あらすじ
<第1回> <第2回> <第3回>

<第1回> 「ツヨクナリタイ」
 一体、イマドキの少女は何を考え、何を求めているのか・・・・・・。社会や家族や大人に、苛立ち、怒り、焦燥し、攻撃し、馬鹿にし、自己正当化のみに走るように見える少女たち。いや、その自己の未来にすら、無力感を抱いているのかもしれない。しかし、どこかに何かを求める炎が燃えているのではないか。
「私でしかない私がここにいる」。そう信じ、叫びたい炎が・・・・・・。
このドラマは、「私」の存在を信じ「私」を探す少女の「ファイティング・スピリッツ」あふれる生き方を、韓国の少女との交流を通して浮き彫りにする夏の熱いドラマである。
           *****
 厳重に鍵のかけられたフェンスを乗り越え、深夜の高校のプールに飛び込む少女の姿があった。携帯で彼氏に呼び出しの電話をかける。水面にゆらゆらと浮かびながら呟く。
「ツヨクナリタイ、モットモット」・・・・・・。
それが、吉田小夜子(深田恭子)19歳、であった。
 小夜子は、電車内での化粧も着替えも厭わない、まさに“今時”の19歳だ。さらに直情径行ときている。先日もバイト先のショップで客に「似合わない。この服はあなたに着られたがっていない」と言い放ち、万引きだけは腕力で捕まえたものの、あっさりと首になる。
 さらに、プールに現れなかった自分の彼氏の部屋に乗り込んだ。小夜子が怖くてつい“浮気”する彼氏を叩きのめす。「普通の彼女が欲しい。殺されても別れたい」と懇願する姿に、幻滅した小夜子は静かに出て行くのだった。
「何かを探すため」短大も3カ月で退学した。小夜子の心の中には、いつも「ツヨクナリタイ」という言葉が浮かんでいる・・・・・・。
 そんな、小夜子がいつものように電車で化粧し着替えをしていると、何者かが「やめなさい!」と一喝してきた。
「あんたに迷惑かけたかよ」と言い返す小夜子に、その人物はさらに畳み掛けた。「恥でしょう。日本人は恥を知る民族でしょう。日本人らしくない!」。珍しくたじたじとなる小夜子。周囲の大人はにやにやと見物していたが、その人物は、返す刀で「あなたたちはどうして何も言わない!」と叱り飛ばした。
 これが小夜子と韓国人留学生・宗亜美(ユンソナ)の劇的な出会いだった。
 小夜子は、小さいが世界的な金属加工技術力を誇る東京の町工場「吉田絞製作所」の長女。父は一徹で無口な職人社長・吉田祐三(萩原健一)。工場には、祐三が頼りにして、何か過去のありそうな女性・三井祥子(天海祐希)らそして新入りの土屋浩太郎(安居剣一郎)が働いているだけである。母はすでに亡くなり、体の弱い妹の冬美(平山綾)と工場2階の自宅に3人暮らしである。祐三とはいつも言い争いばかり。小夜子は、なついている冬美といつか家を出ようと計画していた。
 “気合いを入れるため”に入れた「へそピアス」を祐三に咎められた小夜子は、とりあえず家出。砂浜で金持ちのボンボン・粟村元(坂口憲二)にナンパされ、なんとなく豪勢な別荘についていく。案の定、襲われるが、持ち前の“ファイティング”精神で危うく難を逃れる。
「・・・・・・あたしはね、いっぱいいっぱい溜まってんだから・・・お前なんかに、絶対負けない!」
小夜子を追いかけるのを諦めた元は、父親の粟村光夫(泉谷しげる)の命令で勉強嫌いなのに司法試験を受けるべく家庭教師とともに別荘で過ごしている。
 うんざりして家に戻った小夜子は、冬美が電車を降りる時に怪我をしたことを聞かされる。助けてくれたのは外国人女性だという。祐三の提案で家に呼んでお礼をすることになり、しかも特上の寿司を奮発すると言う。
 ところが、工場に現れた“妹の恩人”は、なんと憎っくき“電車の仇”・亜美であった・・・。睨みあう小夜子と亜美。火花を散らすのだった・・・。
            ******
 さしてこの日本と韓国の二人の少女が、ひょんなことから二人だけのショップを湘南にもつことになる。
 自分たちがつくったTシャツを売るという目的にむかって走り出した二人の間に、それぞれのセンスとアイディアの熱きバトルがはじまるのだった・・・。

<第2回> 「Tシャツリメーク宣言!」
 夢がないことで焦燥感を募らせ、「ツヨクナリタイ」と願うことで、それを振り払おうとする“イマドキ”の19歳小夜子(深田恭子)は、いつものように、フェンスを乗り越え卒業中学校のプールに忍び込んでいた。「おい、立ち入り禁止だ」。呼び咎められた小夜子は慌てて逃げ出そうとした。が、無理と踏んだ小夜子は振り返り、「なんで泳いじゃいけないわけ」と開き直る。と、相手のガードマンは同窓生の神田だった。バイトでガードマンをしていたのだ。神田は「青春は短いぞ。お前もやりたいこと見つけろ」と説経する。小夜子は切れて「言われたくないよ。なぐるよ」。が、「こんなこと気にしない私になりたい」と唇を噛み締めるのだった。
 小夜子が東京・蒲田の自宅兼工場「吉田絞製作所」で憂鬱な顔をしながら掃除機をかけている。
 「こんにちは」
 なんと、“犬猿の宿敵”韓国人留学生・亜美(ユンソナ)が、妹冬美(平山綾)に会いに来たのだ。仲良さそうな二人を見て、小夜子はカッとなり掃除機を投げ出す始末。事務所に行くと、亜美や冬美が遊んでいる。亜美は、事務員の祥子(天海祐希)に「あなたは処女ですか」なんて、とんでもない質問をしている。「何言ってるのあんた」と小夜子が怒鳴る。が、韓国語で「処女=独身女性」の意味のため、亜美は一向に意に介さない。
 亜美は、祐三(萩原健一)も交えた夕食も共にした。食卓にはキムチ。祐三に言われ小夜子が買ってきたのだ。が「日本のキムチはまずい」と亜美。小夜子が「わざわざ買ってきたのに」と言うと口に入れる亜美だったが、「やっぱり、まずいね」。緊張の食卓・・・・・・。
「外国人だから許してもらってるんだ」と小夜子。
 亜美も黙らない。
「電車のメイクや着替えは、どうなんですか。私が咎めたら、逃げ出した人がいる」
 怒り狂う小夜子。
「逃げてないよ。誰にも迷惑をかけてないし恥ずかしくなんかないよ!」
「ほんとにもう、お前ってやつは・・・」とがっかりと下を向く祐三・・・・・・。
 翌日、小夜子は祐三に「食費を入れろ。2万円だ」とたたき起こされた。あ然とする小夜子は、今度は仕事をちゃんと選びたいとの待ってという。祐三は「仕事を選り好みする身分か。辛いから仕事なんだ」と畳み掛けるのだった。
 短大を勝手に辞めた手前、仕様がなくガソリンスタンドのバイトを見つけた小夜子だが、制服のマイクロミニが気に入らない。得意のミシン裁縫で裾を伸ばす小夜子を見て、冬美は「高校時代と逆やってる」と笑う。冬美は、自分は、本の側にいられる仕事を選びたいと夢を語るのだった。
 そんな折、大人しい工員の浩太郎(安井剣一郎)は、冬美が目が不自由であることを知る。
 一方、小夜子をレイプしようとした“ボンボン”の元(坂口憲二)は、湘南の別荘で見張り兼家庭教師の洋輔(勝村政信)に、法学をしごかれていた。弁護士にしようという、父親光夫(泉谷しげる)の差し金である。
 さて、亜美は、成田空港で韓国人の婚約者を見送りに来ていた。恋人の何かの予定が変わったらしい。「約束が違う。あと一年っていったじゃない。あと3ヶ月で何ができるっていうの」と亜美は急いでどこかに電話している。
 亜美は、湘南のはずれの荒れた空き家の前に立っていた。元喫茶店と言う風情である。亜美は意を決した表情をした。
「お姉ちゃん、湘南に連れてって」
 冬美が小夜子に頼み込んできた。亜美が湘南に住むので会いに行きたいと言うのだ。渋々承知し、出向くと、辺ぴな名ばかりの湘南である。
「何するの?」
「洋服を売る店をやる」
 驚く二人。
「ま、頑張ってね」
 相手にせず、小夜子は元の別荘へ向かった。襲われ、戦った時落としたピアスを取り戻しに行くのだ。元は動じた様子もなく「ここまで取りに来れば?」と部屋のテーブルにピアスを置く。「狸の餌付けじゃないよ」。怒る小夜子。「ピアシング代弁償しろよ」と畳み掛けると、元は平気な顔で「いくら?3万円?」と金をなげて寄越す。
「あんた、家に食費を入れてるの?不公平だね」
「お前みたいな貧乏人に俺の気持ちが分かるか」
「あんたなんか辛いこと何もないでしょう」
 切れた小夜子は、元の鳩尾に一撃を食らわし飛び出していった。痛みをこらえながら、元は小夜子に自分と同じ臭いを感じるのだった。
 小夜子が冬美を迎えに来ると、「亜美の店」は片付くどころか、混乱に拍車がかかっていた。仕様がなく手伝うはめに。服はあまり好きじゃないという亜美につい小夜子は「なぜ洋服の店をやるの」と尋ねてみた。
「言いたくない」。
またまた怒る小夜子だった。
だが、小夜子は我知らずまた湘南の亜美の店に足を運んでいた。
 そこでは、まだ、亜美が、ださださのTシャツ群と格闘していた。
 「ダサくて売れないよ、こんなの」
 他人に言われると、腹が立つもの。亜美は「ただだから損しないし、やってみなけりゃ分からない」と譲らない。うんざりして小夜子は外へ飛び出した。だが、家に帰って小夜子は、自分は亜美が羨ましかったのかもしれない、亜美は自分よりずっと強いのではないか、と感じるようになるのだった。そして、自分がもっとも得意とする母の形見のミシンを眺めるうちに、ある決心をする。

<第3回> 「燃えるソウルへ!」
小夜子(深田恭子)は、大嫌いなはずの韓国人留学生・亜美(ユン ソナ)が作ったTシャツショップでミシンを踏み始めた。「大好きなミシンを使って仕事に出来たら・・・。もう文句なんか言わずに走り出せると思う」。小夜子は砂浜でおにぎりをほお張りながら、夢が形になることを祈っていた。そこへ、現れた亜美は、場違いな長そでに帽子、サングラス姿。「買い物に行くから、店に帰りなさい」と、小夜子に向かって傲慢に命令する。むっとした小夜子は「私もあんたは嫌い。あんたとは友達にはなれない」と釘を刺す。しかし、「でも、ここで働きたい」と白状する。が、亜美は「私は一人で出来る。従業員じゃなきゃ、クビ」と脅しにかかる。その大きな態度に辟易しながらも、小夜子は渋々承知せざるを得なかった。その夜、卒業した中学のプールに忍び込もうとしたら、厳重なガードがかかっており、むしゃくしゃ解消の出来ない小夜子は怒り狂うのだった。
 次の日、二人は、ほかのTシャツショップに偵察に行く。亜美はそこでも「お店やるから研究している。6000円は高い」など遠慮会釈なく韓国語で捲くし立てる。小夜子は「あんたは心臓に毛が生えてる」と呆れるのだった。が、亜美は「あんたこそ気が小さい。日本人は、嫌いだのまずいだのはっきりモノが言えなくてかわいそう。それは『弱い』からだ」と言い放つ。見抜かれてタジタジとなる小夜子。ただ、亜美は「韓国だって悪いところある。女が自由じゃない」と悲しく独白もするのだった。
 小夜子は翌日、小夜子に気のある“ボンボン”の元(坂口憲二)を使って自転車を店に運び込んだ。二人でいる様子を見て亜美は「彼でもないのに、小夜子は悪い女ね」と勝手に言う。
 そんな元は、家庭教師の洋輔(勝村政信)を誘い出し海岸のナンパに繰り出したが、堅物の洋輔のお陰で成果がとんと上がらない。いらついた元は「女っ気なしで今日を終わりたくない」と叫び、亜美と小夜子の店に電話する。そのころ、二人は、店名を考えていた。いいアイデアが浮かばない。元の「Tシャツを買うから」という申し出に、乗って、二人は元の別荘へ出向くことにした。
 別荘でいくつもTシャツを買う元に、亜美が高いと言う6000円を意ともしない。呆れ果てる小夜子。4人はバーベキューをすることにしたが、ウブな洋輔は亜美に一目ぼれし、どこか落ち着かず、一言も話せない。そんな洋輔に亜美はここでも「あなたが一人になりたいなら、私帰ります」と立ち上がる。一方、元は、パンチを避けながら、ひたすら小夜子を口説き続ける。そこへやってきたのが元の父親、光夫(泉谷しげる)だ。光夫は、小夜子、亜美に向かって「酌をしてくれる」とグラスを向ける。もちろん、二人は怒り狂って席を立つのだが、光夫は動じず、元に「縁が切れるようにわざと言ってやったんだ。ここは合宿だ!」と怒鳴りつける。
 小夜子と亜美は、店名決めを続けた。韓国語で「こんにちは」が「アンニョンハセヨ」であることから、ローマ字表記で「アンニョン」にすることに決める。そこでも私が決めた、私が言った、と我を張る二人だった。
 小夜子は蒲田の家に戻り、事務所のコピー機で「アンニョン」の開店チラシを大量にコピーした。妹の冬美(平山綾)に見つかったが、冬美は楽しげに小夜子の様子を眺めている風だ。だが、翌朝、父親の祐三(萩原健一)がコピー機に残ったチラシの原稿を見つけてしまった。母の形見のミシンは持ち出すし、祐三は、小夜子のことが心配でならない。
 亜美は、仕事の相手探しで問屋を当たるが、韓国人ということもあり、けんもほろろにあしらわれ、相手にされない。悔しがる亜美は、「時間がない・・・・・・」と独白し、小夜子の分からない部分で苛立ちを隠さなくなってきた。そんな亜美が、自転車でチラシを撒いている最中に警官に捕まった。パスポートを携帯していなかったので、不法滞在の疑いがかけられたのだ。そんなころ、亜美の態度にむしゃくしゃしていた小夜子は、元に運転させ浜辺のドライブ。キスを迫る元をあしらいながら、家に戻ることにした。
 そこには祐三が待ち受けていた。店を出すことに対して「お前は止めとけ。甘くねえからやめろ」と言う祐三。その言葉に従う気はなかったが、小夜子は「亜美と一緒にやって行く自信がないから、多分やめる」と答える。その時携帯が鳴った。交番に拘束されている亜美からだった。祐三が止めるのも聞かず、小夜子は飛び出して行く。
 小夜子に引き取られた亜美は「小夜子に、これ以上頼りたくなかった」と、すぐに電話しなかった理由を言う。そして、提案した。「小夜子が社長になって。ギャラを韓国に送ってもらう。そうすれば警察にいじめられない。ギャラは半々でいこう」。小夜子に断る理由はない。亜美はさらに続けた。「で、仕入れにソウルへ行こう」。「行く!」。即答する小夜子だった。
 活気にあふれるソウルの東大門。生地は買えたが、交渉ごとはなかなかである。それでも小夜子には手応えがあった。しかし亜美は沈んでいる。亜美は自宅へ、小夜子はホテルに泊まった。うとうとする小夜子を起こしたのは妙に明るい亜美だったが、亜美は泣いていた。亜美に何があったのか・・・・・・。


戻る

バックナンバー
[第1-3回] [第4-6回] [第7-9回] [第10-12回]