あらすじ
<第10回> <第11回>

<第10回> 「一曲だけのコンサート!!」
 浩輔(高橋克典)は未来(中島美嘉)をライブハウスに連れていった。「大きすぎないか」。2000人は余裕で入るであろうだだっ広い空間を前にして、未来はためらった。浩輔に迷いはなかった。「ここでお前のデビューコンサートをやりたいんだよ」。年内のスケジュールが空いているのはたった一日だけ。「その日を押さえよう」。浩輔は河合(オクイシュージ)に手続きを頼んだ。河合は昔からの浩輔のファンで、コンサートの実務を手伝ってくれることになった。会場使用料は200万円。浩輔と未来があてにしたのは綾(川島なお美)が手にした契約金だった。「嫌よ」。綾はゴネた。「最近物入りでねぇ、かなり使っちゃったのよ」。ところが、未来が棚の上の方のウイスキー瓶の裏から通帳を見つけ出した。「しょうがないわね―。あんた達見てるとうらやましいわ」。綾はため息をついた。
 未来のデビューコンサートの情報はグローバルサウンドにも伝わった。「失敗するに決まってる」。工藤(西岡徳馬)は一笑に付した。江崎(金子賢)の反応も「もう関係ない」の一言きり。
 一方、浩輔と河合はバンドの人選で苦戦していた。リストアップしたメンバー全員から断られた。みんなグローバルサウンドの影におびえているのだ。浩輔はひらめいた。「いま活躍してるヤツらを集める必要なんかない」。実力がありながら、さまざまな事情から音楽業界からドロップアウトした連中にあたってみることにした。
 浩輔と河合の努力のかいあって、バンドのメンバーが決まった。ディスコの黒服がいた。タクシーの運転手がいた。警察から釈放されたばかりの者もいた。全員が浩輔と未来の熱い思いにうたれて、再び楽器を手に取ってくれた。
「あんた達なら大丈夫だよ」。リハーサルは順調に進み、浩輔と未来は確かな手応えを感じていた。「きっといい歌、歌う。浩輔のために」。未来は照れたように顔をそらした。浩輔は戸惑いを隠しきれなかった。「歌は聞いてくれるみんなのために歌うもんだ。お前は夢に向かって歩いていけばいいんだ」。納得はしても、未来が浩輔から聞きたい言葉ではなかった。
 ラーメン店のバイトだった真司(塚本高史)から電話が入った。店に浩輔のことを聞かせてほしいと男がやって来たという。浩輔は会ってみることにした。片岡(峰岸徹)は週刊誌記者だった。「あなたの盗作疑惑を最初に記事したのは私です」。片岡は再起にかける浩輔と未来の姿を読者に伝えたいと言った。「興味本位の記事にはしない」。片岡の静かな口調からは熱いものが伝わってきた。浩輔は未来と共にインタビューに応じた。
 ところが数日後、浩輔と未来を中傷する記事が、週刊誌にでた。未来の非行歴も書かれている。ネタ元は片岡ではなかった。「どうやらグローバルサウンドが怪しいようです」「江崎か」。
 気づいたのは浩輔だけではなかった。佐和子は激しく江崎をなじった。「吉村さん達を邪魔してそんなにうれしいの?」。江崎を心配する佐和子に江崎は言い放った。「僕が落ちぶれたりしたら、乗り換える相手を探さなきゃいけないからな」。佐和子の目には涙が浮かんでいた。部屋の合鍵をつき返すと、佐和子は部屋を出て行った。
 他の雑誌も次々に便乗した記事を載せ始め、記者たちは浩輔のアパートにまで押しかけた。逃げ回っていては余計に面白おかしく書きたてられる。浩輔と未来は取材に応じた。非行歴や浩輔との関係を邪推された未来がキレた。「うるせえんだよ!お前ら、ホントのこと見ようともしないで、偉そうに記事なんか書くな」。カメラマンに殴りかかろうとする未来を浩輔は必死に止めた。
 浩輔が倒れた。記事にまつわる心労とコンサート準備の疲労が重なったのだ。坂井(石原良純)の病院に運びこまれた。「こんな状態になるまで無理しやがって」。坂井は安静を言い渡した。浩輔が意識を取り戻すと、ベッドの傍らに未来がいた。「お礼が言いたいんだ。浩輔のおかげで他人も自分も信じられるようになった」。未来は涙ぐんでいた。「だから、ここで終わったとしても、もう十分だよ」。浩輔は首を横に振った。「お前のためにも、俺のためにも、このコンサートはやりとげる」。浩輔はきっぱり言いきった。
 病室を出た未来に坂井が耳打ちした。さっき河合からの電話で、記事を見たライブハウス側が貸さないと言ってきたという。未来はグローバルサウンドに向かった。江崎はスタジオの中で1人待っていた。「私があんたの歌を歌わなかった仕返しか?」「これは僕と吉村さんの問題だ」。未来は怒りをこらえてつぶやいた。「あんたはあんなにいい曲作るのに」。去って行く未来の後ろ姿を江崎はぼう然とながめていた―。

<第11回> 「未来へ・・・・、感動のラストコンサート」
「このコンサートが終わったら、俺たち、お別れだ。別々の道を行くことになる」「どういうことだよ!?」。今後も一緒に進んでいけるものと信じていた未来(中島美嘉)にとって、浩輔(高橋克典)の告白は予想もしていなかったものだ。「頼みがあるんだ」。浩輔は“別の道”を実現させるための準備を坂井(石原良純)に依頼した。
 未来が浩輔に惹かれていることも、それゆえにショックを受けていることも母親の綾(川島なお美)の目には明らかだった。「話してごらん」「歌ったって、しょうがないよ」。思いつめた表情の未来を見て、いたたまれない綾は浩輔に懇願した。「未来に別れるつもりなんかないって言って。嘘でもいいの。あの子に気持ちよく歌わせてやってよ」。しかし浩輔は首を横にふった。「未来に嘘なんかつけません」。
 浩輔は未来に“別の道”を打ち明けた。「横浜でライブハウスを始めたいんだ」。ビジネスとしての音楽ではなく、純粋に音楽を楽しめる生活を手に入れたい。すでに坂井に頼んで手付けをうった。「お前には歌手としての成功が待っている。わかってくれないか」「もういいよ。お互い勝手にすりゃいいんだ」。未来は背を向けると、浩輔の前から立ち去った。
 未来が屋台で飲めないお酒を飲もうとしていたところに、坂井が顔を見せた。「君のことを一番考えてるのは浩輔なんだ。だからあいつなりに考えぬいた末のことだと思うよ」。坂井と別れた未来はいつしか浩輔と初めて会った川べりに立っていた。橋から下りてくる人影に気づいて未来はとっさに物陰に身を隠した。浩輔と江崎(金子賢)だった。「明日来てほしい。未来の歌を聴いてくれ」。浩輔からチケットを手渡された江崎は聞き返した。「どうして彼女の歌にあんなにも惹かれるんでしょう」。浩輔は確信をもって答えた。「傷ついた心を癒してくれる優しさがあふれている。だからあいつの歌を1人でもたくさんの人に聴かせたい」。そう言って、2人は別々の方向に去った。未来だけがその場で動けなかった。
 コンサート当日がきた。江崎は自らプロデュースを手がけたグローバルサウンドの一押し新人、佐伯優子(木村真依)とテレビの生番組に出演していた。イタンビューに当たりさわりのない受け答えをしていた江崎が突然、未来のコンサートを告知しはじめた。「僕も行きます。みなさんも聴きに行ってください」。グローバル本社でテレビを見ていた工藤(西岡徳馬)は絶句した。「な、何言ってるんだ!」。すぐさま江崎に同行している佐和子(畑野浩子)に電話を入れた。「一体どういうことなんだ!」「いいんです、これで」。佐和子と江崎は微笑みあった。
 コンサート会場にはテレビを見た若者たちが続々とつめかけた。「けど、未来さんがまだ」。河合(オクイシュージ)は心配そうにつぶやいたが、バンドとの最終打ち合わせをしていた浩輔に焦りの表情はなかった。「あいつはきっと来るよ」。その言葉どおりになった。控室のドアが開いて未来が入ってきた。「別れるってことは、それぞれが自分の夢に向かって進んでくってことなんだな」。未来は自分に言い聞かせるように語りはじめた。「ここまでこれたのは浩輔のおかげだ。でも、きょうは来てくれたみんなと自分の未来のために歌う。浩輔のためなんかじゃないから」。未来は涙を浮かべていた。そして大勢の観客で埋め尽くされた会場のステージに向かった。大きな拍手と歓声はやがて収まり、会場は未来の歌う「STARS」に惹きつけられた―。


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