<第10回> <第11回> <第12回>


<第10回>
 深美(深津絵里)が目覚めると、千津(水野美紀)は朝食の準備をするみどり(真屋順子)をかいがいしく手伝っている。美紀夫(加藤晴彦)も父亮介(山本圭)と楽しそうに話している。深美が会社に行っているあいだ、みどりに誘われて子供服を見に行ったりしている千津。
 そのころ、啓介(椎名桔平)は、人間開発室の独房のような部屋にいた。なにかをあきらめたような気持ちだった。次子(中山忍)も啓介のことを考え、仕事が手に付かない様子だった。
 羽村家の夕食時。千津と美紀夫もまじえて全員で食卓を囲んでいると千津の父昭二(渡辺哲)が千津を連れ戻しに尋ねて来たのだった。千津と美紀夫は二階に急いで隠れ、亮介とみどりが昭二の相手をした。三重に連れて帰るとまだ怒っている昭二に対して「こういうことはあくまでも本人の気持ちを最優先させてやるべきではないでしょうか」という亮介。その時、二階から聞こえた大きな物音で千津がいることを察知した昭二は、すかさず二階に駆け上がったが、二人の姿はなかった。「娘に逃げられるなんて」とショックを受けたよう。そんな昭二に、深美は「私は千津が大好きです。千津はどうやって生きていけばいいか一生懸命考えています」ときっぱり話すのだった。
 羽村家から逃げ出した千津と美紀夫は、次子の部屋に来ていた。千津次子から深美に電話して貰い様子をさぐる。深美は「お父さんからの伝言を伝えるわよ。近いうちに二人で来い。お前は丈夫そうだが風邪をひきやすい気をつけろ」と千津に伝え、そして美紀夫には「娘は私たち夫婦の宝物なんだ」と昭二がいっていたことを伝える。電話の会話を聞いていた次子も「子供のこと心配じゃない親なんて、絶対いないよ」というのだった。しばらくして千津の部屋に二人でもどった美紀夫は感慨深そうに、深美と次子はいい友達だなといいつつ、俺のガキ、そこにいるんだなと千津のお腹をさすのだった。
 啓介は、妻の直美(奥貫薫)を食事をしようと呼びだした。ウキウキとしながらかけつけた直美に啓介は自分が配属された人間開発室の実態を語った。「努力する人間はしない人間より幸せになって当たり前だと思ってた。でもそんなものに価値がないことがわかった。なにもしないということがこんなにつらいとは思わなかった。」「心配させたくないという気持ちもあったけれど、俺の一番いい時を見て、結婚相手として俺を選んだ直美にみられなくなったというプライドのため」という啓介だった。何も言えない直美にたいして、逃げ道をつくつくったことをいう。啓介は率直に夫としての裏切りを直美に話し「ごめん」と謝ったが、直美もどうしていいかわからずに二人は黙るばかりだった・・・。
 そのころ、深美と千津と次子は3人で集まっていた。千津は美紀夫に籍を入れようといわれていることなどの報告でもりあがっているところに次子の携帯電話が鳴った。次子は席をはずしていたので、ひょいと次子の携帯電話に表示された名前をみると「佐伯啓介」とある。次子の相手が啓介だということを知った深美は…。

<第11回>
 深美(深津絵里)、千津(水野美紀)、次子(中山忍)の三人が集まっていると次子の携帯電話が鳴る。そのとき表示された「佐伯啓介」の文字を見て、深美は強いショックを受ける。好きな人がいると話していた次子の表情や、啓介のこと、そして直美のことなどが深美の頭の中を駆けめぐり、深美は次子とはまともに話しができない。
 次子の携帯電話に残された啓介のメッセージは、「僕はあなたを利用していました。話すことで心のバランスをとっていた。僕はあなたではなく電話に話していただけかも知れない。もう浅井さんには電話をすることがない」という別れ話だった。啓介はその日、会社を退職していたのだ。
 次子は深美にそのことを話そうと電話をしたがつながらない。深美には次子からの電話を取る勇気がなかったからだ。次の日、次子は千津に会いに行く。千津から召集をかけられた深美も加わる。啓介について、「電話で一方的に別れ話なんて最低」と息巻く千津に、深美は何も言えない。次子は「二人がいてくれて良かった、一人だったら辛かった」と言うのだった。でも、深美はやはり何も言えない。
 啓介は自分がかつて開発にかかわったニュータウンの中にある公園のベンチに座っていた。そしてマンション群をみあげていた。啓介の様子は今までとは違い、無精ひげをはやし服装も乱れていた…。 
 深美は意を決し、千津と次子に集まろうと連絡をする。そして二人に深美は、「大人になってこんな友達ができるとは思っていなかった」「こんな風にずっと友達でいてさ、こうやって会えたら楽しいだろうなぁって、そう思ったの」と言った後、正直に「佐伯啓介さんは私のお兄さんなんだ。お姉ちゃんの旦那さんなの」と打ち明けた。そして「次がふられたって聞いてほっとしていた。でもそんな自分が情けなくて嫌だった」。それを聞く次子の目にが涙が…。深美が「でもね…やっぱり、私、次の友達でいたいの」「ごめんね」と深美も涙ぐんできた。二人のやりとりを聞いていた千津が突然号泣する。深美と次子は呆気にとられるが、千津の姿に同時に笑う二人だった。
 深美は直美から、啓介が家に帰ってきていないことを聞かされる。「ずるいよ、啓介、自分だけ逃げちゃって」。直美は探すあてもない。
 次子が仕事の途中、ニュータウンの公園にいる啓介を見かける。その知らせを受けた深美は直美とともに啓介がいる公園に向かう。二人が着くとと啓介は隣に座ったホームレスに「あれ…自分が手がけた」と話していた。それを見た直美は…。


<第12回>
 深美(深津絵里)はいつもと同じ朝を迎えた。同僚たちに挨拶しながら次子(中山忍)名古屋支社転勤のことを考えていた。「こういう時だけ、女だからって都合のいい使い方をするか?」と部長から言われたことも。
千津(水野美紀)はアパートの部屋で美紀夫(加藤晴彦)が苦しそうにしつつもネクタイをしめる様子をみつめながら、たまたま通りがかった美紀夫がストリートミュージシャンに「…頑張ってな」と声をかけていたことを思い出していた。
 仕事中、深美あてに中野(笠兼三)から食事の誘いの電話があった。レストランで中野は神戸に転勤することになったことを報告し、そして自分に対する気持ちを聞かせて欲しいと言われる。前に結婚を前提につきあって欲しいといったことにたいしての返事をということなのだが、深美はなにも答えられなかった。深美の気持ちを察した中野は「覚悟してましたし、今日はちゃんと断られておこうと思ってたんで」いうのだった。
 深美、千津、次子の3人で集まったときそれぞれの近況を報告する。深美は中野とのことふったような、ふられようなヘンな気分だという。次子は転勤のことを。そして千津は「美紀夫のことを、私追いつめちゃってるのかなぁって思って」という。
 啓介(椎名桔平)は、亮介(山本圭)に釣りに誘われた。
二人で釣り糸を垂らしながら、亮介から「啓介君は…いくつだったけ?」「…釣り……はじめて?」「…まだ……間に合うさ」といわれた啓介は亮介がいわんとする意味がわかって自然に涙が出てくるのだった。羽村家にもどった啓介は深美に色々と迷惑をかけたことをわびつつ「会社辞めて、家を出てさ…もう何もしたくないっておもったんだ、あん時は」「でもさ…今…仕事がしたい…なんだがわからないけど…仕事がしたい…はたらきたいんだ…ものすごくさ…働きたい」というのだった。
 美紀夫あてに千津の父親(渡辺哲)から手紙が来ていた。一方、次子は上司から転勤の意志決定を迫られていた。「女性だから、辞退したいって言えばとうしてやるぞ」と言われ、次子は気持ちを固めるのだった。
 ある日、深美、千津、次子は集まることに。そこで、千津、次子はこれからどうするつもりかをそれぞれ報告する。
 深美は様々なことを思い出しながら「多分、人が生きていくのって…面白くないし格好悪いことだらけなんだ。ドラマチックな出来事なんてそんなあるわけじゃない…小さな小さな日常がずっとずっと延々とつながっているだけなんだ」と考えていた。そしてこうも思っていた。「でも今、私は思う…この夏、千津や次と出会ってよかった…同じように悩んでいる人がいる…同じように答えを出せずにいる人がいる、私だけじゃないんだ…そう思えただけで…よかったと思う」


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