あらすじ
<第1回> <第2回> <第3回>

<第1回> 「世にも不幸な新米刑事!」
 とある住宅街。警察が慌しい動きを見せている。非常線を張り、しきりと無線で連絡を取る刑事たち。何か重大事件が起こったらしい。その近くの公園。主人公の愛田誠(堂本光一)が、迷子らしい女の子の手を引いて歩いている。「実はお兄ちゃん、今日初出勤で、すごく不安なんだよね。いや、その前に、君のことだな。交番見つけたら、お巡りさんにうちまで送ってもらうからさ。」すると、「動くな。子供から離れて、両手を上げてゆっくりこちらに歩いてきなさい。」と一斉に警官に囲まれ、誤認逮捕されてしまう。 「違うんです!」と叫びながら連行された先は、誠の職場・天現寺警察署。誠に向けてシャッターを切る報道陣の中に、カメラを構えた佐藤佳織(内山理名)の姿も・・・。騒然とする刑事課の隣、一転のんびりムードの生活安全課では、五十嵐課長(山下真司)や先輩刑事の北見(筧利夫)、芹沢(石原良純)らが、初日から新人が出社して来ないので心配している。そこにアリバイが確認されたと同時に、今日から配属になる新人刑事だということもわかった誠が連れてこられる。唖然として誠を見つめる生活安全課の一同に、挨拶をする誠。
 そのとき、電話が鳴る。高校の入学式で騒ぎが発生とのこと。慌しく出て行く一同に、誠もなんとかついて行った。退学になった連中がバイクに乗って校長を取り巻いていた。「情けない人たち!」。女刑事があっさりと3人の若者を取り押さえた。あまりの手際よさに誠はポカンと見とれていた。「キミ、何年生?」。今度は学生に間違えられた・・・。
 「さっきはごめんね」。望月玲子(黒木瞳)は笑顔で誠に謝った。彼女も生活安全課のメンバーで課のエース刑事だ。「ここは刑事課がカバーできない仕事を一手にひきうける何でも屋さん。地味だけど、市民に役立っている実感がもてるわ。頑張ってね」。誠は北見とコンビを組むことになった。「ちっ、初日から遅刻するドジのお守りか」。不満げな北見に、五十嵐課長がそっと耳打ちした。「ソフトに頼むよ。いきなり辞められたら、俺の責任問題だから」。五十嵐は管理職に徹していた。
 誠が北見に同行して出かけようとすると、廊下から「バカヤロー!」とどなり声が聞こえた。「これが特ダネか!」。叱られていたのは新人カメラマンの佐藤佳織。佳織が床に落とした写真には連行される誠が写っていた。「初日にいきなりすごい写真が撮れたと思っていたのに」。佳織も新人と知り、誠はなんとなく親近感をおぼえた。
 誠は刑事に憧れていたわけではない。大学卒業をひかえて不況に強いのは公務員と考えた。いろいろ試験をうけたら運良く通ったのが警察。多摩の交番でのんびりと仕事をしていたら、ひょんなことから凶悪犯を逮捕して刑事に推薦されてしまった。「どうして刑事課を希望しなかったんだ?」。刑事の仕事に燃えている北見にとっては当然の疑問だった。「殺人とか強盗って物騒じゃないですか」「まったく最近の若いヤツときたら」。喫茶店で北見と誠が話していると、隣りの席に座っていた若い女がオドオドしながら声をかけてきた。「声かけにくくて」。それが捜査依頼してきた女子大生の片桐洋子(本宮純子)だった。
 洋子は1カ月前からストーカーにつきまとわれていた。ひっきりない手紙と電話。昨晩はベランダから忍びこまれそうになった。「その犯人、きっと捕まえてみせるよ」。誠の言葉に涙ぐんでいた洋子は笑顔でうなずいた。2人は洋子のアパート前で張りこんだ。手紙は直接郵便受けにいれられていた。きっとまた来るはずだ。「しばらくこの子お願いしていい?」「いいですよ」。人のいい誠は張り込みの途中、近くのスーパーで買い物するという中年女性から飼い犬を預かった。「なんだ、その犬は」。トイレから戻ってきた北見はポカンとしている。ふとアパートに目をやると、30代らしき男が郵便受けに手をつっ込んでいる。「あっ、あれ!」。犬が吠えだして男に気づかれた。「行くぞ!」。2人は懸命に追ったが、逃げられてしまった。「すみません」。誠はうなだれた。「俺たちの仕事はミスしてから謝っても遅いんだ」。
 その晩、誠の歓迎会がいきつけの居酒屋「天川」で開かれた。うなだれている誠を五十嵐課長がなだめた。「最初は誰でも失敗する」。すかさず課長の腰巾着とかげ口をたたかれている芹沢がフォローした。「犬を預かる親切心も大事だけどね」。この男、仕事よりも組織の中でどううまく渡り歩いていくかに関心がある。要領は悪いが、正義感に燃えている北見とは対照的なタイプだ。「遅くなりました」。玲子と前川(高木将大)も姿を見せた。それぞれが個性豊かで、さまざまな過去を背負ってきた刑事らしいことが誠にも少し伝わった。
 北見は刑事になって7年間、ずっと刑事課に異動願いを出しつづけている。「刑事になったら当然だろ」。玲子には8歳の息子がいる。「ご主人、奥さんの仕事に理解あるんですね」。誠の何気ない一言で、一同はシーンとなった。玲子はニッコリ笑って答えた。「理解がないから別れたのよ」。
 洋子が大学構内で襲われて重傷をおった。捜査の主導は刑事課にうつり、生活安全課はサポートにまわることになった。精力的に聞き込みを始める北見とは反対にドジな誠は警察手帳を忘れてしまった。「お前とのコンビなんかお断りだ!1人で内勤でもしてろ」。誠が報告書の清書をしていると、佳織がやって来た。「あんた刑事なの?」「あれは誤認逮捕だよ」。佳織はフォトジャーナリストを目ざしているという。すっかり自信をなくしている誠とは大違いだ。
 玲子と前川が帰ってきた。聞き込みの成果はまだない。「それにしてもたった半日で大好きな女性にあんな暴力をふるうようになるなんて。おなじ男として理解できないな」。誠は思ったままを口にした。まさかその言葉が大きな意味をふくんでいるとは、もちろん誠は気づいてなかった。しかし玲子だけは真顔でその言葉を聞いていた。
 誠は洋子の病室にいた。ベッドで寝息をたてている洋子に向かって誠はわびた。「俺のミスでこんなことになって」。ふとテーブルの上に封筒に気づいた。便せんには“僕を受け入れない天罰さ”の文字が。同室の入院患者によると、ついさっき男の見舞い客が来たという。誠は病室を飛び出した・・・。

<第2回> 「僕には無理です!秘密捜査」
 誠(堂本光一)と北見(筧利夫)は国会議員の岡村(渡辺哲)に呼び出され、家出した娘の理恵(大谷みつほ)の捜索を依頼された。岡村は国会での失言でマスコミの集中攻撃の真っ最中。「くれぐれも奴らにバレないように」。どんな大事件かと身がまえていたのに、家出人捜索と分かって2人は拍子抜けした。しかも誠は近所の人に泥棒と間違えられる始末。「またあんた!」「撮らないでよ」。カメラを向けた佳織(内山理名)が顔をしかめていた。
 そんな矢先、玲子(黒木瞳)の捜査一課への異動が見送られた。「本部の希望は男性なんだ」。しかも玲子は8歳になる息子健太(春山幹介)との母子家庭。五十嵐課長(山下真司)の説明に納得したわけではないが、玲子はうなずくしかなかった。
 そして玲子は前川(高木将大)と組んでクラッシュと呼ばれる薬物捜査にあたることになった。北見も名乗りをあげたが、玲子は「私たちで十分よ」と断った。「それなら私も今回は失礼して」。芹沢(石原良純)は間近に迫った警部昇進試験のことしか頭にない。
 ほどなく誠と北見は風俗店で働く理恵を見つけた。「奴らは世間体を気にしてるだけよ。あんな家に帰るより1人で生きていきたいんだよ」。理恵はすでに成人。本人が帰らないと言っている以上、警察としてはどうしようもない。
 玲子が覚せい剤の売人・武藤(桐生康詩)を間一髪のところで取り逃がしてしまった。健太のかけてきた携帯電話の音で気づかれてしまったのだ。一方、理恵が風俗店にいることを知らされた岡村は捜索願いを取り下げた。そこで手の空いた誠と北見も薬物捜査に合流することになった。
 「なによ。まだなんか用!」。それでも誠は理恵のことが気になって、再び風俗店を訪ねた。「本当は迎えにきてほしかったんじゃないの。お母さん泣いてたよ」「えっ」。強がっていた理恵が一瞬、息を飲んだ。横柄な父親とは対照的に涙ぐんでいた母親の姿を、誠はしっかり覚えていた。そして店を出た誠は佳織と出くわした。「男ってのはどいつもこいつも!」「いや、これは仕事なんだ」。必死に弁解していた誠はあわてて物陰に身を隠した。風俗店の側の建物に入っていったサングラスの男。あいつこそ、いま追っている売人の武藤ではないか。
 「よし、俺たちでこいつを逮捕しよう」。玲子をだしぬきたい北見は誠に口止めさせて、2人きりで風俗店の個室から張り込みを始めた。建物に出入りしているのは武藤を含めて3人。その夜、誠と北見は居酒屋「天川」に顔を出した。女将の美佐江(石野真子)を前にして北見は自信たっぷりに言い切った。「とにかく俺の言う通りにしたら一流の刑事になれる」。しかし誠は張り込みを課長に報告せずに続けているが後ろめたかった。
 誠が酔いつぶれた北見をおぶって歩いていると、タクシーが停まった。窓から手をふっているのは玲子だ。北見を送り届けてから誠は玲子のマンションに誘われた。「正直に言いなさい」。勘の鋭い玲子は2人が張り込みをしている事に気づいていた。誠は正直に告白せざるを得なかった。「容疑者を発見しながら報告しないとはどういうことだ!」。北見は五十嵐から叱責された。「手柄を争ってる場合?」「俺だって許せねえよ!」。玲子も北見も犯罪を憎む気持ちに変わりはなかった。「よし、署をあげてガサをかけよう」。しかし本部から摘発は麻薬撲滅期間にあたる来月まで待つよう命じられた。警察という組織の論理を前にして、現場の刑事たちは無力感に打ちのめされた。
 それでも摘発のメドもないまま誠と北見は張り込みを続けた。「何か緊急事態でも起こってくれりゃ、上の命令なんか無視して逮捕できるんだけどな」。苛立つ北見を残して、理恵に呼ばれた誠は建物の裏手に出た。「母親と連絡とってみようかな」。誠の優しさが頑なだった理恵の気持ちを動かせたのだ。「それがいいよ」「ありがとね」。理恵の素直な笑みに、誠も思わず頬をゆるめた。
 ふと売人たちの建物のほうを見た誠はあわてた。武藤たちがこっそり荷物をトラックに積みこんでいる。このままでは逃げられてしまう。「北見さんに伝えて」。誠は走りだしたトラックの荷台にへっぴり腰で乗りこんだ。「やばい!」。誠は携帯電話を置いてきてしまっていた。トラックはやがて人気のない倉庫街で止まった。武藤らがヤクザの幹部との取り引きを気を取られている隙をついて、誠は幹部の携帯電話で北見に連絡を入れた。「何もしないでじっとしてろ!」。もちろん誠はそのつもりでいたが、その時運悪く携帯電話の着メロが鳴ってしまった。「なんだ、てめえ!」。誠に気づいた男たちが一斉に誠に襲いかかってきた・・・。

<第3回> 「女装デカ恋も仕事も命がけ」
 人けのない夜道。若い女の胸元に後ろからつけてきた男の手が伸びた。「騒ぐな。触れるだけだから」。しかし次の瞬間、男の手に手錠がかかった。「強制わいせつの現行犯だ!」。物陰から走ってきたのは北見(筧利夫)。そして若い女が興奮している。「初めて手錠かけました」。なんと若い女性はおとり捜査のために女装した誠(堂本光一)だったのだ。しかし初手柄を喜んでいる間もなく、誠と北見は殺人事件の起きたホテルへ向かった。
 ホテルの部屋で絞殺されていたのは19歳の女子短大生。同室から逃走した40歳ぐらいの男が犯人に間違いない。「俺が調べるほどの事件でもないな」。北見は逮捕した痴漢・安田(斎藤暁)の取り調べを誠に任せた。「昨夜が初めてだよ。証拠があるなら見せてくれ」。安田は誠が新人刑事とみて、のらりくらりと供述をはぐらかした。
 「今晩空いてる?」。誠は佳織(内山理名)から誘われた。残業代がカットされて、頭にきていた誠は仕事を早めにきりあげた。「お先に失礼します」。そそくさと帰っていく誠を北見はぶ然と見送った。北見は誠に早く一人前の刑事になってほしいのだ。
 北見は居酒屋「天川」の女将、美佐江(石野真子)にグチをこぼした。「俺ってヘンかな。出世に興味ないし、仕事以外に楽しみもないし」「北見さんは今のままがいいわ」。鈍感な北見は美佐江の好意に気づかない。ふとカウンターに目をやると、五十嵐課長(山下真司)が警部昇進試験を終えたばかりの芹沢(石原良純)と前祝いで乾杯している。芹沢はもう警部になったつもりでご機嫌だった。
 誠は佳織の待つクラブに着いた。「なんか危ない夜ってかんじ。ゾクゾクしてきたわ」「もしかして朝までコースだったりして」。誠はてっきりデートのつもりでいたが、佳織はしばらくすると「ごめん。とりあえず解散」と言うなり、誠をほったらかしたまま店を出ていった。スクープのほしい佳織はこのクラブに短大生殺しのカギを握る男が出入りしている情報をつかんでいて、誠はカップルを装うために呼ばれただけだったのだ。そして男を発見した佳織は誠を残して尾行を始めた。
 「おかげさまで昨夜、その男と接触できたの」。殺された短大生は売春をしていた。佳織はその組織のボス、沢口(宇梶剛士)と今夜もう一度会う約束をした。「表向きはバイトの面接。実は取材」。佳織は上司の牧野(阿南健治)にも話していない。「一緒に来てこっそり見てて。万一ヤバくなったら、飛び出して逮捕して」「そいつ殺人犯かもしれないだろ」「嫌ならいいよ。一人で行くから」「そんな」。誠は佳織の意気込みに押しきられた。
 しかし2人の企みはあえなくバレてしまった。佳織の安全をはかるために、誠は警務課の杏子(蓼沼千晶)に頼んで盗聴マイクを用意してもらったのだが、玲子(黒木瞳)に見つかった。「民間人と潜入捜査しようとするなんて非常識にもほどがあるわ」。北見は五十嵐課長から誠の管理責任を厳重注意された。「なんで刑事はコンビを組まされるか分かるか。俺はお前の命を預かっている。お前もそうだ。でも2人の間に信頼がなきゃ、おしまいだ」。北見の言葉が誠の胸に重く響いた。
 「早く一人前だと認めてもらいたくて、気ばかり焦って。昔の私そっくりよ」。玲子から慰められた佳織は「頑張ります」と気丈にうなずいた。その佳織が捜査の突破口を開いた。沢口は佳織の腕時計に触れて指紋を残していたのだ。そして短大生が殺された部屋からも同じ指紋が検出された。捜査本部は沢口を容疑者と断定し、刑事たちは沢口の女のマンションへ向かった。誠と北見も覆面パトカーで張りこんだ。
 張り込み用のアンパンを買出し途中、佳織から留守電が入っていたのを思い出した誠は佳織の携帯に電話した。「捜査はどうかって聞いているのよ!」。佳織はなぜか苛立っていた。まだ沢口が現れてないことを伝えると「今度2本立ての映画見にいこ。ビートルズの2本目と、ポール・ニューマンとトム・クルーズの出てるやつ。アイスクリーム食べながら見よう」。一方的にまくしたてると佳織は電話を切ってしまった。「HELPだろ」。北見はビートルズの映画のタイトルをこともなげに答えた。佳織は助けを求めているのではないか・・・。もう一度電話しても佳織は出ない。「ヤバイ状況なのかも」。誠の直感は当たっていた。佳織は沢口とその仲間によって監禁されていたのだ。「探しに行っていいですかね」「勝手に持ち場を離れられるか。大体どこにいるんだよ」。誠の切羽つまった表情に北見は戸惑ったが、手がかりがなければ動けない。「彼女は他になんて言ってた?」。もう一つの映画は『ハスラー2』、つまりビリヤードの映画だ。「アイスクリームがどうとか・・・」。北見は遠くに見えるアイスクリームの看板に気づいた。 「警察だ!」。誠と北見は佳織が監禁されているビリヤード店に飛びこんだ・・・。


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