<第1回> <第2回> <第3回>
<第1回>
89年。世はバブル全盛期。六本木にあるクラブパラダイスでは、高価な酒が飛ぶように出て行く中、光輝く笑顔を浮かべた若干20歳の明菜(財前直見)がナンバーワンホステスに君臨していた。
そして99年。世は空前の大不況。空くのは安めのウイスキー。そんな中、23歳の五月(一色紗英)にナンバーワンの座を譲り、明菜は控えの席で一人、暗く座っていた。
閉店後、明菜は五月から嫌味半分にプレゼントの包みを渡される。
「お忘れだったんですか? 自分の誕生日…30歳の」憮然とする明菜。そのうえマネージャーの清野は、そろそろヘルプに回ってくれとまで言い出す。オーナーの松島の秘蔵っ子だったためクビにこそならないものの、全盛期を過ぎた明菜は遠回しに肩叩きをされているのだった。
閉店後、明菜は仁(阿部寛)の店・バーネクストで、バツイチの出戻りホステス・よおこ(戸田恵子)と飲んでいた。そこに手袋をはめた一人の男性客・石崎(上川隆也)が現れた。会話の弾みから店の名刺を出し、若いコに客を奪われることを酔いに任せて愚痴った明菜は、石崎に言われる。「成績だけのナンバーワンが…イコール最高のホステスと言えるのでしょうか」お水の世界もロクに知らない初対面の男のせりふにカチンと来た明菜は、そのままバーを後にしてしまう。
翌日、松島が倒れたとの知らせを受けて病院へ駆けつけた明菜は、弱々しく微笑む松島を見て目を潤ます。そんな明菜に松島は言う。「忘れるな…いつもお前の笑顔を待っている人達がいることを」そう勇気づけると松島は明菜に、小さな包みを差し出した。元気になった明菜の後ろ姿を寂しそうな目で見送る松島…。
明菜が出勤すると店がざわめきたっていた。容体が急変した松島が、さっき亡くなったというのだ。今日は臨時休業にすると言う清野。だが松島の言葉を思い出し、さっき松島から受け取った包み…中身は松島が愛用していた懐中時計だった…を開けた明菜は、店を開けようと主張する。「どんな辛いことがあろうと、お客様に見せる笑顔は同じ。ここは舞台! あたし達は女優よ!」
その日に限って店は忙しかった。そんなパラダイスのネオンを、バイトをクビになりボーッと眺めていた麻弥(原沙知絵)が、面接に訪れたと勘違いされ、結局話の流れからホステスとして加わることになった。ミスしまくりの麻弥を巧みにフォローする明菜。
ようやく明菜達の客が帰り、それを見送ると、すぐそばで別のデーブルにいたなみえ(藤崎奈々子)がまゆみ(井上晴美)に、指名を貰った客の名前を覚えていないと困惑していた。結局、本人に聞くしか術がないと腹をくくったなみえに、やりとりを聞いていた明菜は口を挟んだ。
「それで? そのあとはどうなるか考えたの?」
そんなことをしたら2度とそのお客様は来ない、「自分が特別だ」と思いたいからお客様は高い金を払って店に来るのだと諭す明菜。
その後、なみえ達と共にテーブルに戻った明菜は、ベテランの会話術で客の名前を呼ばずに場を盛り上げていた。だがその客からついにマイボトルが入った。凍り付く明菜。なみえは、その客の名前を書き込まなければいけないのだ。次の瞬間、明菜はいきなり、その客の上着にわざと水をこぼし、その隙に上着の内側のネームを盗み見た。
「すみませんでした…あの…高橋…さん?」明菜のイチかバチかの賭けは的中! 客の名前は高橋だった。
閉店後、よおこらと仁の店でうまい酒に酔いしれる明菜。
だが次の日。思いもかけない男が店にやってきた。いつの日か会った手袋の男、石崎だった。なんと石崎は、クラブパラダイスの新オーナーだったのだ!
<第2回>
石崎(上川隆也)に啖呵を切ってクラブパラダイスを辞めた気になっていた朝。明菜(財前直見)はよおこ(戸田恵子)に無理やり出勤させられる。
店では若いホステスらが、明菜をチーフに任命した昨晩の一件で、閉店後の五月(一色紗英)は大荒れだったと噂をしていた。そこに出勤してきた五月が明菜に、来た早々、石崎とはどういう関係だと言い出し、
明菜はいよいよ店を辞める決意を固くする。
だが明菜の退職願いもうやむやなまま朝礼が始まってしまった。すると五月は、明菜がチーフになるのは納得がいかない、自分と明菜のどちらがチーフにふさわしいか考え直して欲しいと石崎に申し出た。それを受け、石崎は提案をした。自分の大事な客を二人に接客させ、どちらがホステスとしてより優れているかをその客に判断して貰う、その人を改めてチーフに任命しようと。
それを聞き、明菜に宣戦布告する五月。だが辞めるつもりの明菜は、そんな戦いに挑むつもりはないと言う。すると石崎は言った。元ナンバーワンのプライドがあるなら、勝って辞めるくらいの意地はないのかと。石崎の言葉にムカつく明菜。するとよおこが明菜にかわり、明菜が勝負を受ける段取りをつけてしまった。
閉店後、仁(阿部寛)の店で飲みながら、勝負に乗ってしまったことを後悔する明菜。けしかけたよおこまでが「あんた不利よ」と言い出す始末。ますます気が重くなる明菜だが、同時に石崎への怒りや、店を買い取ったかもしれぬ石崎の正体に謎を抱くのだった。
翌日、気合いを入れたファッションに身を包んだ明菜と五月が出勤してきた。石崎の客・伊部(西岡徳馬)が来店し、いよいよ勝負開始。伊部はあでやかな五月を見、その可愛さに声をあげるが、明菜には見向きもしない。悔しがる明菜の目の前で五月が携帯の番号を書いた名刺を渡した。それに負けじと、明菜は自宅の電話番号を書いた名刺を渡す。 そうして両者の戦いはバチバチの火花を散らしながら展開するが、伊部の手が自分の腰に回ったのを感じた五月は、トイレで化粧直しをしながら一人、この勝負は貰ったという手応えを噛み締める。
だが五月の不在中、伊部は明菜に軍配が上がるようなことを匂わせる。伊部は、どちらにも勝ったと思わせて、いい思いをしようとしているらしい。その後、話の展開から、来週伊部が50歳の誕生日を迎えるという話題になった。そしてその日は、最近疎遠気味の娘の誕生日と同じ日なのだと言う。それを言ったきり、寂しそうな表情になる伊部…。
伊部が帰ることになった。とうとう勝負の結果が出る…はずだったが、伊部はどちらがいいホステスか決められないと言う。がっくりする一同。そこで石崎が提案した。来週の伊部の誕生日の前日、店で前祝いをしよう、その時こそ、二人の勝敗を決めて貰おうと。
後日、伊部への誕生日プレゼント選びに頭を悩ます明菜。そんな明菜は麻弥(原沙知絵)のふとした助言から、予想外の安い物を選ぶ。そんな明菜の買い物風景を見掛け、明菜より遥かに高価な物を選び、ほくそえむ五月だったが…。
<第3回>
ある晩のクラブパラダイス。自分の客を奪ったまゆみ(井上晴美)の頬をなみえ(藤崎奈々子)が張った。その後もまゆみは他のホステスの客を奪いまくり、ついには五月(一色紗英)の客にまで手を出し五月の怒りを買ってしまった。
その日の閉店後。まゆみはその月の同伴賞に選ばれ、嬉しそうに金一封を受け取った。だが五月をはじめ、周りの女の子達はそんなまゆみの喜び様を冷たい目で見、聞こえるようにこきおろす。そんなホステス達に、石崎(上川隆也)は、どのホステスを選ぶかはお客様の権利だと一蹴するのだった…。
そして後日。まゆみの出勤前にもかかわらず、クラブパラダイス店内の空気はどんよりと重たい。バーテンの加藤(伊藤俊人)に、まゆみを指名した客にヘルプにつくよう言われたなみえ達は、きっぱりとそれを断る。見兼ねた明菜(財前直見)がなんとかなみえ達の機嫌をなだめすかすものの、今度はそこに、明菜をいつも指名する客・山田がまゆみと腕を組んで来店。いきなり明菜の形相は変わってしまう。
それでもなんとかまゆみのヘルプについた明菜は、まゆみが席を立った時、山田から妙な噂を耳にする。どうやらまゆみは、ベッドを共にして、他のホステスから客を横取りしていたらしいのだ。
お客とエッチする…それは、お水の世界においては絶対禁じ手となっている暗黙のルール。もしこのことが石崎にバレたら、おそらくまゆみはクビになる。何がなんでも指名をとってやるというタイプでもなかったまゆみの行動に明菜は胸騒ぎを覚えるのだった。
数日後。開店前のクラブパラダイスで、明菜は遠回しに、今のパラダイスをどう思うか石崎に問う。どうやら石崎は、まゆみのことに気付いているらしい。だが石崎は、そんな状況をどうするかは「あなだ次第ですが」と明菜に投げ返す。「あたしにどうしろってゆうのよ」と途方に暮れる明菜…。
その日、明菜は洗面所でまゆみに、お水の倫理を破ったことを注意したものの、まゆみはそんな明菜をくすくすと笑って相手にせず、その場から立ち去ってしまう。
閉店後、まゆみの姿を探す明菜。だがまゆみはダッシュで帰ってしまったという。
その頃、まゆみは保育園に息せききって駆け付けていた。「ママあっ」と歓喜の声をあげる子供に「勇助! ただいまっ」と笑顔で答えるまゆみ。そんなまゆみがアパートへ戻ると、部屋の前には明菜が立っていた。勇助を連れたまゆみの姿に驚く明菜。
夫に死なれ、息子・勇助を抱え、この仕事を始めたというまゆみ。そして死んだ夫の両親が最近になって、勇助を私立の幼稚園に入れるために引き取ろうとしているのだという。春までに私立の幼稚園の入学金と寄付金を揃えられなければ、義母達は法的手段をとってでも勇助を引き取ろうとする勢いなのだとも。貯金のないまゆみは、息子との暮らしを守るため、客の指名を獲得しようとお水の掟を破ったのだった…。