<第1回> <第2回> <第3回>


<第1回>
 両親が突然、交通事故で死んでしまった。葬式で神妙な表情で、弔問客に頭をさげる、あゆみ(深田恭子)。そばには弟の高志(三觜要介)。高志は何が起きているのか、良く分かっていないようだ。
 葬式が終り、姉弟の今後について親戚会議が開かれた。どの顔も迷惑げ。結局、あゆみは、旅館をしている父の妹・尚子(岡江久美子)が引取り、高志は、青森の別の親戚のところで暮らすことになった。姉弟が一緒に暮らす最後の夜、高志は布団をかぶり、泣いていた。両親が健在中は姉としての自覚を忘れていたあゆみだが、そんな高志が急に愛しくなる。別れの朝、「おねえちゃんだと思って」と、あゆみは、ストラップの姉弟人形ララとキキのうち、姉のララを高志に渡し励ますのだった。
 叔母の夫、幸彦(生瀬勝久)に連れられ、旅館「贅水館(ぜいすいかん)」に着いたあゆみは、玄関に勢揃いした仲居ら従業員らにびっくり。さっそく、今は寝たきりの旅館の当主・静枝(伊藤幸子)に、尚子とともに挨拶にいった。寝たきりとはいえ、尚子に心を許さない静江。二人のやりとりに、あゆみはただならぬものを感じた。
 あゆみは尚子の娘、百合子(中村愛美)の部屋で暮らすことになった。部屋に入り、陶器の人形を手に取って見ていると、突然「私の宝物。触らないで」と百合子の声。「これから仲良くしよう」と握手しようとするあゆみに、百合子は、「勝手に人形に触って、謝りなさい」とケンもほろろ。また、高志のことを心配になったあゆみが、電話をしようとすると、「長距離なんだ。少しは遠慮しろ」と幸彦が注意する。
 次の日、あゆみが制服に着替え高校へ行こうとすると「義務教育は中学までだ」と幸彦がいう。あゆみは仲居の制服を渡され、怖い仲居頭・千寿子(江波杏子)に預けられた。仲居の制服である和服が着られず、あゆみが困っていると中国から働きに来ているリ-(ケリ-・チヤン)に着付けを手伝ってもらい、やっと着ることができた。優しいリ-にあゆみはホッとするが……。
 あゆみが千寿子に命じられ、ロビ-の掃除をさせられていると、仲居の理恵子(星野真理)が、大変だから代わってくれるという。その代わり、あゆみは、理恵子の仕事のお膳運びをすることに。お膳を板場に運んでいくと板長の池田(中村育二)らは、幸彦のやり方を非難し、あゆみに同情してくれる。しかし、幸彦が現れるや、態度一変。あゆみは、やりきれない。
 あゆみが、ロビ-に戻ると「ナニ、さぼっているの!」と千寿子の雷が待っていた。あゆみは理恵子にだまされたのだった。何か言おうとするあゆみに「言い訳はしない!」と千寿子。
 その夜、旅館で、地元代議士・佐々岡賢造(にしきのあきら)らの宴会があった。「やめてください」という声が急に聞こえてきた。佐々岡にいやらしく触られ、迷惑げなリ-の声だった。あゆみが「オヤジなにやってるんだ。代議士だからってなにさ」と佐々岡に食ってかかった。あゆみの態度に佐々岡は憤慨。尚子はあゆみを平手打ち、佐々岡に、ただただ平謝りするのだった。
 表で、あゆみが、ほほを冷やしていると、佐々岡の息子で、秘書をしている譲(藤木直人)が現れた。金の入ったポチ袋をくれる譲に「バカにしないで」と、初め断るあゆみだが、何か波長が合うものを譲に感じる。その様子を見ていた百合子が、譲と会ったら「許さない」と、譲がくれたポチ袋をあゆみは取り上げられてしまう。
 仕事が終わり、仲居部屋に戻ってあゆみが着替えようとすると、理恵子に「まだまだ!風呂掃除があるわよ」と露天風呂の掃除を押しつけられる。理恵子が出ていくと、リーが戻ってきた。あゆみはリーから感謝の言葉をもらえると思っていたが、リーの口から出てきたのは「なぜとめたの。嫌がれば嫌がるほどお金になるのに」という言葉だった。あゆみはショックを受ける。
 あゆみが、百合子の部屋に戻ると、男が、あゆみのバッグから下着を取り出し、ニヤニヤ。男は百合子の兄、和之(小橋賢児)だった。「何しているの」と、あゆみが和之と、もみ合ううち、百合子が大切にしていた人形が棚から落ち粉々に。その人形を見て、百合子は、ポチ袋を投げ「ポチ袋をとられた腹いせね」と、大声を上げる。屈辱感一杯のあゆみだった。
 旅館を出ていこうとするあゆみに幸彦が「出ていくなら借金を返してからにしろ」と冷たく言う。幸彦によると、あゆみの家を売っても、ロ-ンの残りがあり、その借金を自分と青森の親戚で肩代わりしたという。「16の娘が払える額じゃない。お前ら姉、弟は借金のかた」という幸彦。あゆみは、百合子の部屋を追い出され、ついに布団部屋で寝起きする事を、幸彦に命じられる。
 そのころ高志も辛い思いをしていた。何度か、あゆみに電話をかけるが何もしゃべらない。その無言電話を高志と思ったあゆみは、遠く青森にいる弟・高志に電話。「自分はうまくやっている」と嘘をつきはげます。しかし16歳の少女であることには変わりない。電話を終え、布団部屋のカビ臭い布団につっぷし、あゆみは涙が止まらなくなる。そんなあゆみに、尚子は「ここは鬼の棲家にみえるかもしれない。しかしどこへ逃げたって。あなたが変わらなければ、世の中、みんな鬼の棲家」と冷たく言い放つのだった。
 それから数時間後。「強くならなきゃいけない」とデッキブラシで掃除するあゆみの姿が、露天風呂にあった。

<第2回>
 突然、両親が交通事故で二人とも死亡、弟の高志(三觜要介)と別れ別れにされ、叔父の旅館で、仲居として働かされているあゆみ(深田恭子)は、楽しかった両親が生きていた頃のことを夢に見ながら、突然鳴った目覚し時計に起こされた。午前五時。冷たい布団部屋から起き出すあゆみにとって、また辛い一日が始まった。
 一家四人で朝食をとる叔父の幸彦(生瀬勝久)ら。テレビから「魚座生れのあなたはちょっぴりどじるかも。でもめげずに…」と星占いの声が聞こえてきた。あゆみを見ると、幸彦は不愉快そうにそのテレビを消し、百合子(中村愛美)は、なにさ!とあゆみを無視。そばで和之(小橋賢児)は薄きみの悪い笑いを浮かべていた。
 百合子に頼まれたスリッパの手入れを終え、あゆみが板場にいくと「時間切れ」と、朝食を出してもらえない。仕方なくあゆみが便所掃除を始めると、百合子が、これみよがしに仲居の理恵子(星野真理)に、「これあげる」と、あゆみが綺麗にしたスリッパを渡しながら、意味深なサイン。ピンときた理恵子は雑巾バケツをわざと倒す。汚れた水が飛び、あゆみはビッシヨリ。泣くに泣けないあゆみだった。
 布団部屋で、あゆみが汚れた着物を脱ぎ、干していると、和之が入ってきて、肌襦袢姿のあゆみにせまってきた。「フ-ゾクいくよりこっちの方が安い」と、一万円出して抱きつく和之にあゆみが抵抗していると、仕事を命じようと、理恵子がやってきた。理恵子の姿に、和之は逃げていったが、あゆみは、理恵子に「そうやって体を汚す雑巾女」と言われてしまう。
 着物や襦袢が乾かないまま仕事を続けるあゆみ。外は寒い。ゾク!ときて、運ぼうとしたシヤモ料理のうえにハッ!、ハッ!ハ-クシヨン!。「夜も飯ヌキだ!」と板前の激怒の声が飛んだ。庭の池の前で悔しさにあゆみが耐えていると、リ-(ケリ-・チヤン)がどこからか持ってきたお握りをくれた。働かねばならない弱い同じ立場のリ-に、あゆみの心が伝わり始めたよう。
 そのお握りをあゆみが頬張っていると、高志を預かっている青森の叔母・勝子(橘雪子)から電話だという。勝子は高志が息子を殴ったとあゆみに抗議してきた。実は、高志が、大切にしているゲ-ム機を息子たちに取り上げられ、頭に来て殴ったのだった。電話に出た高志を「お姉ちゃんが買ってやるから……」とあゆみは優しく励まし約束するのだったが、そんな金などあゆみにはない。幸彦に頼み込むが、幸彦は、けんもほろろ。
 「鞄から、大切な時計がなくなった」と客が騒ぎ出した。鞄を運んだのはあゆみだったので、あゆみが疑われた。そんな客にあゆみは「私は盗ってない。人を疑うなんて失礼!。調べれば気が済むでしょ」と語気を強め、帯を解き始めた。と、そこへ譲(藤木直人)が、客がなくしたという時計を持って現れた。鞄に入れたはずと思い込んだ客の勘違いだった。
 騒ぎが収まりあゆみが布団部屋に戻ると百合子が、友達と、あゆみをばかにして遊んでいた。百合子の耳に母がくれたピアス。「返してよ」。あゆみは初め冷静に言うが、百合子が母親まで馬鹿にしたようなことを言い出したため、あゆみはキレた。もみ合ううちに百合子の耳から血が出る。「キヤ-」。百合子の悲鳴に、幸彦らがやって来て、百合子の傷に気付き幸彦は、あゆみを殴りつけた。何度も殴られ、その場に倒れるあゆみ。興奮する幸彦を譲がやっと引き離してくれたが、人のものを勝手に持ち出し、その上、母まで馬鹿にされ、悔しくてしかたがない。あゆみはいたたまれないが、耐えるしかない。
 帳場から金がなくなった。それもあゆみが欲しがっていた一万円。
「一万円あればゲ-ム機が買える。愛する家族のためなら何だってできるはず」とリ-に言われたあゆみだったが、あゆみが本当に盗んだのか?幸彦に徹底的に追及されるあゆみの運命は・・・。

<第3回>
 あゆみ(深田恭子)は、高志(三觜要介)がいなくなったという青森の叔母・勝子(橘雪子)からの電話に愕然となる。勝子は本気で心配してはいないようで、あゆみが、いろいろ聞くと、勝子は一方的に電話を切った。
 「こんな寒空で高志はどこに」。心配のあまり、まんじりともせず一夜を明かしたあゆみは、起きるとすぐまた勝子に電話。「まだ見つからないわよ」と迷惑げな勝子だった。
 心ここにあらずのあゆみの様子に叔母の尚子(岡江久美子)が高志を「探しに行ってらっしゃい」と優しく言ってくれるが、それを聞きつけた幸彦(生瀬勝久)は激怒。あゆみの前で尚子を激しく殴り出した。
 怖くなったあゆみが、大女将・静江(伊藤幸子)に助けを求めると「幸彦や孫たちがあんな風になったのは、あの女のせい。止める気はない」ときっぱり。あゆみは、静江の言葉に、なにか薄気味の悪さを感じるのだった。
 エロ代議士・佐々岡(にしきのあきら)が、若い女性を伴って贅水館(ぜいすいかん)にやってきた。嫌な思いを押し殺し、あゆみは佐々岡に前回の非礼を詫び、警察に本気で弟を探してくれるようお願いしてほしいと頼みこむ。「選挙権のない奴の頼みなんか聞けるか」と取り合わない佐々岡だが、秘書の譲(藤木直人)が、あゆみの話を聞いていた。
 心配で仕事が手につかないあゆみは、しばしば千寿子(江波杏子)に叱られる。あゆみは半ばヤケクソで仕事を続けるしかない。
 帳場の電話が鳴った。「高志かも」。駆け出すあゆみに和之(小橋賢児)が足をかけ転ばせ、先に電話を取った。「何、黙ってんだよ」「どこにいるんだ」。話の様子からすると、やはり高志らしい。しかし、和之はあゆみに電話を代わってくれず、話の中身も教えてくれない。和之は、あゆみの弱みに付け込み「オレのオモチヤになってくれたら話しても…」と、またあゆみに迫ってくる。
 幸彦が、高志を探しに行っても良いと言い出した。その条件に、あゆみは、ドタキヤン芸者のピンチ・ヒッターをやらされる。必死に踊りについていこうとするが、そこは素人、あゆみは間違いだらけ。あきれた客が「もういい。飲め」と、あゆみに猪口を突き付けた。
「飲めないんです。嫌いなんです」と断るあゆみに、客もヤケになり、どうしても飲まそうと迫り、あゆみは酒を客にこぼしてしまった。
「お客様は神様」の世界。あゆみはどうしても飲まなければならなくなった。あゆみ大ピンチ!。そんなあゆみをリ-(ケリ-・チヤン)が機転を利かせ助けてくれた。
 芸者のピンチ・ヒッターを終えたあゆみだが、幸彦は「仕事が終わったらな」とすげない。風呂掃除が終わる頃は電車もない。ムカッ!とするあゆみだが、どうしようもない。
 落ち込むあゆみが、譲に呼び出された。譲は、青森県警に高志の安否を問い合わせてくれたのだった。「事件性はなく、警察は今のところ動かない」と告げる譲だが「弟さんは大丈夫。君の元気からそう思う」と、あゆみを励ます。そんな譲の優しさが嬉しいあゆみだった。
 意を決しあゆみは「私に何をしてもいいから」と和之に高志の居所を聞こうとする。ここぞとばかりに、いやらしさむき出しの和之、必死に耐えるあゆみ。そこへ幸彦が現れた。「そんなことしている暇あるなら、単語の一つや二つ覚えろ」と、幸彦は和之を殴りつけた。逃げ出した和之をあゆみは追い、もう一度高志の居場所を聞こうとすると、和之は「お前のせいで殴られた。痛かったんだ」と襟元を締めあげ、電話は嘘だと告白する。あゆみは怒る気にもなれない。がっくりするあゆみ。
 仕事に戻り、帳場の側を通りかかると電話が鳴った。「今度こそ・・・」と、あゆみが電話を取ると、高志だった。近くの駅に来ているらしい。「すぐ迎えに行くから」と電話を切り、勝手口から出ようとしたあゆみに百合子(中村愛美)が「どこ行くの。まだ仕事中よ」とあゆみの行く手を遮る。「出来損ないの弟なんていない方がいいんじゃないの」と百合子に突っ込まれ、一瞬、言葉に詰まるあゆみだが「私には一緒に、泣き、笑ってくれる家族は高志しかいないの」と、百合子を真っ直ぐ見つめながら話す。その言葉には熱があり、百合子は返す言葉がなく、「待っていて、お金あげるから」と立ち去っていった。
 しばらくして百合子は幸彦を連れて戻ってきた。「何やってんだ!」と怒鳴る幸彦。あゆみは、布団部屋に鍵を駆けられ閉じ込められてしまう。
 あゆみは高志に会えるのか……。


戻る


[第1-3回] [第4-6回] [第7-9回] [第10-11回]