<第1回> <第2回> <第3回>


<第1回>
 羽村深美(深津絵里)、26歳。大手物流会社ハートフル販売のオペレーション室で、ひっきりなしにかかってくる問い合わせや苦情の電話の応対に追われる毎日。深美はふっと思うのだ。「私は子供のころ、何になりたかったんだろう」。そして「もしも私が死んだら、誰が困るんだろう」と。
 いつもの昼食時間。深美は、会議室で同僚とお弁当をひろげながら、皆が会社帰りに習い事へ通っていることを聞く。キャリアアップ、趣味など目的はさまざま。深美は後輩からもらった習いごと雑誌を何気なくめくってみる。そのとき、お局と呼ばれる先輩の熊沢晴子(渡辺典子)が深美に声をかけてきた。課長から電話の応対の仕方を注意された深美を慰めるためだ。晴子は「私もあなたぐらいの時は生きててもしょうがないと思った。でも死のうと思うほど嫌なこともないのよね、情けないことに」と深美に話す。「私、結婚しようと思うの。ちょっと年下だけど…」と嬉しそうに告げる晴子の笑顔が今の深美には少し眩しい。
 深美の義兄・佐伯啓介(椎名桔平)は、大手建設会社から関連の子会社に出向になったばかり。一流大学の工学部を卒業して大手建設会社でビッグプロジェクトに携わってきたエリートの啓介にとって、屈辱的な日々が続いていた。家には守るべき妻(奥貫薫)がいる。上司から「いつか本社に戻れると思って、いい加減な仕事をされちゃ困るんだよな」とイヤミをいわれても、啓介はグッとこらえるしかない。
 深美は会社からの帰り道、気まぐれにカルチャースクールを覗いてみる。そこで深美は、ゴスペル教室に通う太田千津(水野美紀)と、アメリカの公認会計士の資格を取ろうとしている浅井次子(中山忍)に出会う。千津には同棲相手・米村美紀夫(加藤晴彦)がいるが、彼は最近働きもせず怠堕な毎日を送っている。深美は、日頃のストレスを発散するために歌っている千津と、自分の夢のために一生懸命頑張っている次子から、今までにない刺激を受けた。
 翌朝、深美が出社すると何か様子がおかしい。晴子が交際相手の西田真也(鳥羽潤)を刺して、警察に逮捕されたというのだ。別れ話を持ちかけた真也を晴子が思いあまって刺してしまったらしい。驚いて警察に向かった深美は、事情聴取を終えて出てきた真也と出会う。「人の気持ちをもてあそんで、ひどすぎるじゃない」と語気荒く真也に詰め寄る深美。しかし「結婚しないってことになったら、それで人生終わりなの。それってずいぶんつまんねぇ人生だよな」という真也の言葉に何も言い返せない。
 晴子、千津、次子、そして真也の言葉。いろんな事が深美の頭の中を跳ね回る。「このままじゃいけない。何とかしたい」「生きがい…みたいなものが欲しい」。深美の中で何かが動き始めた…。

<第2回>
 年下の交際相手を刺した、羽村深美(深津絵里)の先輩・熊沢晴子(渡辺典子)は、不起訴処分なった。深美は、年長者ということで熊沢の仕事を引き継ぐことになった。熊沢のことを考えると色々とやるせない気持ちになった。
 会社の帰り道、深美はこの前のぞいたカルチャースクールにもう一度足を運び、千津といっしょにゴスペル教室に参加した。元気を装う太田千津だが、仕事では理不尽な仕打ち受けたり、同棲相手の米村美紀夫(加藤晴彦)が夢見がちな事ばかり言うのでケンカをしたりしている。
 佐伯啓介(椎名桔平)は上司の片山(平泉 成)にイビられっぱなし。「おまえはこの仕事にむいてないのだから、やめろ」とまで言われる。じっとこらえるのだが、妻の直美(奥貫薫)はその苦労は知らない。ある日、啓介は片山に命じられて営業の研修セミナーに参加した。そこに紅一点、浅井次子(中山忍)がいた。次子は男性と同じ仕事がしたいという希望がかない営業に異動になったのだ。研修の内容はプライドや自尊心をこなごなにするようなひどいもので、今までの自分をゼロにすることが目的だった。厳しい講師になじられ、バカにされっぱなしの研修生たち。終わると、啓介も次子も心の中はズタズタだった。
 昼休みに深美は熊沢晴子に呼び出され、熊沢と真也の別れ話しにつきあわされることになった。「かっこ悪いところみせちゃった。私みたいになりたくないと思っているでしょう」と言われたが、晴子の気持ちを考えるといたたまれなくなる深美だった。
 深美は仕事上のトラブルに巻き込まれて、「もう二度とおまえのところから物を買わない」とつきとばされた。その帰り道に土手で啓介が座っているのを見つけた。近寄ってみると、マンション販売のちらしを紙飛行機にしてとばしながら、一人で何かを呟いていた。「自分は最低の人間だ。今の職場の人間や出向させられたことを恨んでいる」「妻を愛していると思っていたのだが、今は邪魔なだけだ」とブツブツと言う啓介。これは「自分は最低な人間だと思う理由を語る」という営業研修の課題なのだが、なにも知らない深美の背筋に冷たいものが走るのだった…。

<第3回>
 ある朝、羽村深美(深津絵里)が出社すると見覚えのない若い女性にいきなり頬を殴られた。なんで?ととまどっていると、予備校生の西田真也(鳥羽潤)から昼食時に呼び出され、今朝の出来事の事情を説明された。「好きな人がいる」と、とりあえずいったら怒って深美の所へ押し掛けたというのだ。謝る真也だが、深美は釈然としない。 
 佐伯啓介(椎名桔平)は仕事の帰りに上司の片山(平泉成)と入った居酒屋で大学時代の友人にばったり会う。片山は「営業してこいと」と啓介に命じる、が、啓介は断る。「なんでもやるといったのはウソか」と片山は皮肉をいう。こみ上げる憤りをグッと堪える啓介だった。 
 深美は土手の上で一人ぶつぶつ言っていた啓介のことが気になり、姉・佐伯直美(奥貫薫)を訪ねた。主婦然としている直美に啓介の様子をそれとなく聞ききながら「異動の後って色々あるんだから、お義兄さんの好きなものでもつくってあげなよ」とさとす。
 啓介は意を決して、日曜日に居酒屋で会った友人宅を訪ね、マンションのセールスをする。案の定、友人は「仲間なんだからそういうのよそうよ」と返答。友人の言うことが分かるだけにつらい啓介。帰宅すると直美から「あなた疲れているんじゃないの。無理しないでね」といういたわりの言葉を何度もかけられて「無理しないでって何なんだ!嫌なら仕事やめろっていうことか」と、直美につい大きな声を出してしまう。
 太田千津(水野美紀)は同棲相手の米村美紀夫(加藤晴彦)が新しい音楽仲間に出会ったと、久しぶりにスタジオに練習に出かけるのを晴れ晴れしい気持ちで見送った。しかしスタジオに差し入れに行ったときに「音楽のレベルが低い」と美紀夫が追い出されていたことを知る。がっかりした千津は、気晴らしに深美をショッピングに呼び出した。二人で歩いていると浅井次子(中山忍)を見つける。次子は道行く人に声をかけてアンケートをお願いしているのだがなかなか応じてもらえず苦労している様子だった。次子は上司から新商品のアンケートをとってくるよう命じられていたのだ。見るに見かねて深美と千津が大変そうだから手伝おうかというと次子は「あなた達に関係ないし、私の仕事だからほっといて下さい」と相変わらずそっけない態度をとる。その態度にきれた深美の「手伝うっていってるんだから素直に有り難うっていいなさい」という言葉におされ、次子は二人にアンケートを手伝ってもらい、無事200人分のアンケートを全て集める。3人はその足でラーメン屋にいき、色々と話す。深美が夢を持つ次子がうらやましいとか、今の自分ははっきりとした夢とか目標がないとか話していると、突然近くにいた男が立ち上がり「さっきから聞いりゃ言いたいことばかり言いやがって、どうせろくに働かないOLなんだから、生きがいとか夢とか、このままじゃつまらないとかぬかすんじゃない」と怒鳴りだした。次子がたまらず、「怒鳴れば女は黙ると思ったら大間違いです」ビールをかけたことから大騒ぎに……。


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