あらすじ
<第7回> <第8回> <第9回>

<第7回> 「愛は秘密や嘘より速く走れない」
 疲れ切り翔太(泉澤祐希)を背負って帰ってきた洋介(真田広之)は、ひかる(米倉涼子)から「土日は一緒にいさせて」と話があったことなど、遊園地での出来事を知華子(鈴木京香)に話す。だんだん洋介の気持ちが沈んでいくのを感じた知華子は「洋ちゃん、ラーメン食べに行こっ」と洋介を誘った。
 「腹へってない」と言う洋介だが、知華子に無理矢理連れ出され外へ。ラーメン屋に来てみると、お盆休み。ビールでも飲むかと自販機に洋介が向かうと、午後十一時を一分過ぎていて、ビールは買えない。「よくよくツイてない」と洋介がぼやくと雨が降り出した。 そんな洋介にたまらなくなり知華子は「走ろう」と雨の降る中、洋介を引っぱり出す。雨に濡れ、子供のようにはしゃぐ知華子と洋介、洋介にやっと笑顔が戻った。
 知華子は翌日、洋介がホームヘルパーの資格を取り始めたことから、すでにその資格を取っている部下の久木田(MAKOTO)と食事をした。話をするうち、久木田は知華子に「結婚したい」と言い出し、こんな若造にはついていけないと思う。知華子がマンションに戻ると、翔太が楽しそうに「ママに会える」と洋介と持っていくものの準備をしていた。そんな二人を眺めながら、軽く結婚を口にした久木田を思いだし、知華子は「結婚ってなんだろう」と洋介に聞く。「相手次第」と答える洋介は「俺は後悔していない」と続け、知華子はホッとするのだった。
 数日後、洋介は知華子の紹介で久木田に会った。ヘルパーの話を聞くつもりだったが、話は知華子のことに。「社内で噂になり、仕事がやりにくくなったら結婚すればいい」。やはり軽々しく結婚を口にした久木田に「結婚はそんなものじゃない」と、洋介は、つい怒鳴ってしまうのだった。
 翔太がひかるの所へ出かけていった。残された知華子と洋介。ワインを飲み始めた二人だが、「夫婦ってこんな時セックスするのかな」の知華子の何気ない一言から、二人の間に妙なムードが漂いだした。
 その頃、翔太はひかると、楽しい時間を過ごしていた。「ママと一緒に暮らそう」。頃合いを見て話し始めるひかるだが、翔太は「パパも一緒?」と反応。「やはり父親は必要か」と、ひかるは考えさせられるのだった。
 それから数日後、知華子は怪獣のオモチャを買い、ルンルンで仕事に励んでいた。翔太のいない数日の寂しさを感じ、この日が、翔太の誕生日だったため、驚かせてやろうと買ったのだった。ところが、知華子が、マンションに帰ると、翔太も洋介もいなかった。そのころ、二人は、「母親が子供の誕生日を忘れるはずがない」というひかるに呼ばれ、翔太の誕生祝いをしていた。
 久々に家族三人、翔太を囲み楽しい時間が過ぎていった。疲れて寝てしまった翔太の側で、洋介は、後片付けを率先して始めた。手伝うひかる。洋介の姿から、ひかるは「こうやって洋介が後片付けを手伝ってくれたのは、翔太がお腹にいた頃かな〜」など、幸せを感じていた頃を思いだす。
 翔太をひかるの元に置いて返った洋介は、翌日、知華子の部屋を掃除して、プレゼントを見つけた。「ごめん」と思いつつ、根津(宇崎竜童)の元へアルバイトに行くと、夕方ひかるからPHSが鳴った。「これから翔太を連れてあなたのアパートに行く」。その言葉に、洋介は青ざめ、知華子のマンションに急ぐのだった・・。

<第8回> 「交差する愛妻二人一つ屋根の下」
 翔太(泉澤祐希)が「ここ」といった部屋から顔を出した知華子(鈴木京香)を見て、ひかる(米倉涼子)は逆上した。部屋に入ると、翔太のたたみかけの洗濯物があり、キッチンには三人の食器。「今、説明するから・・・」という洋介(真田広之)の話など耳に入らないひかるは、翔太の手を引き知華子の部屋から飛び出していく。知華子に促され、「待てよ」と二人を追う洋介の前で、ひかるは、階段から転落、右足を骨折してしまった。
 全治三週間。知華子の提案で、ひかるは不承不承だったが、四人の奇妙な同居が始まった。「具合どう」「食べたいものあるか」と、洋介が声をかけても、ひかるは視線を合わそうともしない。そんな数日が過ぎ、頑なひかるだったが、翔太が元気に学校から帰ってくると、一転して母親になり、翔太の「トランプをしよう」という声に、洋介と三人トランプで遊ぶ。「勝った!」。喜ぶ翔太の顔に、四人暮らしを始め、初めてひかるに笑顔が戻った。そして夕食。「これ全部洋介が作ったの?」と、ひかるはびっくりし、この半年近くの洋介の変化に気づき、少しずつ心を開いていくのだった。
 「行ってきます」。元気に翔太が出ていった後、洋介も介護講座に出かけていった。二人残った知華子とひかる。ひかるには、洋介と知華子が本当の夫婦のように写っていた。「洋介のこと好き?」と聞くひかるに、ドキッ!としながらも知華子はき然と「好きよ」と言い「別れたからこそ、よくわかる。洋ちゃんの中にはあなたしかいない。あなたのために頑張っている。あなたの中にも、結婚は否定しても洋ちゃんがいるはず」と続けた。
 知華子の話は重く、ひかるは自分の決断が正しかったのか考えるのだった。
 洋介がマンションに帰ると部屋の中からタンゴの曲が聞こえていた。洋介は、介護の練習だからと、動けないひかるの洗髪をしてやる。「日常生活が困難になった人が介護を受けることは恥ずかしい事じゃない」。洋介は介護講座で学んだことを話すうち、自然と、ひかると暮らしていた時代に話が飛んだ。「無理して自分を鼓舞していた」と話す洋介に、ひかるは「サラリーマンだったんだから、洋介は、男らしくしていた」と答え、「どこから私たち、スレ違ったんだろう」とポツリ。この半年確かに変わった洋介をひかるは感じるのだった。
 その夜、知華子は酔っぱらい、久木田(MAKOTO)に送られて帰ってきた。部屋から、出てきた洋介、ひかるに久木田はびっくり。「若いって良いな。こっちまで二十代に戻れる」と楽しそうに知華子は話すが、それは、同居し始め、どんどん洋介の心が、ひかるに戻っていくことを感じての寂しさからだった。
 ある日、洋介が出先から帰ると翔太が「ママがいない」と騒いでいた。あわてて近所を探すと、ひかるは外で無理してダンスのけいこをしていた。「しっかり治ってからにしろよ」と怒鳴る洋介にひかるは「そんなに優しくしないで。自分で踏み出した人生は変えられない」と涙を流した。「こんなにダンスをしたいのか」。あらためて洋介はひかるの気持ちを知り、ひかるのためにも、翔太のためにも「離婚」の言葉が頭をよぎる。
 愛している人に好きなことをさせるため、自分の気持ちを犠牲にする。そんな風に洋介が考え始めたとき、知華子は「変わったと思ったけど肝心なことは変わっていない。愛しているなら、掴んでなきゃダメ」と洋介に言い放つ。「知華子・・・」。十年前に別れた知華子。今初めて、その気持ちが分かったようで、洋介は知り愕然とするのだった。

<第9回> 「運命を弄ぶ一夜の過ち・・・」
 不動産屋を回り、洋介(真田広之)が、ひかる(米倉涼子)と翔太(泉澤祐希)のため、二人が暮らすアパートを探しているとき、知華子(鈴木京香)は、社で久木田(MAKOTO)から、新しい企画の提案を受けていた。なんとか知華子に認めてもらい、気に入ってもらいたいと、久木田は頑張っていた。
 知華子がマンションに帰ると、翔太はすでに寝ており、洋介は洗濯物の片づけをしていた。「ひかるさんは?」という知華子に「なーに」とひかるが奥から現れ、洋介の料理をつまみに、三人でビールを飲み始めた。知華子が洋介の肩を持つような話をすると、ひかるは、そんな知華子と洋介をじっと睨み「気が合うなら、今ならうまくいくかも?」とけろり。ドキ!。知華子と洋介は気まずく目を合わすのだった。
 翌朝、知華子は出勤間際、「ファミリータイプ2LDK」という不動産屋から送られてきたファックスを見つけた。洋介とひかるはよりが戻り、近く出ていくつもりなんだと、早合点した知華子は、寂しさを感じながら出勤していった。
 根津(宇崎竜童)のスタジオに、知華子が久木田を連れてやって来た。「妻の監視が厳しくて」と洋介にこぼす根津は、久木田を見て「なかなかハンサムぅ。編集長のお気に入り?」と声をかけると、久木田は「その逆で、そうなりたいと思っている」ときっぱり。その久木田に洋介が殴られた。根津と洋介のひそひそ話を「洋介が知華子と不倫」と久木田が聞きかじり誤解したためだった。
 根津の撮影が終わったあと、洋介は久木田に「子供じみた真似はよせ。知華子のことが本当に好きならそれにふさわしい愛し方があるだろ」と厳しく注意、心配する知華子には「殴るまでするのは相当な愛情だよ。自分にはできない」と話す。知華子は、そんな洋介に何か言いたいが言い出せない。
 迷惑をかけたと根津が洋介を誘ったキャバクラで、洋介は、セリナ(黒谷友香)という不思議な雰囲気をもったホステスに出会う。彼女は、本当の職業は大道芸人で、夢は芸をしながら全国を回ることなのだと洋介に語るのだった。

 洋介がマンションに戻るとひかるの足からギブスが取れていた。タンゴではセンターを死守するのだと、ひかるはストレッチしていた。「無茶すんなよ」と優しい洋介にひかるはこの夜一緒に寝ようと言い出す。知華子が戻ると、いつものソファに洋介は寝てなく、ひかると翔太の三人で川の字になって寝ていた。独り取り残された思いの知華子だった。
 翌日、洋介は、自分が探してきたマンションにひかるを案内した。「ここなら翔太も学校も変わらなくていい。8年一緒にいてくれてありがとう」と素直に言いながら、洋介は離婚の決意をひかるに伝えた。自分から言い出したことだが、ひかるの気持ちは複雑だ。洋介は区役所に離婚届を出しながら思うのだった。「壊れていく家庭が、逆に、俺に、家族の深いつながりを気づかせてくれた」と・・・。
 洋介が、知華子に離婚の報告をしようと電話すると、「今、会議中」と途中で切られてしまった。実は、知華子は、三人で仲良く寝るのを見て疎外感を感じ、ファミリーレストランに一人でいたのだった。
 翌日の休日、洋介は翔太を連れて釣りに出かけた。ひかると離婚するので、自分とは別々に暮らすことになったことを翔太に話すためだった。洋介の気持ちは重い。同じように知華子も気持ちが重く「休日出勤だから」と出かけていった。
 ポツリ、社にいる知華子。そこに、誰から聞いたのか、久木田が現れ、必死に口説き始めた。最初は取り合わなかった知華子たが、手を取られ、抱きしめられると力が抜けていった。自分は独りぼっちという寂しさが引き金になったのかも知れない。久木田と一夜を共にし、戻った知華子。その知華子を待ちかねたように、洋介は「俺たち、別れたよ」と冷静に話した。知華子は、声もなくただ呆然とするばかりだった・・・。


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