あらすじ
<第7回> <第8回> <第9回>

<第7回> 「怖い女」
 「お前の友達と何度も寝た」。詠一郎(本木雅弘)の告白に、佐倉家に集まった操(石田ひかり)、耕作(原田泰造)、晶午(北村一輝)らは、あい(天海祐希)の反応を探るようにシーンとなった。するとあいは「そうなると思っていた。仕向けたのは自分かもしれない」と言い出し、一同驚きを隠せない。さらに、あいは「ウソをついてくれたら許せたかもしれない。正直に話したということは、浮気でなく、ホントの愛」と続け、2人の破局は決定的になった。
 皆が帰り、詠一郎とあいの2人だけなると、しばらく沈黙が続いた。その沈黙を破り、あいは「これ以上暮らせない。この家は私にちょうだい。今夜は会社に泊まるから、一晩で荷物をまとめて」と出ていき、詠一郎は荷造りを始めた。あいが外に出ると、操がいた。操を平手打ちにし、あいが、何かを振り切るように歩いて行くと、耕作に呼び止められた。ひそかにあいに思いを寄せ、心配で待っていた耕作にさえ「私は大丈夫だから」と肩肘を張るあいであった。
 翌日、あいは晶午と会社近くのカフェで会った。思いとどまるよう話す晶午だが、あいは「償いの道具にカレを利用してしまった」と自分の気持ちを正直に話し、早々に取り寄せた離婚届を出し、保証人になってくれるよう頼んだ。

荷物を操の家に運び込んだ詠一郎は、作家の溝口邸を訪ねた。数日の経過を話す詠一郎に溝口(田村亮)は「愛人と下手に遊んで家庭を壊したか」とぽつり。「ロマンスを持つことの一番の難しさは、ロマンスが去った途端、ロマンチックじゃなくなること」と話す。「確かに・・・」と詠一郎は思うのだった。
 あいは操の店を訪ねた。おもむろに離婚届を出し、保証人になってくれるよう頼むあいに「愛人の役目?」と切り返す操。「なるべく早く出したいから。カレに伝えて」と言って、あいは帰っていった。
 その夜、詠一郎が操の家に帰ると、運び込んだ荷物は片づけられていた。びっくりする詠一郎に操は、あいから預かった離婚届を渡した。空欄に、さらさらと書き込んだ詠一郎は、明日、あいとともに届けを出すことを約束するのだった。
 そのころ、耕作は「ソル」で、志摩子(木村多江)や由香子(伊東美咲)が心配そうに見守る中、やや飲みすぎの様子。あいのことでモンモンとする耕作は相当に酔い、由香子とともに店を出た。その夜、「私が先生の中にいる女性を追い出してあげる」と、由香子は耕作に抱かれるのだった。
 翌日、区役所の前で、詠一郎はイライラしながらあいを待っていた。「そう言えば、3年前、結婚届を出すときも待たされた」と考えていると、あいが「道が混んで・・・」と同じ言い訳をしながら現れた。すると、思い出のうなぎの臭い。だんだんたのしくなる2人の姿。 その一部始終を、操が、物陰から見ていた。そして・・・。

<第8回> 「逆転不倫」
 あいと離婚届を出した詠一郎(本木雅弘)は、文壇バー『ソル』で、耕作(原田泰造)に「うまくいかなかったら、また戻ろうなんて考えてませんよね」と、釘を刺された。
 操(石田ひかり)の家に帰ると、操が玄関先にいた。愛人は愛人でなくなるとかえって不安になるらしい。そんなことを考えながら詠一郎は家に入った。
 一方、あいは、詠一郎が出ていった家の大改装を始めた。「女の一人暮らしにふさわしい家に作り替えようと思って」と、チェーンソーで壁を切り壊すあいに、心配で訪ねていった耕作はびっくりしながらも手を貸すのだった。

 一年がたった。詠一郎は、以来、あいが住む人形町には足を踏み入れていなかった。真ん中に横たわる隅田川を越えてはいけない国境と思い生きてきたのだ。
 ある朝、いつものように操に見送られ、家を出た詠一郎は、もう何を目にしても動じないと自分に言い聞かせ、あいの家に行ってみることにした。玄関先はウッデイに改装され、中がどうなっているのか、関心を持った詠一郎だが、きびすを返し地下鉄の駅に向かうと公園から赤ん坊を抱いたハコ(金子さやか)に「義兄さん」と呼び止められた。明洋(谷原章介)の子供が誕生、二階に子供部屋をあいが作ってくれたという。「四人家族か」と詠一郎が聞くと、ハコは「ときどき五人。お姉さんのボーイフレンドも一緒」と、ドキッとしたことを言い出す。ハコに促され、あいの家にやってくると、晶午(北村一輝)が「いらっしゃい」と出迎えた。詠一郎を見て、「なんか虚勢された雄ネコみたい」と評した晶午に、詠一郎も「その通り」と思うのだった。晶午が二階に誘った。天井に夏の空が描かれていた。「あいさんは、寝ころんで空を見ていることがある」と聞いた詠一郎が、同じ格好をすると、新婚時代に、あいと代々木公園の芝生に寝ころんだ情景が頭に浮かび、夏草の香りまで蘇ってきた。自分の中のあいの存在感の大きさを詠一郎は、あらためて感じるのだった。
 その日、詠一郎は街の大手書店で耕作にばったり出会った。バツの悪そうな耕作を『ソル』に誘い、詠一郎は「人生切り売りした恋愛小説はどうなっている?」と詰め寄る。ちょくちょくあいとは会っていて、彼女に対する思いが募ってきている耕作は「先が見えなくて・・」と答えるしかなかった。一方、ママの志摩子(木村多江)や、耕作と半ば同棲し始めた由香子(伊東美咲)は、詠一郎のパワーのなさを感じて、まるで別人のようだと思うのだった。
 詠一郎の中のあいの存在感は、操も薄々感じているよう。ある時、操は詠一郎に「昔のように恋がしたい。でも、年上や同じ歳はやめて」と言われてしまう。
 耕作が購入した中古マンションの改装をあいがしていると知った詠一郎は、そっと訪ねてみる気になった。玄関に、あいの靴。「やっぱり自ら現場に出て・・・。変わらないな」と思っているとあいが奥の部屋から振り向いた。突然で言葉が浮かばない詠一郎とあい。そして・・・。

<第9回> 「追憶・・・会いたい・・・愛の告白」
 あい(天海祐希)とキスしてしまった詠一郎(本木雅弘)が家に帰ると、操(石田ひかり)はこたつに入り、うとうとしながら待っていた。詠一郎の様子に、「何かおかしい」・・操はピンときた。
「ぜひ前園先生に、恋愛小説を書かせましょう」。企画会議での詠一郎の演説も、あいとの口づけが何らかのパワーを与えたのか、いつも以上に力が入る。
 そのころ、前園耕作(原田泰造)はあいの会社を訪ね、一方、操は、あいの家を訪ねていた。
 あいは、風邪で会社に出ていなかった。応対した晶午(北村一輝)に、耕作はあいへの思いをぶつけた。「愛している」と堂々と宣言した耕作に、あいが未だに詠一郎に思いを寄せていることなど、あいの心情がわかっている晶午は「三十代の夫婦は五十年も残りの人生を寄り添わなければいけない。一年、ブランクがあったって・・・」となだめるが、「じゃあ、あの離婚届けはナニ?」と、耕作は理解できない。
 操はあいのためにリンゴを擦ってやった。高校時代もあいが風邪で学校を休むと、帰りにあいの家により、操はそうしてきた。「あのころと同じ」と言うあいに「詠一郎に会ってない?」と、操は刺すような一言。ドキッとしながらもキスのことはおくびにも出さず、あいは「ぜんぜん」と答えるが、操は本心からは信じてはいない様子。
 イチョウの落ち葉が風に舞うカフェテラスで、耕作は、由香子(伊東美咲)を待ちながら原稿を書いていた。由香子がやってきた。由香子は耕作が好きで結婚を望んでいた。「今度両親に会って」と迫る由香子に「親を連れてきて強行突破するような真似はよせ」とたしなめる耕作。すると由香子は「私は、前園耕作の女です」と突然叫び出し、耕作は店から逃げ出すしかなかった。
 あいが手がけた耕作のマンションの改装が終わった。さっそく、詠一郎は転居祝いの観葉植物を持って、マンションへ。満足そうに書斎机に向かう耕作に、詠一郎は、昔のパワーを爆発させ、突然土下座。「春までに恋愛小説をうちで出版させてくれ。先生が愛す
る人のために、泣けて泣けて仕方ない恋愛小説を作ってみよう!」と迫り、その勢いに耕作も書くと約束するのだった。
 約束を取り付けた詠一郎は上機嫌。帰りに操の店に寄り、操を誘って自宅近くのスタンドバーに出かけるのだった。二人がバーで盛り上がっているころ、あいが、耕作のマンションを訪ねていた。あいも耕作の気持ちは感じていた。「あいさんのために、僕、恋愛小説を書くんです」、耕作の溢れ出す感情をあえて聞き流すあい。そんな二人のやり取りを、引越し祝いをもってやってきた由香子が聞いてしまった。あいは、詠
一郎が置いていった観葉植物に目が止まった。「一年前のようにやたらと元気でした。それで恋愛小説を書くことに」と、あいをうかがうように耕作は話し始め、そして「愛さねばならない人がいるのに、別の人を愛してしまう。佐倉さんも、僕も同じ。だから、恋愛小説が書ける気になってきたんです」と、耕作は続けた。由香子はたまらなくなり、その場をそっと離れていくのだった。
 翌日、あいの元に詠一郎から電話があった。世話になっている溝口(田村亮)から、油絵のアトリエを頼まれ、できないかと聞いてきたのだった。電話をもらいあいの頭をよぎったのは、昨夜詠一郎と操が半ば酒によい楽しそうに歩く姿だった。現場立ち会いの仕事をキャンセル。あいは、詠一郎が図面を持って家にくるのを待ち受けるのだった・・。


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