<第1回> <第2回> <第3回><第1回>
間もなく幕が上がるファッションショー会場の慌ただしい舞台裏。川嶋碧(今井美樹)は、緊張気味のモデルの表情をほぐし、出番間近のモデルの帽子を直してやったりと忙しく立ち回って居る。
華やかにスポットライトを浴びるショーの舞台とは対照的に、ここはまさに戦場。だがこの戦場こそ、碧が生き甲斐を感じ働く場所だった。女性たちの羨望を集めるブランド『ディオン』。碧は、そこのプレスとして、休むことなく、それこそ寝る間も惜しむように働いてきた。
ある日、管理部長・青井(梶原善)に呼び出され、先日実施された健康診断の結果「過労気味」と言われる。よってうむをいわさず1週間の休暇が与えられることになったのだ。「出来すぎる上司を持つと部下も育たないわよ。部下に任せる勇気を持ちなさい」。ゼネラルマネージャー・遙子(江波杏子)も休養を進めてくれる。さすがにアシスタントの由里(佐藤藍子)は、心細い表情を見せたものの、それでも碧の久しぶりの”強制休暇”は始まってしまった。
神崎宗一朗(市川染五郎)にとっては、ニ年振りの日本だった。タクシー運転手からはボロボロな格好を不審がられたが、実は茶道『白洲流』家元の十五代目。格式ばかりの生活を嫌い、三年間の期限付きで自由な暮らしを条件に家を出て外国を放浪していた。今回は、母の命日のため帰国した。だが『初釜』の日にあたった母の命日はすでに終わっており、人間らしさより家を優先する父・丈太郎(平泉成)への宗一朗の不満はまたしても深まってしまったのだった。さらに、勝手に決められた許嫁・奈美子(北浦共笑)の存在。25才の宗一朗には、何もかもが簡単には受け入れられないものだった。
その頃休暇中の碧は、何もすることがなく、定年後好きなことをしている父・哲雄(宇津井健)の方が、遥かに充実した生活を送っているよう。母親として幸せそうな友人の姿を見せつけられ、休暇中というのに会社に電話をして様子を聞いてしまう碧。もてあまし気味の休みを送っていた。
それと察した同僚の堀口(吉田栄作)は食事に誘い、碧の「仕事はおもしろい、でもなぜか虚しい・・・」という胸の内を聞いてやるのだった。かつて恋人だった堀口は、「やっぱり男がいると違うんじゃない?」と暖かく見守るように言った。
翌日、碧はふらりと美術館、そして動物園へと足を運んでみた。檻の中の動物たちにおどけて「・・・そっちはどうなの? 何のために生まれてきたわけ?」などと話しかけてみたりして。と、その時だった。若い男がやってきて、有料のはずの餌を、金を払わずに取り上げ、楽しそうにサルに与え始めたのだ。あまりのことに思わず「それって、お金入れないといけないのよ!」。とがめる碧。だが男は平然と「こいつら腹へってるんですよ。ここんところ不況で餌買ってやる客も少ない」と返す。
これが碧と宗一朗の偶然の出会いだった。そして休暇明けのオフィスで、二人はまたも出会うことになろうとは・・・。<第2回>
碧(今井美樹)は『ディオン・ジャパン』プレスに入社してきた宗一朗(市川染五郎)を直属の部下として実戦で使うようゼネラルマネージャーの日向(江波杏子)に言われ憮然となる。だが日向は「二人の組み合わせはおもしろいと思うわ。あなたたち同じ匂いがするもの」と意味深な笑みを浮かべるのだった。
春夏コレクションと、そのイメージキャラクターの記者発表が来週に迫ってきた。碧は、宗一朗と共に、女優・黒川夏子(板倉香)と会うためにショップへとむかった。
店員が一斉に碧に挨拶し、緊張した面持ちで夏子の到着を待つ様は、宗一朗の目には異様に映った。しかも、遅れて来ても何も言わず、用意した色のドレスでは不満らしく、わがままを言う夏子に、宗一朗は腹立たしいばかりだ。
今にも何か発言しようとする宗一朗をいさめた碧。帰る道すがら「あなたが好きになれないわ・・・あなたはこの仕事、一週間ももたない」と言い放つのだった。
その夜、神崎家に戻った宗一朗は、就職したので家を出ることを両親と奈美子(北浦共笑)に報告した。父・丈一郎(平泉成)は、「どういう理由で会社がお前を雇ったか知らんが、お前は一週間も続かない」と碧と同じことを言うのだった。
同じ頃、碧は堀口(吉田栄作)と飲みながら、「日向さんの気持ちがわからない。なんで彼が私の部下なの?!」と宗一朗のことをぐちっていた。だけど堀口は、依然つきあっていた頃、自分が浮気した時もそんなに怒らなかったのに、何故碧が宗一朗に腹を立てるのか、気になるのだった。
数日後。碧を、そして『ディオン』を震撼される事件がおこった。
黒川夏子がキャラクターを降りると言ってきたのだ。原因は、仕事先の編集部で偶然顔を会わせた夏子に、宗一朗が、溜めていた不満をぶつけたことにあるらしい。
夏子の要望通りに紫から黄色にドレスを変更。わざわざパリ本店まで行ってドレスを用意した矢先のこと。碧は、宗一郎を引っ張って夏子の元に謝罪に行こうとするが、「彼女に謝るぐらいなら、ここを辞めます!」と拒否されてしまう。
「あなたには覚悟がない!人に頭を下げる覚悟も自信も。いいわ辞めなさい。でも、今のままでいる限りあなたは何者にもなれないわよ」。
「ディオンというブランドに惚れてるなら、どうして信じないんですか?誰が着ても似合うって、それだけのもの作ってるんだって!」。
互いに引うとしない二人。
会見の日は三日後に迫っていた。<第3回>
宗一朗(市川染五郎)が、家を継ぐことに反発し3年の猶予をもらい外に飛び出していることを週刊誌で知った碧(今井美樹)は、それが事実なのかどうか、宗一朗に直接問いただした。「内輪もめに会社を巻き込まないで。今後の戦力にならない人間を前線にだすつもりはない」。碧はきっぱりと言うと、辞めてもかまわないと告げた。しかし、宗一朗は「生活のため辞めるつもりはない」と平然というのだった。
そんな中、近く銀座に進出するフランスの老舗デパートへの出店OKの朗報が舞い込んできた。堀口(吉田栄作)の勢力的営業が見事に実を結んだのだ。後は、いかに有利な店舗スペースを確保するか。実は、そのために堀口は先方の社長(マクシミリアン・フォン・シュラー)夫妻を温泉旅行に招待をプランニングしていたのだが、社長婦人が疲労で遠出する気分にはなれないとキャンセルされてしまった。そこで堀口が思いついたのが、『お茶会』だった。宗一朗から父・丈太郎(平泉成)に頼んでもらい、急な申し出をなんとか受けてもらおうとする堀口。碧も上司として宗一朗に父への仲介を頼むが、宗一朗はかたくなに断り続けた。父との確執を知り、それ以上強く言えない碧。そんな碧に堀口は言った「ヤツが1年しか勤めない奴だから怒ってると思ったら肩を持ってる・・・意外だね」。
その夜、碧が帰宅すると、会社に忘れてきた携帯電話をなんと宗一朗が わざわざ届けにきたというのだ。「なぜ、わざわざ?」戻ってみるとそんな疑問も考える余地もないくらいの状況になっていた。父・哲雄(宇津井健)の料理で楽しげに酒を酌み交わす二人が、碧を迎えたのだ。哲雄は、そのまま上機嫌で先に眠りついた。
そこで碧は、もう一度宗一朗に茶会の件を持ち出していた。宗一朗はその時始めて、目の前に敷かれているレールの上を歩かなくてはならない者の気持ちがわかりますか?と心の内を明した。碧はさすがにそれ以上いうことはできなかったが、直接自分が会ってお願いしてみたいと、丈太郎への仲介を頼むのだった。
翌日、碧は神崎家に丈太郎を訪ね、茶会の話を切り出した。三日後ということもあり、無理を承知のお願い。だが、意外にも丈太郎はOKしてくれたのだ。喜ぶ碧。だが、それには当然のように条件が出された。「息子が亭主を務めること」。つまり自分ではなく宗一朗に茶を点てろという・・・。宗一朗は拒否。話しは再び頓挫するかに見えた、だが突然宗一朗が茶会で亭主を務めると言い出したのだ。