第8回 2005年12月8日(木)放送 あらすじ

お犬様

 世の乱れも大奥で女性が苦しむのも全ては綱吉(谷原章介)のせいと右衛門佐(高岡早紀)と信子(藤原紀香)にたきつけられ、病床に伏せる綱吉に毒を盛ろうとした安子(内山理名)。綱吉は、「全てはわしが悪い。長丸が死んだことも、何もかも……」と安子の手を握り、「将軍の座など譲ってやる。ただそなたと、二人でいたい」と涙を流す。綱吉の言葉に心動かされ、安子が毒を飲み水に混ぜるのを逡巡したその瞬間、後継将軍選びの席で、綱吉にはもう一人若君がいると柳沢(北村一輝)が衝撃の発言をしたことが伝えられた。その若君・吉里とともに染子(貫地谷しほり)は綱吉の側室として大奥入りを果たした。思いがけないお世継ぎ出現に桂昌院(江波杏子)は大喜び。綱吉の病状も快方に向かう。そんな中、一人染子だけが、柳沢の印籠を握り締め、悲しげな様子でいるのに安子は気が付くのだった。お伝の方(小池栄子)は、徳松亡き後、世継ぎとなるべき紀州家に娘・鶴姫を泣く泣く嫁がせたのに、そんなことはおかまいなしに吉里出現を喜ぶ桂昌院に対して苛立ちを隠せない。
 エスカレートする“生類憐みの令”に民衆が苦しみ、その悪政の裏で私腹を肥やす柳沢の影もちらつくようになっていた。世直しを願う水戸光圀(大杉漣)を見舞う右衛門佐。光圀は、自分の配下の隠密として、これまで大奥の動静を探らせていた音羽(余貴美子)が、今後右衛門佐の味方なるであろうと伝える。病床にありながら、光圀は、江戸城に犬の毛皮を送りつけ大奥に騒ぎを巻き起こす。綱吉の家臣は知られてはならぬと箱ごと隠したものの、なんと綱吉の飼い犬・竹丸がくわえて持ち出してしまったのだ。
 そんな最中、もともと柳沢の側室であった染子の子・吉里は、綱吉の子ではなく、実は柳沢の子ではないかと右衛門佐は疑いを持つ。右衛門佐は染子を訪ね、吉里を可愛がる振りをしつつ、誕生日を聞き出した。綱吉が柳沢邸を訪れた日付と誕生日をすり合わせるのである。早速、信子の部屋に行き、同席した安子にも「染子殿が身籠ったころに上様は柳沢邸に足を運んでいらっしゃいませぬ」と報告する。右衛門佐は、証拠をつかみ柳沢を追い詰める覚悟である。しかし、信子はなんとその計画を事前に柳沢にばらしてしまう。知らせてくれたことを感謝する柳沢に対して「誰が世継ぎになろうとわたしには関わりのないこと……私はただ、奥で埋もれて死ぬ定めに抗おうとしているのかも……」と信子は自嘲気味に笑うのであった。
 竹丸の姿が見えなくなり桂昌院は大騒ぎで、大奥中を探し回る。お伝の方がうんざりして部屋に戻ると、くだんの犬の毛皮が落ちている。もしや竹丸の毛皮ではと青ざめるお伝の方。「誰かが罪を着せようとしておるのじゃ」と思い込むお伝の方は大典侍(中山忍)を疑う。桂昌院を手伝って竹丸を探し疲れた大典侍が、今度は部屋に帰って驚く番であった。犬の毛皮をお伝の方が置いたのだった。慌てる大典侍。見つからないよう処理しようと箱に入れ、廊下に出ると女中にぶつかり毛皮が飛び出した。うろたえる大典侍。そこへ安子が現れた。慌てふためいて大典侍は「犬を殺した濡れ衣など着せられたら、どんな仕置きを受けるか……」と安子に必死で口止めをする。しかし、間の悪いことに桂昌院が通りかかり、毛皮を見てあわや気を失いそうになる。「誰がこのようなことを」と一同に問う。「私でございます」と声を上げたのは、なんと安子であった。
 安子は、綱吉と桂昌院から詰問された。「この罰当たり! 生類憐みの令のご利益をふいにする気か!?」と激昂する桂昌院に、安子は果敢に「女の悲しみの上に成り立つご利益などございましょうか」と立ち向かう。そこへ、右衛門佐が現れ「吉里君の出自に疑念がございます」と爆弾発言を。毛皮どころでない大騒ぎが勃発した。
 柳沢が呼び出され、綱吉らの前に座る。右衛門佐は神社の宮参り祈祷控えを証拠として持ち出した。しかし、柳沢は「それは安産祈願。宮司殿の書き間違いでしょう。」とかわしたばかりか、「どのようにして手に入れられた」と即座に反撃を仕掛ける。お骨折りされたのは「水戸光圀公では」と見抜かれたちまち形勢逆転してしまう。
 再び安子の詮議に戻った。安子の処分に気乗りしない綱吉を桂昌院が責める。綱吉は「もうわしの好きにさせてはいただけませぬか。わしの望みは安子と共に心安らかに過ごすこと、ただそれだけなのです」と桂昌院に反抗する。怒りの矛先を安子に向けようとする桂昌院の前に、犬が……。竹丸ではないか。そのてんまつを音羽から聞いて、光圀は溜飲を下げつつも、ほどなくして亡くなった。
 安子の父・成貞(平泉成)が隠居を申し出たため側用人筆頭の地位を得た柳沢の権勢は揺るぎなきものとなっていった。柳沢は朝廷に働きかけ、桂昌院に女性として最高の従一位の位を献上する。ますます権勢をほこる柳沢は、その宴を自邸で催すことにして、綱吉らを筆頭に関係者を招いた。綱吉も興に乗り舞を舞う。柳沢は太鼓を打ち始めた。
 賑やかな宴が盛り上がる中、よちよち歩きの吉里が菓子を望んで女中のもとへやって来た。女中が与えようとすると吉里は左手で受け取る。それを見た染子が青ざめた。安子はその様子を不審に思いつい柳沢に目を移すと、柳沢が得意げに左手で太鼓を打っているではないか。それに桂昌院も気が付いた。右衛門佐も信子も……。
 桂昌院がふらりと立ち上がって震える手に持った扇子で柳沢の太鼓の手を指す。舞に興じていた綱吉は、母の異常な様子にようやく気付いた。「いかがされました」と声をかけた瞬間、桂昌院は喉をかきむしり、その場に倒れるのであった。取り乱す綱吉。
 大奥に渦巻く大いなる陰謀と本当の敵が姿を現しつつあることを安子は悟るのだった……。

キャスト

内山理名
谷原章介
小池栄子
高岡早紀
北村一輝
中山 忍
貫地谷しほり
  ・
大杉 漣
  ・
平泉 成
火野正平
  ・
余 貴美子
  ・
江波杏子
  ・
藤原紀香

スタッフ

■脚本
 尾崎将也

■演出
 川村泰祐

■音楽
 石田勝範

■企画
 保原賢一郎

■プロデュース
 林 徹
 手塚 治
 樋口 徹
 金丸哲也

■製作
 フジテレビ
 東映

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