<第10回> <第11回>
<第10回>
ボストンバッグを抱えた男・牟田(小原雅人)が逃げ回っている。路上で浅香(斉藤洋介)を振り切り、私鉄の電車の車中で江田(杉崎浩一)から逃れる。しかし、その車内にボストンバッグを置き忘れてしまう。暗い公園で一息ついた牟田のそばにサラリーマン風の山本(山崎一)が現れる。こわばる牟田。山本は銃を取り出し牟田を射殺した。
捜査が始まったが、通り魔の犯行とみなされそうな気配である。今泉慎太郎刑事(西村雅彦)は、取りあえず、目撃者に似顔絵を作らせた。
そのころ、牟田を追っていた男たちが集まっていた。グループの名は「SAZ」という。意味は「Save Animales of Zoo」リーダーの日下光司(江口洋介)が言う。「バッグを取り戻せ」。浅香は翌日、駅の遺失物受付を訪れるが、中身の確認をしないと返せないと言われすごすご引き下がる。メンバーは「SAZ」のキーホルダーがバッグに付けられていることに極めて神経質になっている。「警察に移管される前に取り戻す」。策を練る時の癖でボールペンのノッチをカチカチいわせ、日下が作戦を立て始めた。
駅の管理センター。古畑任三郎(田村正和)が、車内で携帯電話の留守番電話を聞いただけで注意されたことに対し抗議している。そこへ、「電車ジャックの予告があった」と警視庁公安部を名乗って浅香が現れた。そんなことは有り得ないと強調する職員だったが、コントロール・パネルの上を光点となって走っていた最終705M列車が突然止まってしまう。
そこへ一度帰ったはずの古畑と西園寺守刑事(石井正則)が戻ってくる。705M列車に連絡を取る職員たち。しかし、スピーカーから聞こえてきたのは「我々は電車をジャックした。5000万円用意しろ」という日下の声であった。日下たちは近くの寺を拠点として、コンピューターを運び込み、駅のコントロール・パネルや通信を誤作動させていた。
古畑は、「なぜ小銭しかない駅の売り上げを狙うのか」「なぜ終点で捕まると分かっている電車を狙うのか」と疑問を投げかける。古畑が刑事であることに不安を覚えた浅香は、密かに日下に助けを求めた。日下や他のメンバーは寺を出て、駅の管理センターにやって来る。日下は公安部の人間だと名乗り、犯人の要求通り小銭を分けて鞄に詰めるよう指示する。鞄が足りないため、遺失物置き場にある例のボストンバッグも用意された。
そろそろ、管理センターのある駅を乗っ取られた最終列車が通過する。古畑は西園寺刑事に見てくるよう指示。緊張する日下は、西園寺を追うように山本に目配せする。日下は「金が出来た」と最終列車に連絡する。仲間の大和田(水道橋博士)が応答するが、声が前の犯人の声と代わっているのを古畑は聞き逃さない。
駅のホームに向かった西園寺は、なんと今泉に出会う。今泉は最終列車でやって来たと言う。「乗っ取られたのは僕らだ」。管理センターに駆け出す西園寺。
果たして犯人たちの目的は?古畑は彼らのトリックを見破れるのか?
いよいよ次週は最終回。乞う、ご期待!
<第11回>
日下光司(江口洋介)をリーダーとする動物愛護団体「SAZ」のメンバーは、裏切り者の仲間が電車に置き忘れたボストンバッグを取り戻すために、大掛かりな「犯罪」を遂行中だった。
それは、駅の電車運行表示システムを混乱させ、最終電車が表示上はあたかも電車ジャックされたように見せかけた上、その身代金を小銭で要求。嵩張るため、バッグに小分けする折に例のボストンバッグが使用されるようしくんだ。身代金を運ぶと見せかけ、バッグを手にするという複雑で込み入った作戦だった。
そのため、駅の近くの寺の本堂にコンピューターを運び込み“電子戦”を開始。さらに警視庁公安課職員になりすましたSAZメンバーが駅の管理センターに乗り込んで万全を期すはずであった。
が、そこに図らずも、古畑任三郎(田村正和)、今泉慎太郎(西村雅彦)、西園寺守(石井正則)の敏腕刑事が居合わせたのだ。
古畑の目の前で、「犯罪」は着々と進行していった。日下は、てきぱきと部下に指示を出し、バッグを4ヵ所の指定場所に運ぶだけになった。古畑は「なぜ一番危険な受け渡しを、4カ所に分散させたのか」と訝しがる。そして、SAZのキーホルダーが付けられているバッグを持って受け渡し現場へ向かおうとする日下に「私も行きます」と車に便乗する。困惑する日下。
そのころ、偽のハイジャックを見破ったため、拉致監禁された西園寺。彼を今泉が見つける。が、猿轡を解かず、ロープをほどこうとする今泉の手はぐずぐずと一向にはかどる気配はなかった。
古畑に加え、駅の管理センター局長・武藤田(佐々木功)も乗り込んだ日下の車は、目的地の市民球場へ向かって進んでいた。後ろからSAZメンバーの車が近づき、日下の車のタイヤに発砲してパンクさせる。
武藤田がパンク修理をする間に古畑は日下を問い詰める。「今度の事件はフェイクではなかったんでしょうか。そう仮定すると、公安の刑事というのも犯人の仲間ということですねぇ」。じりじりと日下を追いつめる古畑。しかし、日下はにやりと微笑むだけであった。
古畑の携帯に、やっと縄を解かれた西園寺から電話がかかる。「日下が事件の首謀者です」。古畑はあっさりと「知ってるよ」と答えた。全てを知り抜いている古畑は、日下をどうやって追いつめるのか?