あらすじ
<第4回> <第5回> <第6回>

<第4回> 「デモテープ!!」
 ついに未来(中島美嘉)が浩輔の説得に応じ、音楽を始めることになった。「俺と一緒に音楽を始めることになった」。早速浩輔(高橋克典)は由佳(加藤あい)に引き合わせ、未来を紹介した。「えっ!」。由佳は動揺した。カツアゲの一件もあるが、それ以上に未来が兄の関心を独り占めにしていることがたまらなかった。「私、聴きたいな。その子の歌」。由佳の挑発的な口ぶりに、「なんでこいつに」と未来は憮然と答えた。浩輔は未来にカラオケで歌わせたが、気乗りしない様子。「そんな歌でプロになれると思ってんのか!」「だったら止めるよ」。未来はプイと飛び出していってしまう。
 浩輔は未来のことが気になって仕事に身が入らない。「もう一回出てくるわ」。バイトの真司(塚本高史)に店を任せると、浩輔は綾(川島なお美)のスナックに向かった。「あんた、しつこいわね!」。浩輔をお金目当てと思いこんでいる綾の表情は厳しい。浩輔は綾の後ろでふてくされている未来に呼びかけた。「デモテープを作るんだ」。レコード会社に売り込むためにスタジオで録音するのだ。未来の表情が変わった。「録音って、いつ?」。浩輔は未来がやる気になってくれたのがうれしかった。「とりあえず第一歩だ」「ああ」。未来は照れ隠しのように顔をそらした。
 浩輔はある貸しスタジオを訪ねた。「吉村さん!」。オーナーの土屋(伊藤俊人)はかつて浩輔と一緒に仕事をしたエンジニアだ。盗作騒動で浩輔が音楽業界を追放されて以来の再会だ。「ある女の子のデモテープを作りたいんだ。力を貸して欲しい」「恩返しできないままで辛かったんです。お役に立てるなら光栄です」。土屋は二つ返事で協力を約束してくれた。
 その江崎(金子賢)は工藤(西岡徳馬)からプロデュースを打診された新人の女の子のビデオを見ていた。歌唱力がイマイチで、江崎は二の足を踏んだ。「歌なんかいくらでも加工できます。江崎さんの名前があれば」。工藤はあくまでもビジネス第一主義。「俺は人寄せパンダですか」。そう言いながらも、江崎は自分の地位を守るために結局引き受けざるを得なかった。
 そして江崎は興信所に浩輔の身辺を探らせていた。浩輔と未来が一緒にいる写真が封筒に入っている。未来は近所でも有名な不良少女。しかも報告書には歌がうまいという記述などない。そんな少女になぜ浩輔は関心を持ったのか―。「どうしてそこまで調べるの?」。佐和子(畑野浩子)が不思議がるのも当然だろう。しかし、江崎は不安をぬぐいきれなかった。
 録音を来週に控え、浩輔は未来をトレーニングに引っ張りだした。「私、身体弱いんだ」。ランニングを始めると未来はすぐに弱音を吐いた。屈伸運動では痛そうに顔をゆがめた。「毎日やれば進歩するだろ」。トレーニングを終えると、浩輔は気になっていたことを聞いた。「俺が拾ったメダル、あれ、誰にもらったんだ?」「父親。私とおふくろを捨ててどっかに消えた」。未来はなげやりな口調だったが、父親に対する思慕は隠しきれなかった。「やっぱり会いたいんだろ」「別に」。未来は強がって見せた。
 由佳の自作曲がCDの制作実習の最終候補に残った。講師から手直しを指示されて、由佳は「頑張ります」と笑顔で答えた。念願のプロデビューへの第一歩だ。浩輔に相談したいところだが、未来のことがひっかかっている。「私が取りもったげよか」。江崎の一件以来気まずくなっていた美紀が仲介役を買ってでてくれた。
 しかし、美紀の心遣いも空しく、由佳の気持ちは晴れなかった。浩輔と一緒に飲んでいた坂井(石原良純)が、デモテープ録音のことをもらしたからだ。「お兄ちゃんはあの子がいればいいんだ」「そんなことはない。由佳は大切な妹だ」。いつしか由佳の心の中には未来に対する嫉妬が芽生えていた。
 「今回の話はなかったことにしてもらえませんか。あなたに協力するわけにいかないんです」。録音当日、浩輔が未来を連れてスタジオを訪れると、土屋から突然のキャンセルを告げられた。「誰のさしがねだ!」「すみません」。土屋は頭を下げるだけだった。「世の中、こんなもんだよ。帰るわ」。未来がポツリとつぶやいた。
 浩輔の怒りはおさまらなかった。画策したのはアイツ以外に考えられない。浩輔はグローバルサウンド社に乗り込むと江崎につめ寄った―。

<第5回> 「幻の路上ライブ」
 浩輔(高橋克典)は自らギターを弾いて未来(中島美嘉)のデモテープを作った。「学校でダビングしてあげようか」。浩輔は由佳(加藤あい)に甘えることにした。「彼女を兄から引き離して下さい」。未来に兄を奪われた悔しさから、由佳はテープを江崎(金子賢)に手渡してしまった。
 浩輔は未来を連れてレコード会社への売り込みを始めた。しかしどこも盗作で音楽業界を追放された浩輔に対しては冷やかだった。「全然ダメじゃねえかよ!」。ひたすら頭を下げ続ける浩輔に未来がかみついた。
 未来が部屋に帰ると、綾(川島なお美)がデモテープを聴いていた。「これでいいなら私だって歌手になれるわ」。綾は未来の才能をみじんも信じていなかった。
 江崎は録音スタジオで苛立っていた。工藤(西岡徳馬)からプロデュースを依頼された新人は歌唱力に不安があった。「吉村浩輔が見つけた新人です」。江崎は工藤に未来のデモテープを渡した。「その新人がどの程度のものか知らないが、業界の人間が吉村を受け入れるとは思えない」。工藤は相手にしない様子だったが、「埋もれさすのは惜しい素材です」と江崎がさらに推すため、テープを受け取り、江崎のご機嫌をとるために未来と契約することを約束した。
 由佳のオリジナル曲がCD制作実習で選ばれ、由佳は喜び勇んで浩輔に報告した。「良かったじゃないか」。浩輔は喜んでくれたが、すぐに未来の話題に移った。「路上ライブを考えているんだ」。やはり兄の頭の中にあるのは未来のことなのだ。「私の曲が選ばれたのに嬉しくないんだ」。由佳はじっと考えこむと口を開いた。「バンドのメンバー探してあげようか」。浩輔は深く考えることなく由佳に頼んだ。
 未来と契約を結ぶため、工藤と佐和子(畑野浩子)は綾のスナックを訪ねた。「お嬢さんにウチの会社から歌手デビューしていただきたいと思いまして」。綾は半信半疑だったが、工藤が契約金の話を切りだすと態度をひょう変させた。「私も娘の才能を一番いい形で生かしてやりたいと思ってたとこなんですよ」。綾は借金を抱えていた。「ではよくお嬢さんと相談して下さい」。綾は満面の笑みで工藤にうなずいた。
 江崎が浩輔のラーメン屋に姿を現わした。「あの歌声は原石だ。問題は誰が磨くかです。あなたがやればせっかくの才能が埋もれるだけだ」「お前、未来を渡せっていうのか!」。江崎は不敵な笑みをもらした。「本当に彼女の才能を生かしてやりたいなら、どうするのが一番いいのか、よく考えて下さい」。怒りに震える浩輔をおいて、江崎は店を出て行った。
 浩輔は由佳が紹介してくれたバンドを路上ライブに起用することにした。浩輔のファンだったというバンドのリーダーは、浩輔と組めることを素直に喜んでくれた。「よろしく」。未来もぶっきらぼうながら自分からメンバーに頭を下げた。練習場所には坂井(石原良純)が自宅のガレージを提供してくれ、坂井も未来の歌声に目を細めていた。
 トラブルは数日後の練習中に起こった。バンドのファンというコギャル風の女の子たちが未来につめ寄り、たちまち乱闘になった。「少しは我慢しろよ」。浩輔が制止し、未来はぶ然としていたが、もう歌手を諦めるとは言わなかった。浩輔は安堵したが、今回のトラブルは由佳が仕組んだものだった―。

<第6回> 「お前の歌が歌いたい!」
未来(中島美嘉)は綾(川島なお美)に連れられてグローバルサウンド社を訪れた。「ふつつかな娘ですが、よろしくお願いします」。綾は愛想笑いを浮かべて工藤(西岡徳馬)と佐和子(畑野浩子)に頭を下げた。「私の歌のどこがいいの?」。「君はすばらしい可能性をもっている。君の名前の通りだよ」。デモテープを聞いていない工藤は返事をはぐらかした。「契約はやめとくわ。あんた怪しいんだよ」。未来は吐き捨てると部屋を飛び出した。「契約金がないとお店やってけないのよ」「それで娘を売るのかよ!」。未来は綾を振りきると、浩輔のラーメン屋に向かった。
 未来は店内に由佳(加藤あい)がいるのを見てためらった。かたや由佳は未来に気づかないふりを装って浩輔(高橋克典)に話しかけた。「あの未来って子、とんでもない不良だったよね。歌のうまい子なら他にいくらでもいるよ」「もう言うな。なんかの間違いだったんだ」。浩輔は自分に言い聞かせるようにつぶやいた。未来はやり場のない怒りと悲しみに震え、その場を立ち去った。
 「ホントはあの子とやっていきたいんじゃないのか」。その夜、浩輔が店で坂井(石原良純)に未来とのいきさつを説明していると、綾が血相を変えて店に入って来た。「未来をどこに隠したのよ!」。未来が家出したらしく、綾は浩輔のせいで未来がおかしくなったのだと決め付けた。「もう関係ない」。そうは言ってはみたが、綾と坂井が帰ってしまうと浩輔は仕事が手につかなくなった。「出てくるわ」。バイトの真司(塚本高史)に任せると、浩輔は店を飛び出した。「てめえも探してんのか」。良二(深水元基)のところにも綾は怒鳴りこんだらしい。夜の街に未来の姿はなかった。
 落胆した浩輔が店に戻ると、ラーメンチェーン本部の山岡(舟田走)が渋い表情で待っていた。「最近よく店を留守にしているね」。浩輔が神妙に聞いていると、タイミング悪く携帯電話が鳴った。良二からだ。「未来はここにいる。お前とは二度と会いたくないってよ」。電話は一方的に切られ、ぼう然としている浩輔に山岡が冷たく言い渡した。「君はクビだ。出て行ってくれ」。帰っていく山岡の背中を浩輔は言葉もなく見送った。
 江崎は佐和子を問いつめて、未来が契約を蹴ったことを聞きだした。工藤に本腰を入れさせるにはデモテープを聞かせるしかない。スタジオに未来の澄みきった歌声が流れた。「どうですか、彼女の歌を初めて聞いた感想は」。工藤の表情が一変した。「これは売れる」。工藤が本気になった。
 浩輔は由佳から呼びだされ、坂井と一人の女性に会った。「何だよ話って」。女性が差し出した名刺には、ゲームソフト会社の代表取締役とあった。同社ではネットでの音楽配信に乗り出すことになり、あるバンドをデビューさせたいとのことだった。「吉村さんにプロデュースをお願いしたいんです」。浩輔の過去にはこだわらないとまで言ってくれた。「迷うことなんかないじゃない」。由佳はじれったかったが、浩輔は「少し考えさせて下さい」と即答を避けた。
 その頃、未来は良二とラブホテルの一室にいた。「あんなヤツのこと忘れて、2人で暮らそうぜ」。未来は無言のままシャワー室に消えた。やがて壁を激しく叩く音が響いてきた。「何やってんだ!」。未来は服のままずぶ濡れになって泣いていた。「行くところがない」「何言ってんだ!俺と一緒に暮らすんだろ!嫌ならどうして来た!?」。怒りが込みあげてきた良二は叫んだ。「とっとと出ていけよ!」。
 浩輔は由佳たちと別れて、夜道を1人で歩いていた。ふと気がつくと、未来と出会った川べりの公園に来ていた。資材置場で物音がした。「何やってんだ、こんなとこで」。ビニールシートをかぶって未来が震えていた。「バカ、風邪ひくぞ」「触るな!」。浩輔は杏子からの話を打ち明けた。「だからお前がグローバルに行けば、お互い丸く収まる。もういっぺん考え直せ」。
 浩輔は未来をアパートの部屋に連れ帰ると、由佳を呼んだ。「どういうことよ」。由佳は未来の姿に動揺した。「俺と2人でここに泊まるわけにいかないだろ。未来と一緒にここに泊まってくれ」「嫌だからね」。由佳は反抗したが、浩輔は2人を残すと部屋を出ていった。由佳と未来の間に気まずい空気が流れた。「なんでグローバルと契約しないの?江崎さんのプロデュース断るなんて」「なんなんだ、そいつ」。未来はまだ江崎と会っていなかった。由佳はじっと考えこんだ。江崎と会わせれば未来はその気になるかもしれない。携帯電話でその旨を伝えると、浩輔も納得してくれた。
 翌日、由佳は未来を連れてグローバルサウンド社に乗りこんだ。「君の歌を聞かせてほしい」。江崎がピアノの前に座った。「これ、聞かせて」。未来はポケットから折りたたんだ紙を取りだした。「私、楽譜読めないから」。江崎は一瞬ためらったが、やがて演奏を始めた。心にしみいるような美しいメロディ。江崎が弾くのを止めた。「ここまで。まだ完成していない」。由佳がつぶやいた。「誰の曲なの?」。楽譜の上には“未来へ 吉村浩輔”の文字。浩輔が未来のために書き下ろしたオリジナル曲だった。そのメロディーを聞きながら、これまでのことを思い出し未来は涙を流していた―。


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