あらすじ
<第10回> <第11回> <第12回>

<第10回> 「それって私へのシタゴコロ?」
 小夜子(深田恭子)は、家出した冬美(平山綾)を探し回った。冬美の性格を知る小夜子は、まさかの事態を想像し、胸が張り裂けそうになる。疲れ果て、水を飲もうと公園に来ると、元(坂口憲二)がいる。元も足を棒にして、冬美を探していたのだった。
 「まだまだ探す」と言う小夜子を心配し、元は「一緒に行こう」と申し出るが、小夜子は「頼りになんねえ」と断る。「死ぬ気で守る」と言う元に、小夜子は「やめてよ、そういうの」と呟いてしまう。元は本気で怒った。「結局自分ばっかの奴だな。きっと寂しく孤独死するだろうな」と悪態を吐く元。「ほっとけよ、気を遣って生きるより、孤独死の方がかっこいいだろ」と強がる小夜子。とうとう二人は不毛なつかみ合いを始めてしまった。二人は亜美(ユン・ソナ)に「喧嘩してる場合じゃない」と怒鳴られ、やっと手を放すのだった。その夜、冬美は帰ってこなかった。
 翌朝、祐三(萩原健一)は、仏壇に手を合わせただけで、仕事にこもった。元に言う。「納期は死んでも守れ」そして「垢抜けた仕事をしろ」。
 元はおずおずと「今辞めたら困りますか?」と切り出した。
 祐三は、何か察したらしく「お前みたいな半人前が辞めても痛くも痒くもない」と突き放したように元に言い渡す。と、その時、事務所の祥子(天海祐希)が叫んだ。
 「冬美ちゃんから電話が・・・・・・」
 事務所では小夜子や亜美が電話の周りに立っている。それは無言電話だった。冬美からかどうか分からない。受話器を置くとまたすぐ電話が鳴る。意気込んで祐三が電話を取ると小夜子宛てだった。相手は代官山のセレクトショップ「K’S」。小夜子がTシャツを委託販売した店だ。あわてて受話器を変わる小夜子。が、そこになんと冬美と浩太郎(安居剣一郎)が帰って来た。慌てふためいて玄関へ移動するみんな。小夜子も受話器を投げ捨て飛び出した。
 小夜子、一歩前に出て冬美に平手打ちを食らわした。
 「どれだけ心配したと思ってんの!謝んなさい」
 「お姉ちゃんだって家出したじゃない。私たち結婚するのよ!」
 一同、絶句。祐三はヘナヘナと壊れてしまい、祥子のとりなしで、浩太郎は、夜、もう一度来るということで吉田家はやっと落ち着きを取り戻したのだった。
 しかし、夜になっても浩太郎は来ない。迎えに行こうとする小夜子を、祐三は制するのだった。
 そのころ、亜美と元は、携帯を見せ合っていた。姿をくらました洋輔(勝村政信)から二人に「お幸せに」というメールが入っていたのだ。
 翌日、小夜子と亜美は「K’S」へ出向いた。「完売しました」とオーナーの高木(野村宏伸)がにこやかに言う。普通よりたくさんのマージンを嫌味な店長の佐倉(板谷由香)が渋々二人に渡す。大いに喜ぶ二人だった。
 小夜子が家に帰ると、一夜で大人っぽくなった冬美が髪を梳いている。慰めようとする小夜子を遮り、冬美は「平気よ」と強がる。が、その目からは涙がこぼれていた。
 それに気付いた小夜子が、物干し台に出て、気を休めようとすると、下から元が上がってきた。元はいつになく真顔で、「俺とお前の未来はないんだな」と念を押す。小夜子が答えないのを確認すると、元はやおらテントを片付け始めた。「あたしと仕事は関係ないでしょ」と心外な小夜子が問い詰めると、元は「俺とお前が結婚したりすること、想像したよ」と言う。笑う小夜子をたしなめると、元は去っていった。
 別荘に戻った元は、洋輔もおらず独りぼっち。寂しさを紛らわせるつもりか、昔の女友達に片っ端から電話を架けるのだった。
 一方、元も浩太郎も消えた工場では祐三だけが働いていた。手伝いに来る祥子。「若い人は行くべき所に行ったんです。事務所は冬美ちゃんに頼みました」。祐三は感謝の余り祥子の手を握り締めた。満たされた気持ちになる祥子だった。
 小夜子と亜美は、「K’S」に商品を納入しに出掛けた。佐倉店長は、亜美たちが並べるTシャツのディスプレイが多すぎると、怒り狂う。ところが、現れた高木オーナーは、「もっと並べなさい」。とうとう二人は諍いになり、佐倉は泣きながら店を飛び出してしまった。高木に呼ばれ事務所に入った小夜子は、そのリッチさに気押される。高木は「こんなオフィス、すぐ持てる」と謙遜してみせるが、警戒する小夜子に気付き、「君の服が気に入っただけだよ」と笑う。素直に喜ぶ小夜子。だが、家に帰ると、亜美は「あんな男のどこがいい。小夜子は不幸になる」と言い放つのだった。
 小夜子と亜美は、元の別荘に出掛けた。元は女の子といちゃついている最中である。小夜子はむかつきながらも、プレゼントを置こうとする。そこへ、光夫(泉谷しげる)が洋輔を連れてやって来た。「洋輔の辞表は預かる。また、二人でやれ」と言い残し帰ってしまう。能天気な元優柔不断な洋輔を見てウンザリの小夜子、亜美も帰る。残った男二人がプレゼントを開けると目覚し時計が入っている。それには二人の「有り難う」の声が録音されていた。二人は苦笑いしながら顔を見合わせるのだった。
 光夫が、一升瓶を抱え、祐三のもとへ現れた。「息子が世話になったお礼だ。いい経験をさせてもらった」。そう言い残し光夫は静かに帰っていった。

<第11回> 「別れてはじめてわかった・・愛してる」
 小夜子(深田恭子)と亜美(ユン・ソナ)は、代官山の「K’S」で自分たちのTシャツが売れていくのを見て、驚きと喜びに震えた。亜美は「成功したね。ここに、『アンニョン』の店舗を出そう」と意気軒昂。
 家に帰ると、ベテラン工員の滝川(笹野高史)が復帰していた。小夜子は、つい、元(坂口憲二)のことを思い出してしまう。その元は、些細なことで洋輔(勝村政信)と喧嘩の真っ最中。洋輔をノックダウンした元は慌てて亜美を呼び出した。亜美が到着すると、洋輔は「俺は男らしくなんかなれない。終わりにしよう」と最後通告をしてしまう。
 アンニョンのTシャツは売れ続け、「K’S」のオーナー高木(野村宏伸)は、小夜子にナイトクラブなどに着て行くドレスなど、もっとアイテムを広げるよう求めた。
 吉田絞製作所に元がやって来た。祥子(天海祐希)が給料を渡すと言うのだ。そこへ、高木の車で送られ小夜子が帰ってきた。二人になって、元は突然、小夜子の唇を奪うが、小夜子に蹴り倒される。「最低な奴だ。なぜキスしたか、わかんないのかよ」と元。しかし、小夜子は「強くなりたいんだよ」。元は「そのまんまじゃ強くなれないよ」と言い残し、去って行くのだった。
 吉田絞製作所に取引先からオペラのチケットが回ってきた。祐三(萩原健一)と祥子が行くことになった。亜美が提案した。「祥子さんのドレスを作ろう」
 劇場で待ち受ける祐三のもとへ、ドレス姿の美人が寄ってくる。祐三、誰だかわからない。「遅くなりました」。化粧もした祥子であった。祐三は携帯を取り落としてしまう。終演後、二人は「なぎさ」へ行った。祥子の美しさになぎさママ(渚まゆみ)らは絶句している。「私、今日から素直に生きます」。祥子はそう言うと、初めて自ら祐三の隣に座るのだった。
 「K’S」の店内に「アンニョン」のコーナーが出現した。祥子のドレスも飾られている。満足気な小夜子と亜美。そこへ高木が二人を呼んだ。
 「雑誌のインタビューを受けてくれ」
 目を丸くする二人に取材の日が来た。記者はねちっこく質問してくる。「意地悪言うけれど、小夜子さん一人でも出来ますよね、この規模なら」といわれ、次第に怒り出す小夜子。記者が「もういいよ。君たちクラスなら掃いて捨てるほどいる。商品だって下品だね」と言うが早いか、小夜子のこぶしは記者を殴りつけたのだった。亜美はその場を去って行った。亜美を追うのをやめ高木のもとに戻った小夜子に、高木が提案した。
 「一人でやるのは趣味。マネジメントはうちでやる。亜美と別れてやって行かないか」
 小夜子は「そんな気はない」と拒む。だが、高木は言葉を継いだ。「それは、亜美のためでもあるんだ。このままなら彼女のプライドが許さないだろう」。小夜子は混乱した。

<第12回> 「サヨナラ・・・大切なヒト」
小夜子(深田恭子)と亜美(ユン・ソナ)は、「K’S」での売れ行き好調が引き起こしたコンビ分裂の危機を迎えていた。会話なく仕事をする二人。「パーッと遊びに行こう」。急に提案する小夜子。亜美も一瞬考えて賛成した。
 冬美(平山綾)も交じって中学校のプールではしゃぐ。小夜子は「亜美と絶対別れない」と心に誓う。
 そして小夜子は翌日、「K’S」の高木(野村宏伸)に独立の申し出を断りに行く。「徹夜してでも作ります」。
高木は小夜子が帰った後、その場にたまたま出くわして隠れていた亜美を呼び出した。小夜子に提案した申し出を教える高木。「君が一人でやって行く手助けはするよ」。言葉に詰まる亜美だった。
 「せいせいした」と家に帰ってきた小夜子に冬美が耳打ちする。
 「うちの工場危ないみたい」
 すぐに祥子(天海祐希)にきくと「大口の取引先が倒産した」と言う。小夜子は「お父さんを信じましょう」と言う祥子に微笑み返すのが精一杯だった。
 そんな時、小夜子の携帯に亜美からメールが入った。湘南の「アンニョン」の店跡にて、と言う。
 中に入ると亜美が口を開いた。
 「私、今日『K’S』にいたの。私に気を遣わないで。私は一人でやれる」
 「また、やろうよ」。引き止める小夜子に背を向け、亜美は「話は終わった」と去って行くのだった。
 別荘でゴロゴロしている元(坂口憲二)と洋輔(勝村政信)二人。洋輔の携帯が鳴った。「声ならいいでしょ」。亜美からだった。「もう小夜子と一緒じゃない」と言うと電話は切れてしまった。不審に思う洋輔は、元に小夜子の様子を見ることを薦めた。
 元が小夜子の家を訪ねると、小夜子は物干し台でシャドウボクシングの真っ最中だった。
 「元、私ひどい奴なんだ」
 小夜子は、亜美や「K’S」での出来事を話した。
 元は「そういうお前が好きだし、亜美さんもきっとそうだ。亜美さんの言う通りした方が亜美さんも納得するよ」と言い、帰って行った。小夜子は元の背中に「ありがと・・・・・・」と返すのだった。小夜子は決心し亜美の携帯を鳴らした。
 「亜美、私やってみる」「頑張って」「亜美も」「じゃあ」
 短く静かに電話は終わった。
 翌日、高木のオフィスに行くと、高木は大喜びである。早速、支度金100万を小夜子に渡し、スタッフとの打ち合わせに入った。だが、小夜子はスタッフの服をつくることに対する感覚には全くついて行けなかった。
 家に戻って、小夜子は困っているはずの祐三(萩原健一)に100万円を差し出した。
 「返した方がいい」
 「何にも分からないで、なによ」と悲しくなる小夜子に祐三は「勘だ」とそっけない。怒り始めた小夜子を制して「すぐに冬美も呼べ」と祐三も怒鳴る。祐三は二人を乗せてトラックを走らせ始めた。
 着いたのは、祐三が部品を作った最先端のパラボラアンテナの下だった。
 「俺の誇りだ。作るということはな、簡単に儲からないんだ」
 説経を受けても、小夜子は肯けない。
 「そして、この作品より俺には大切なものがある」
 「私たち?」と冬美。
 「ものは潰れる時は潰れる。さ、帰るぞ、乗れ」
 小夜子はじっと考え続けるのだった。
 「K’S」のオフィスではスタッフが、「あの子使えるのかね」「高木さんの彼女じゃないの」など小夜子の悪口を言い始めていた。しかも「量産できない」と、小夜子が提案したハングルのネーム入れを拒否する始末である。次第に切れた小夜子は、「まじにむかつくよ。作ることってそんなことじゃないって、オヤジだったら言うね」と啖呵を切り、オフィスを飛び出した。ショップに出た小夜子は店員に100万円の封筒を渡し「やってらんない、って、高木さんに言って返しといて」と店を後にした。
 怒りを胸に家に戻ると、冬美と浩太郎(安居剣一郎)が抱き合っている。引き離し浩太郎の胸倉をねじ上げる小夜子。
 「社長に伝えて下さい。仕事見つけて自信付けたら、会いに来ます」
 小夜子は浩太郎を睨み付け「自分で言いな」と放してやり、冬美の涙を拭う。その足で祐三に、100万円を返したことを報告し「お母さんのミシンを直して」と求めた。「出しとけ」と短く答える祐三。祥子は「いいこともありますね」と微笑むのだった。
 元の別荘に4人が集まった。亜美は韓国で店を開くと言う。
 「止めないのかよ。洋輔」と元。小夜子も「また、一緒にやろうよ」
 しかし、洋輔は力強く言った。
 「やりなよ、亜美さん。なぜ、皆認めないんだよ。門出をお祝いしようよ」
 お別れのパーティーが始まった。
 飲み明かし、浜辺を歩く4人。ふいに洋輔がわめいた。「おれ、韓国へ行く」
 あ然ととする一同。
 「亜美さんと離れられない。俺にはそれが一番大切だ」。洋輔は飛んでパスポートを取りに帰った。
 元も「俺も行くわ」と言い出す。
 小夜子が不審に思い尋ねる。
 「どこへ」
 「決めてない。お前はここで頑張れ」
 小夜子は感極まって口を開いた。
 「あんたに言うことがあんだよ」
 「早く言えよ」
 「好きなんだよ。帰って来るって約束しろ」
 「うれしいよ。でも、すべてから離れてみたいんだ。何かを見つけたいんだ」。元にキスする小夜子。元も消えた。二人残った小夜子と亜美。
 「一人で出来るよ、きっと」と亜美。
 「その言葉があったから、出来たの」と泣きそうになる小夜子。
 「傷つくことを、怖がらないで。そしたら強くなれる」
 とうとう小夜子だけが浜辺に残った。海に入る小夜子。
 「あたしの、あたしたちの夏が終わった。もっとツヨクナリタイ・・・・・・」
 小夜子は太陽に向かって泳ぎ始めた。


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