつけるのが俺流」とその勝負に応じた。
 「ちょっと今、忙しく」とあゆみはリーと警官を別室に残し宴会場に行くとまさに勝負の瞬間だった。「警察がきているのよ」というあゆみの制止も聞かず、奇数が出たら佐々岡の勝ち、偶数なら千寿子の勝ち。サイコロを佐々岡に改めさせ、手さばきよく千寿子が振ってでた目は、偶数だった。
 しかし、それは千寿子らが、あゆみのために、仕掛けたイカサマだった。佐々岡の目を盗み偶数しかでないサイコロに千寿子が、巧みに入れ替えたのだった。
 いかさまを見抜いた佐々岡が怒りだした。「この始末どうつける」と佐々岡がすごむところに、猟銃を持った幸彦(生瀬勝久)が「おれがつけてやる」と現れた。
 「あなたやめて」と後から来た尚子(岡江久美子)の制止を聞かずますます興奮してくる幸彦。「おれからすべてを奪った。なぜだ。殺してやる!」と幸彦。その言葉にあゆみが「叔父さん、それは、先生が欲しくてたまらないものを叔父さんが持っているから」ときっぱり、力強く話すのだった。
 あゆみのいう佐々岡の欲しいものとは尚子のこと。純粋に愛し結ばれた幸彦と尚子。佐々岡は尚子が好きだったので、幸彦が妬ましかったのだった。
 「今よりいい暮らしができたのに。そんなこともあったな」と、佐々岡。その言葉に力が抜け、幸彦は座り込んでしまった。
 佐々岡の息のかかった不動産屋が呼ばれた。譲にさっさと売買契約書にサインさせろと、命令する佐々岡。その前で、譲は「だまされているんだ」と不動産屋に言い契約書を破り捨てた。
 成り行きをじっと見ていたあゆみが、何かを決意したように「先生、今度は私と勝負しましょう。先生が勝ったら、旅館も土地も差し上げる」と言い出した。あゆみの一世一代の勝負。あゆみと高志に平安な日々が訪れるのか……?


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