あらすじ
<第4回> <第5回> <第6回>

<第4回> 「知りすぎた姑」
 妊娠が確認された暁(天海祐希)は、超音波検診で赤ちゃんの像を見ながら満足気である。エリ(猫背椿)が、友人から集めたベビー用品をプレゼントに持って来た。だが、エリは子供の認知や戸籍問題、暁の再就職が難しいことなど、今後立ち塞がる課題を突きつける。日菜子(西山繭子)は、能天気に「子供のいる愛人になれば」と無定見なことを言い出す始末。暁は怒って見せるが、つわりが襲ってきて会話は一時中断してしまう。
 桐吾(三上博史)の家では、澄子(石田ゆり)が、先日の映画デートの余韻にまだ浸っている。桐吾が「また行こうか」と誘うと、サエ(中尾ミエ)の部屋のブザーが鳴った。桐吾が様子を伺うと、赤ちゃん用の手袋を編んでいたサエの足元に毛糸の玉が転がっている。編みかけの手袋を見た桐吾は、暁のことを思う。その表情を覗き込むサエだった。
 暁のつわりはひどくなり、仕事の最中に口を押さえるほどになってきた。それを見とめた淳哉(合田雅吏)は、仕事を手伝いながらも、映画に誘ってきた。暁は淳哉の熱意に負け、同伴した。映画が終わり、ロビーに出ると、淳哉が人込みの中に桐吾を見つけた。淳哉は桐吾の映像のファンだった。桐吾は澄子を庇う様に歩いている。暁の顔がこわばる。だが、淳哉はそれに気付かず、「サイン貰って来ます」と駆け出していった。
 暁は悟られないようにと顔をハンカチで隠していた。が、淳哉にサインしながら顔を上げた桐吾は、暁に気付いた。緊張する二人。不覚にも暁はハンカチを床に落としてしまった。そのハンカチに手を伸ばし拾い上げたのは、澄子であった。澄子は微笑みながら桐吾の手を取り去って行った。暁は、緊張の糸が切れたのとつわりの気分の悪さに、ロビーのベンチに倒れ込んだ。
 桐吾は暁のことが気になりながらも、レストランで澄子と食事を取っていた。と、澄子が「何を考えているの」と問うてきた。「お母様のこと、私も気になるわ」と澄子。桐吾はそれに無言で答えるだけであった。
 そんなころ、サエはヘルパーの目を盗んで、桐吾の部屋を物色していた。そして手帳のカレンダーにほぼ一月に1回一定の間隔で「A.T.」という書き込みがあるのを見つけた。じっと考え込むサエだった。
 暁のことを気に病む桐吾は、暁の会社の前で暁を待ち伏せた。と、そこへ現れた日菜子を見つけた桐吾は、休みを取っていた暁のマンションを聞き出し、部屋まで押し掛けてしまった。
 「ストーカーみたいなことしないでください」と言いながらも、暁は、しょうがなく桐吾を部屋へ招じ入れた。暁はどうにか口に入るメロンパンを食べながら疲れた表情を見せる。そんな暁に桐吾は「君と子供が気になっている。養育費でも払えれば」と持ち掛ける。暁は強く拒む。その時、強い吐き気に襲われた暁。桐吾は、胎児の超音波写真を見ながら、暁を看病するのだった。
 そのころ、澄子は寝室で、隣の部屋の物音に気がついた。行くと、サエが桐吾の机を漁っている。「私の指貫は・・・・・・」と探し物の振りをするサエ。机の上には、「A.T.」の書き込みが目に付くように桐吾の手帳が広げてあった。澄子はその文字を読み取った。  暁の母・ゆり子(長内美耶子)の目の手術が終わった。昌美(佐藤藍子)と見守っていた暁も胸をなでおろした。家へ帰り、暁は昌美に妊娠のことを打ち明けた。「不倫は許せない。お父さんと同じ」と怒り狂う昌美。暁が説得しようとする最中、ゆり子が起きて来てしまった。聞かれたのだろうか・・・・・・。
 桐吾は、恭介(玉山鉄二)に付き合いを断られ、甚(勝村政信)の研究室に出向いた。甚も、子供の誕生日で、おもちゃを買って帰らねばならないと言う。桐吾はふと思いたち、おもちゃ屋に同行することにした。そして、暁に電話を掛ける。暁は桐吾からと知ると、意を決して携帯の電源を切った。
 家に帰った桐吾は、澄子から、サエの様子がおかしいと聞く。と、また、サエのブザーが鳴った。澄子が見に行くと、サエは桐吾の携帯電話を弄んでいる。澄子が取り上げると、ディスプレイは発信履歴になっており、そこには「A.T.」の文字が・・・・・・。そこには澄子の表情を読み取ろうとするサエがいた。
 暁は、鎌倉の実家に帰っていた。ゆり子が「この前の話は聞いたわ。今、どんな気持ちかだけを知りたいの」と暁を問い詰める。「幸せ?」。暁はうなずいた。「じゃあ、いいじゃない。自分に誇りを持たなきゃ」。暁は母に感謝した。
 暁はアメリカ行きの航空券を買った。ニューヨークに転勤願いを出し、OKを貰ったのだ。日菜子とエリに報告すると、日菜子は大喜びである。暁も、アメリカではシングルマザーは当然だし、子供もアメリカ籍になると、まんざらでもない。エリだけが「工藤さんとは終わりなの。本当に子供の教育のためなの」と疑問を漏らす。
 一方、桐吾は、暁の携帯が繋がらないため、会社に電話を掛けた。応対に出た社員は「休職」と言う。それ以上は埒が明かず桐吾は苛立った。その足で暁のマンションに向かった。
 玄関に出て来た暁は「産休を早め目に取っただけ。帰ってください」とそっけない。桐吾は「その子に会えないなら、一度だけでも誕生祝をさせてくれ」と食い下がる。暁は承諾した。
 桐吾は澄子に「今夜恭介たちと飲んで遅くなる」との方便の電話を掛けた。疑惑の念が深まる澄子は、恭介に確認を取った。桐吾の嘘が分かった瞬間、澄子は恭介を家に呼んだ。サエが静かにそれを見つめていた。澄子は恭介に頼んで車を出してもらい、桐吾の尾行をすることにした。会社から桐吾が現れた。が、澄子は車で追うのをためらった。そして外に飛び出した。「見なければなかったことになるわよね」。健気な澄子に、恭介は心を動かされるのだった。
 桐吾と暁は、二人が初めて出会った噴水で再び待ち合わせた。ぬいぐるみのプレゼントを持ち、レストランでバースデーケーキ付きの食事。「これ以上何もしないで」。別れ際、抱き寄せようとする桐吾を振り切り暁は、一人成田へ向かうのだった。

<第5回> 「罪と罰とワナ」
 暁(天海祐希)がニューヨークに発って4年が過ぎた。桐吾(三上博史)は暁とその子供に気持ちを残したまま、CM制作の裏方として働いていた。今の売れっ子ディレクターは恭介(玉山鉄二)である。恭介はどこか、うしろめたそうな表情で桐吾を見ている。それは仕事のことだけではなかった・・・・・・。
 澄子(石田ゆり子)は4年前より明るくなっていた。化粧をして、サエ(中尾ミエ)を家に残し、今日もステンドグラスの習い事に出掛ける。しかし、その行く先は、ステンドグラスの教室ではなく、恭介とのデートであった。澄子は若い娘のように喜々として明るく恭介と接する。それを温かく見守る恭介であった。もちろん、二人の間には、まだやましいことは何も無い。
 桐吾が家に帰ると、澄子はステンドグラスの小物を作っている。「あなたの勧めで外に出るようになってよかったわ。ストレスを溜めていたのが嘘みたい」と微笑む澄子。労るように肩に手を置く桐吾。と、その時、サエの悲鳴が聞こえた。二人でサエの部屋に、サエが車椅子から落ちている。その手には絡みついた毛糸が・・・・・・。澄子が駆け寄ろうとすると、サエはその手を払い、桐吾に抱きつく。じっとその様子を見つめる澄子だった。ただ、密かに澄子はサエのボケを疑っていた。
 暁を忘れられない桐吾は、思い出の噴水の前に座って暁との日々を思い出していた。そこへ日菜子(西山繭子)が現れた。日菜子は暁の消息は、ニューヨークで会社を辞めCGデザインの勉強を始めたくらいしか知らないと言う。
 桐吾と澄子の結婚記念日がやって来た。二人は喫茶店でプレゼントの交換を行い、澄子は、気を早んでプレゼントのブラウスを着てみると言って、着替えに化粧室へ向かった。桐吾が外を見ていると、一瞬息を呑んだ。「暁だ」。信号待ちをしている女性は暁に酷似している。桐吾はプレゼントもそのままにその場を飛び出し、女性を追った。が、それは暁ではなかった。意気消沈して戻る桐吾の表情を、澄子は見逃さなかった。
 桐吾は恭介らと業界のパーティーに出掛けた。桐吾に近づいてくる男がいる。淳哉(合田雅吏)である。「以前お会いしたことがあります。今、独立してCGの会社を設立し、一度は工藤さんとお仕事を」と話しかけてきた。「ついてはうちのデザイナーをご紹介したい」。淳哉が指し示したのは、何と、暁であった。暁は全く動じた様子もない。桐吾は緊張し動揺した。そこへ仕事仲間が声を掛けてきたため、暁は淳哉と去ってしまった。  翌朝、もらった名刺の電話番号に掛けてみるが誰も出ない。桐吾は、暁の昔のマンションへ来てしまった。チャイムを押しても誰も出ない。そのまま外に出ると、公園に暁がいる。しかも男の子供と一緒である。桐吾は目を凝らしてその子の顔を見ようとするが見えない。二人はそのまま、マンションに入っていった。
 暁は息子・星児と昔と同じ部屋に戻って来ていた。淳哉やエリ(猫背椿)、日菜子も来ている。星児は淳哉になついている。まだ独身の日菜子はちょっと淳哉に気があるようである。

 暁がオフィスで仕事をしていると、電話が鳴った。桐吾であった。「今夜7時に公園で待っている。ひと目でいいから息子に会いたい。来なければ諦める」。一方的に桐吾はしゃべり電話を切った。困惑する暁。
 その晩、暁は病気の母・ゆり子(長内美那子)を淳哉、昌美(佐藤藍子)、それに星児や昌美の子供たちと共に見舞った。実はゆり子は脳腫瘍であり、もう長くないのだった。暁、淳哉、星児は、レストランで食事をした。淳哉は冗談めかして「みんなが僕たちのことを誤解している。結婚でもしてケジメつけようか」と切り出した。暁は戸惑ったが、同じように冗談っぽく「そういう手もあるね」と返答して見せた。その時、星児がレジの玩具売り場から、新幹線のおもちゃを手にとって戻って来た。結局、それを買わされる羽目に。
 だが、眠たくなった星児は帰り道でその新幹線を公園に落としてしまう。暁は公園の時計を眺め、もはや桐吾はいるまい、とそのまま部屋に戻った。が、星児を寝かしつけようとすると、目が覚めた星児が「新幹線」と泣き出してしまった。
 暁も根負けし、二人で帰り道を探すことにした。と、マンションの外に、手に新幹線を持った桐吾がいる。星児は、新幹線に気付いた。あせる暁が制止しようとするが、星児は桐吾に駆け寄る。「おじちゃん、ありがとう」。そう言って暁の元へ戻ろうとする星児は、転んでしまった。起こし上げ抱きしめる桐吾。だが、暁は無言で星児を取り戻し、去って行くのだった。

<第6回> 「目撃した・・・妻」
 暁(天海祐希)と淳哉(合田雅吏)は新しいタワーマンションのテレビCMの制作に携わるためある建築会社で説明を受けていた。と、そこへ、桐吾(三上博史)と恭介(玉山鉄二)が現れた。実はその仕事は、淳哉が桐吾に暁の仕事を売り込んでのものだったのだ。その場はビジネスライクに進んだが、桐吾、暁、そして二人の仲を薄々勘付いている恭介の心中は穏やかなものではなかった。
 一方、澄子(石田ゆり子)とサエ(中尾ミエ)の仲はますます険悪化の一途を辿っていた。澄子は、病院へ行くのを嫌がるサエの乗った車椅子を無理やり押し、車輪を押さえて止めようとするサエの掌は血だらけになるのだった。
 そんな澄子のステンドグラスの展示発表会が始まった。日曜とあって桐吾、恭介、甚(勝村政信)らが会場を回っていると、サエを連れて澄子がやって来た。甚が澄子に軽口を叩いていると、サエが突然「恭介さんと澄子さんは仲がいいね。また家に遊びに来てね」とボケを言う。だが、澄子は、そのボケ振りに不信感を持っていた。澄子が慌ててサエを他所に連れて行った直後、暁から桐吾の携帯に連絡が入った。急ぐ仕事のコンテを今すぐ持って行くと言う。桐吾は、承諾し仲間から離れて暁を待つことにした。
 暁が展示会場のロビーにやって来た。それを盗み見る目が二組・・・。
 暁は言葉通り、その場をすぐに去ろうとして、会場の外に出た。送って出て来た桐吾は、つい「今、幸せなのかな」と尋ねた。暁はきっぱりとそれを肯定する。が、別々の植え込みの陰の、二組の目は耳となって、このやり取りに耳をすませていた。それはサエと澄子であった。
 暁は、桐吾と別れ、信号を渡った瞬間、その場に倒れてしまった。過労である。駆け寄りタクシーを止める桐吾。たまらず澄子は身を上げた。なんと目の前にはサエが憎々しげにニヤついているではないか。しかし、もう澄子の衝動を止めるものはなかった。澄子は、桐吾と澄子の行動に気の付いた恭介の制止を振り切り、タクシーを捕まえ、桐吾と暁の乗った車を追った。暁のマンションについた二人はそのまま暁の部屋に入っていった。澄子は、「A・TAKAHATA」と書かれたその部屋の表札を睨み付け記憶に留め、会場へ戻った。
 桐吾は暁を横にして優しく看病する。すると、暁が突然起き出そうとする。星児(田中碧海)を保育園に迎えに行く時間なのだ。桐吾は「また、倒れたらどうする」と暁を止め、迎えに出掛けた。星児は、4年前暁にプレゼントしたカスモサウルスを手にして眠る。桐吾は「我が子」を実感するのだった。それから桐吾は、服の着せ替え、恐竜の修理、絵本の読み聞かせと、「父親」の仕事を充実した気分で体験した。星児が寝た後、桐吾は暁に星児が生まれた時のことを尋ねてみた。もう、時は夜になろうとしていた。
 そのころ、澄子は寝室の十字架に蝋燭を灯し、桐吾と消えた女のことを思い出していた。間違いなく映画館にいた女である。澄子は何か確信し始めた。
 暁は桐吾にその時のことを語り始めた。4年前の感謝祭の夜、陣痛が起き、病院まで歩く羽目に陥った暁は、途中で何度も気を失いかけた。空を見上げると教会の十字架越しに星が輝いている。それで名前を「星の子供」にした・・・。
 そこまで聞いた時、ドアチャイムが鳴った。淳哉が差し入れに来たのだ。暁の後ろから現れる桐吾に驚く淳哉。「お大事に」と言い残し、桐吾は去って行った。だが、淳哉の驚きは収まらない。暁はとうとう淳哉にすべてを打ち明けた。淳哉は言葉が出なかった。
 その夜、桐吾は、ブランコで泣き続ける自分を夢み、重苦しい感情で目を覚ますのだった。
 暁は、エリ(猫背椿)と日菜子(西山繭子)に、桐吾と仕事で再会したことを話した。エリは「互いに悩むのだから、もう会うな」と助言する。
 星児の誕生日がやって来た。暁はエリたちを招いていたが、妹の昌美(佐藤藍子)がプレゼントをついでに持ってきただけで、皆、都合が付かないと言う。二人きりの寂しいバースデイパーティーが始まった。ところが満員のバスに揺られながらケーキを持って暁のマンションに向かう人物がいた。桐吾である。桐吾はバスの椅子ではなく、自分が自宅の庭のブランコに座っているような錯覚に捕らわれていた。感覚が遊離して行く自分が怖かった。
 暁のドアベルが鳴った。淳哉であった。淳哉はプレゼントを星児に渡し、パーティに合流した。マンションの部屋から明るい話し声が漏れて来る。桐吾は、自嘲のため息をつき、ケーキを渡せないまま、踵を返そうとした。
 淳哉も帰り暁は片づけものを始めた。と、携帯が鳴る。着信表示には「桐吾」の名前。鳴っては切れる。その時、ドアポストに何か入れる音がする。開けると、桐吾からの誕生日祝いのメッセージカードであった。暁は外へ飛び出した。桐吾を見つけた暁は、公園で桐吾に言った。
 「私はあなたを忘れようと頑張っている。なのに会うとどうしようもなくなって」  二人はひしと抱き合うのだった。
 その時、暁の部屋では携帯がまた鳴っていた。掛けているのは澄子であった。桐吾の電話相手や手帳のメモにあった「A・T」の頭文字を暁のことと確信したのだ。しかし誰も出ない。何度も何度も掛け直す澄子。と、誰かが出た。星児である。澄子は星児と会話し始めた。それを後ろからサエが聞き耳を立てている。そんなことを想像もせず、桐吾と暁は抱き合うのだった。


戻る

バックナンバー
[第1-3回] [第4-6回] [第7-9回] [第10回]