<第1回> <第2回> <第3回>

<第1回>
 東京、某所。オークションハウス「ワイズ東京」のオープニングパーティの日。
 あわただしく会場設営、マスコミ対応なりに追われるスタッフたち。
彼らに囲まれたワイズ東京の支配人、宇佐美薫(伊武雅刀)は自分の晴れ舞台にいかにも満足そうである。
 一方、5年ぶりに日本に戻ってきた立花雅之(江口洋介)はなぜかこっそりとワイズ東京に忍び込んだ。表ではテレビレポーターがイギリスの老舗大手オークションハウス、ワイズロンドンの日本進出を伝えている。合わせて本日、オープニングパーティの後に行われるオークションにギリシャの大理石製女神像がオープニングの目玉商品として出されることも。
 政財界のお偉方を集めたパーティは華やかに盛り上がり、早くもプレ・オークションが始まる。そして女神像は1千万ほどで、さる社長夫人の手に落ちるかと思われた。
 ところが落札直前にひとりの男がビットしたことで、急に値がつり上がっていく。スタッフたちは、この男が招待客でないことに気がついて慌て始めるが、オープニングパーティを台無しにするわけにもいかず、いまさら止められないでいると、女神像は落札予想価格をはるかに大きく越えてその男の手に落ちてしまった。
 しかもパーティが終わった後、男はスタッフに囲まれてぬけぬけと言い放つ。「いりません。買うつもりはないんです」
 唖然とするスタッフたちを前にその真意を明かす。
 「これは偽物ですよ。皆さん大恥かくところでしたよ」
 次の瞬間、女神像は床に叩きつけられ、木っ端微塵になってしまう。
 失神しそうになったスタッフが、その破片を見ると、大理石の粉を樹脂で固めただけのシロモノだった。
 そして男はシャンパンを片手にニッコリと笑いながら
 「申し遅れました。私はロンドン本社から派遣された立花です」
 立花のやり方は早くも一部スタッフの猛烈な反感を買うが、一方でスポンサーである東都銀行から出向している若干23歳の副支配人・岡島卓郎(岡田准一)などは尊敬の眼差しを隠そうともしない。
 そのことが余計に他のスタッフを刺激したりして、宇佐美は複雑な表情、一方で修復家の折原千鶴(葉月里緒菜)は我、関せず・・・。
 とはいえ、明日には本番の美術オークションが開かれることになっており、ワイズはスタッフ全員で準備に大忙しである。
 立花はオークションカタログを徹底的に調べ、美術品のコンディションの確認から落札予想価格の変更など、精力的に口をだすので、東洋美術担当の亀井喜春(石原良純)などはむくれるのだった。
 そんな時、立花が宇佐美に尋ねた。
 「カタログリストの最後にある作品『X』って何ですか」
 宇佐美はそれには答えずにスタッフを支配人室に集めた。
 そこになんとレオナルド・ダ・ヴィンチの「モナリザ」が掛けられていた。
 驚く一同を前に宇佐美が話し始めた。
 「これはもちろん贋作です。しかも誰かが本物を描き写した、世界でもっともよくできた贋作です。というのも、1911年、館内工事の作業員による盗難事件によって世界最高の名画はルーブルから行方不明になっていたことがあるのです。フランス当局の必死の捜査で、2年後にイタリアで発見された・・・ということになっているのですが、それは体面を気にしたルーブルが別の贋作を用意したという話しがあるのです」
 そして宇佐美が1枚の古いモノクロ写真を取り出した。
 「その手がかりになる写真です」
 そこには「モナリザ」をパーティーホールの壁にかけ、側近と乾杯するヒトラーの姿があった。
 「この写真は、『モナリザ』が盗まれたあと、世界を転々として、最終的にナチスの手に渡ったということを証明しているのです」
 そのころ、宇佐美が持っていた写真と同じモノをみつめながら話す綱島貴一郎(松本幸四郎)の姿があった。
 ヒトラーが写されたその写真には「モナリザ」の横にもう1枚「モナリザ」によく似た絵がかけてある。
 「あの有名な『モナリザ』は、実はダ・ヴィンチが描いた2枚のうちの1枚で、対になるもう1枚の肖像画が存在する・・・それをナチスがもっていたわけです・・・。その絵がね・・・日本にあるんだよ」
 写真を前に、ワイズ東京のスタッフたちは興奮状態だった。
 「ルイ14世がヴェルサイユ宮殿で眺め、ナポレオン1世がルーブルの寝室に飾って楽しんだと言われている2枚の『モナリザ』。片方はルーブルに戻ったとされているが、『2枚目のモナリザ』の方はナポレオン以降、200年間行方がわからないとされていた。が、この『2枚目のモナリザ』が今回のオークションリストの最後を飾る作品『X』として登場する」
 ・・・「!!」
 オークションの本番が近づき、『2枚目のモナリザ』の鑑定が行われる。
 その席で、この絵がX線測定も炭素年代測定も通過しており、キャンバス代わりに使われている木材の種類(ポプラ)にも問題のないことがデータで示される。数々の化学鑑定の数値を見せられ、最初は半信半疑だった鑑定家たちも「この謎めいた口元・・・まさしく『モナリザ』の微笑だ!」と声をあげるのだった。
 が、もし、これが真っ赤なニセモノだったら・・・
 ワイズ東京の評判は世界的規模で地に落ち、せっかく立ち上げた本格的オークションハウスの夢が泡と消えてしまう。
 支配人室で向きあう宇佐美と立花。
 「あの絵を鑑定させるために俺を呼んだんでしょう。なのに、『2枚目のモナリザ』を一目も見ることができないってどういうことなんですか」と宇佐美につめよる立花だった。
 立花は『2枚目のモナリザ』の行方を追って日本に帰ってきたのだ。
 そしてもう一人、『2枚目』を追いかけている女が登場する。すでに修復家としてワイズ東京に入り込んでいる折原千鶴である。
 立花と千鶴は協力して、東都銀行が『2枚目のモナリザ』を入手したという「幻の鷹波コレクション」を洗い出す。
 そこで明らかになる新事実とは・・・?
 ・・・刻々と迫るオークション本番・・・。『2枚目のモナリザ』を巡ってうごめく陰謀・・・。
 立花が知っている「最後の切り札」とは何か・・・。ワイズ東京はどうなるのか?・・・。
 幻の鷹波コレクションとは・・・。折原千鶴の正体は?・・・。
 そして宇佐美と同じ写真を持っていた謎の紳士、綱島の正体は?・・・。

<第2回>
 折原千鶴(葉月里緒菜)は、 正体不明の男、綱島貴一郎(松本幸四郎)に呼び出され、綱島のもとにでかける。二人には何か関係があるらしい。
 そのころワイズ東京では、金庫に眠る美術品の数々をオークションで売るために支配人の宇佐美薫(伊武雅刀)や坂崎歌子(大島さと子)、岡島卓郎(岡田准一)らが一つ一つチエックしていた。しかし、それらは東都銀行がバブルのころ不良債権のカタとして差し押さえたもので価値が下落したものばかりだった。
 その中から立花雅之(江口洋介)が、15世紀フランス製のジュエリーケースを見つけた。「1億5千万円まで値をあげてみせる」と言いきる立花に歌子らは不信の目をむけるがオークションが始まると、値は2億円にまで上がり、そして落札された。それは後期ルネッサンスの名工・デュガリの作品で現在世界で15個しか残っていないものだった。
 ところが、そのジュエリーケースは15年前にヴェルサイユ宮殿から盗まれたものだったことがわかる。返還を求めるフランス大使館員がワイズ東京に現れたが、ジュエリーケースの売買契約も終わり落札した女性の手にあった。立花と宇佐美がその女性のもとを訪れて事情を説明すると、「返してもいいが、ただし三億円で買い戻してくれ」とのこと。困りはてた宇佐美だったが、三億円で買い戻すことに。そして立花がジュエリーケースを取りもどしたのだが途中でなくしてしまう。

<第3回>
 朝、ワイズ東京のオフィスでは、立花雅之(江口洋介)が「1000のニセモノをあばいた男」と大きく取りあげられた雑誌の話題で持ちきり。だが、坂崎歌子(大島さと子)などは面白くない様子。
そのころ、東京鉄道社長の柴田兼市(杉本哲太)邸では、「帰ってきたのか。あの男」と立花が写った雑誌を憎々しく握りつぶしている柴田の姿があった。
 ワイズ東京では、スタッフらが、オークションにかける品を集めに奔走していた。が、誰が手を回したのかいっこうに集まらなかった。しかもワイズ東京はロンドン本店との契約で最低落札価格500万円の品が用意できなければオークションは開けないことになっているのだ。「オークションが開けなければワイズ東京は閉鎖に追い込まれる」とあせる支配人の宇佐美薫(伊武雅刀)に、立花は「誰かがワイズ東京を狙い撃ちしている」という。 
 弱り切る宇佐美のところへ、宇佐美のお気に入りのアートコーディネーターの高城みどり(林真奈美)が助けを求めて来た。企画した展覧会の目玉にしていたゴッホの「蒼の自画像」を持ち主の柴田が突然貸し出さないと言ってきたのだという。
そこで宇佐美はみどりを伴い、柴田邸に直談判に行く。が、そこには7枚の寸分たがわぬゴッホの「蒼の自画像」が並べられ、柴田が「この中の6枚は私が描いた贋作だ。本物を選んだら展覧会に協力する」と言いだすのだった。
 宇佐美は本物を選びだすことができず仕方なく引き上げようとすると、柴田は「それなら立花を出せ」と迫るのだった。
深夜、ワイズ東京で美術品の整理をしている立花のもとにあらわれた折原千鶴(葉月里緒菜)が柴田の過去について話した。柴田はかつて将来を嘱望された新進画家だったのだ。そしてその当時、立花と柴田は出会っているのだ。
 立花と柴田の二人に何があったのか!?立花は柴田の挑戦を受けるのか!?
 そして「ワイズ東京」はどうなる!?


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