<第7回> <第8回> <第9回>
<第7回>
出勤前の午後、若い男に露店でアクセサリーを買って貰っている、幸せそうな五月(一色紗英)を見つけた明菜(財前直見)。その男はどう見ても、客ではなく「彼氏」といった風貌だった。
そんなある日、ロッカールームの貼紙が話題になった。
「店内恋愛は禁止とす…マネージャー、チーフは罰金百万円也、ボーイは罰金五十万円也」
とは言っても、従業員同士で恋愛をするなんて今のパラダイスでは考えられないと笑うホステス達。だが五月一人は「禁断の恋って辛いわ」とトンチンカンなことを言うよおこ(戸田恵子)に、「いいですよねえ恋するって」と静かに微笑むのだった。
開店後、明菜は見慣れない新人ボーイがいるのに気がついた。聞けば2週間前から勤めていると言う。その男・長瀬は、いつか五月とデートをしていた青年に他ならなかった。五月の恋愛が不意に心配になる明菜。その頃、五月と長瀬は「こんなとこ、誰かに見られたら大変だね」と言いながら、閉店後の夜の道を手をつなぎラブラブで歩いていた。
翌日、遅刻して出勤した長瀬が怒鳴られていると、その直後に五月も出勤してきた。もちろんナンバーワンホステスの五月を咎める人は誰もいないが。だがその日、五月の手を触る客を見兼ねた長瀬は、嫉妬のあまり、灰皿を替えるついでにわざとその客の足を踏んでしまう。明菜の機転でどうにかその場は事なきを得たものの、明菜は五月に裏でこっそり注意をする。だが五月は明菜に、今日のことは反省すると言いつつも「今のこの気持ちも大切にしたいんです…女として」と言い残して席に戻ってしまう。ため息をつく明菜…。
翌日、出勤したばかりの明菜が客からのクレームの電話をとった。同伴の約束をしたのに五月が来ないのだと言う。五月が同伴をすっぽかしたのだ。慌ててボーイに、長瀬はどうしているかと聞くと、案の定長瀬も休んでいると言う。その日は五月目当てで来店する客は不機嫌そうに次々と帰ってしまい、清野(佐藤B作)は気が気ではない。そんな様子を冷ややかに見ている石崎(上川隆也)…。その頃五月は、風邪で寝込んでいる長瀬を必死に看病しているのだった。
そうして五月の指名も同伴も目に見えて減ってきた頃、ボーイの一人が、長瀬と五月のツーショットを目撃したと騒ぎたてた。そのうえ清野は五月が長瀬に合鍵を渡すところを見つけてしまい、二人の交際はついに皆にバレてしまう。なんとか清野に訴えようとする明菜。だがそこに石崎が現れたため、明菜は石崎の寛大な判断に委ねようと身を引く。
ところが意外にも、石崎は冷たく言い放った。
「結論から言いましょう。二人の交際は…認めません」
長瀬の方へ向き直り、石崎はなおも続ける。
「君はうちの店の大事な、それもナンバーワンのホステスに手をつけた…それは…覚悟の上の行動なんだろうな?」
<第8回>
ある日の午後、明菜(財前直見)のマンションに、今週の乙女座は絶好調なのだと雑誌の占いページを指してはしゃぐよおこ(戸田恵子)が飛び込んできた。そんなよおこに呆れる明菜。
そしてクラブパラダイス。かおる(白石弓子)が合コンメンバー集めに、ホステス達を説得していた。相手がエリートの四井物産だと聞くや、目を輝かせるまゆみ(井上晴美)やなみえ(藤崎奈々子)、五月(一色紗英)ら。最後に麻弥(原沙知絵)も加わりメンバーも揃ったが、そのやり取りを明菜とよおこは殺気立って聞いていた。
合コン当日。かおるのかわりに、なぜか明菜とよおこが会場のレストランに現れた。ギョッとする五月達。明菜はかおるを仁(阿部寛)の店に拉致してきたのだった。
合コンは、自己紹介が始まった。かっこいい男に早速チェックを入れる明菜だが、ホステスであることを隠しているため、自分の自己紹介でうっかりデパガをやっていると嘘をついてしまう。その場凌ぎで全員がデパガだと話を合わせたものの、皆、下の名前で呼びあうばかりで互いの名字は知らないわ、煙草にすかさずライターを用意するわ、酒が少なくなればすぐに水割りを作るわと、染み付いたお水の性が表れまくり。
そんな折、おしぼりをお水独特のサインでボーイに示してしまった明菜。だがそのサインはなぜかボーイに通じてしまう。そのボーイは、パラダイスの元常連客で、よおこの元夫でもある島田(阿南健治)だった。
久々の再会に沸くよおこと島田。島田はこの店のオーナーをやっているのだと言う。結局その場のノリでつい明菜が、自分達はホステスであることを暴露。合コンは台無しに終わってしまった。
その日の晩、よおこと島田のいきさつについて麻弥に語って聞かせた明菜。昔の島田は都内に何軒もの店を持つ青年実業家だったが、バブル崩壊で借金王となったこと、よおこはそんな島田を見限ったのではなく、情けない姿を見られたくない島田の方が先に出て行ってしまったこと。とは言え、まさか焼けぼっくい火はつかないと踏んでいる明菜だったが…。
翌日、島田がパラダイスに来店した。よおこを指名する島田。島田とすっかり盛り上がるよおこ。
一方明菜は麻弥と共に、いかにもいかがわしい商売をしていそうな客を接客していた。しばらく後、その客が帰り間際、トイレから出て来た島田を偶然見つけ、声をかけた。怪しげな投資話を持ち掛けたのだ。客は、今週中に一千万用意できれば、こんな儲け話はないと言う。金融業者のブラックリストに載っていると言って断りつつも、別れた妻、つまりよおこと再婚すれば、家族名義で借金ができると入れ知恵され、顔を強張らせる島田。そんな島田の様子を遠目で見つけ、不審に思う明菜。
閉店後、仁の店でよおこはいきなり明菜に打ち明けた。島田に再婚してくれと言われたと。大はしゃぎのよおこ。だが、ふと見せたよおこの思案顔に、明菜は一抹の不安を覚えてしまう。
<第9回>
パラダイスに来店した客を厳しい表情で追い返す石崎(上川隆也)を見て戸惑う明菜(財前直見)。
その後ロッカールームでは、石崎の抱えた事情についてホステス達が勝手な推測をまくしたてていた。その時なみえ(藤崎奈々子)が、さっきの客は警察に違いないと言い出したため、その場は石崎が逮捕されるのではないかと大騒ぎ。皆の言い分に怒りを覚えつつも、心配が募る明菜。
翌日、遅刻出勤した明菜は、客席にズラリと座ったダークスーツの男達の軍団を見て驚愕。彼らは明らかに刑事といった風情だった。どのホステスが接客についても、男達は笑わず、話さず、ロクに酒も飲まない。見れば、全員が耳にイヤホンをしている。そしてマイクに向かってぼそっと「まだ店には来ていないようです」…。
そんなところに石崎が現れ、息を飲む一同。すると石崎の後ろで手錠がかけられる音がした。「桜井和夫、婦女誘拐の容疑で逮捕する」
…なんのことはない。常連客が婦女誘拐犯の容疑者だったため、石崎は協力しただけだった。ホッとしたのも束の間、今度は川上という客が明菜を指名してきた。店内を観察するように見回す川上は、グラスを合わせるといきなり明菜に同伴を申し込んだ。そして一杯も飲み終えぬうちに、川上は帰ってしまった。同伴に喜びつつも、首をかしげる明菜。
次の日の夕方、明菜が待ち合わせ場所に行くと、黒塗りのリムジンから川上が降り立った。当惑する明菜が連れて行かれた先は、お水の世界の人間なら知らない人はいないと言われ、日本一と名高い銀座の高級クラブ『花園』。緊張の中、店内に足を踏み入れた明菜は、川上が席を離れている間、店内や落ち着いたホステス、きびきびとしたボーイなどに目を奪われる。接客に当たったホステスにも感心していると、今度は作家や歌舞伎役者などの一流客が続々来店。若くして優雅なママが挨拶に現れた時には、すっかり圧倒されまくってしまった明菜だった。
席に戻ってきた川上に『花園』を褒めちぎっていると、そこに男が声をかけてきた。「嬉しいことを言ってくれるね」男は先日、石崎が追い返した客・藤波(浜田晃)だった。すっと名刺を出す藤並。
なんと藤波は花園グループの総裁で、川上はその秘書だったのだ。
「今夜君に来てもらったのは他でもない…ここで働いてみる気はないかね?」明菜は『花園』から引き抜きの声をかけられたのだった。自分の実力をこの『花園』で試してみなければ、この世界で生きる意味はないと言い切る藤波。パラダイスを愛するがゆえ、藤波の言葉に揺れる明菜…。
その夜、リムジンの中では藤波の横に石崎が座っていた。
「もう何年になるかな…お前が家を出て行って」