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<第4回>『復讐の紋様唐津絵皿は語る』
唐津藩は七万石の小藩だが、九州の外様大名たちの目付けとして幕府は重視し、譜代の大名から選ばれたものが藩主となる。唐津藩から将軍への献上品は名産の焼き物だが、その中に異様な皿が一枚あった。割れた破片をつなぎ合わせた古い絵皿で、中央に「高麗祠」の文字。全体では宝探しの地図のように見える。
献上品に割れ皿とは前代未聞。何か深い意味があるのではないか。隠密奉行朝比奈河内守正清(北大路欣也)は唐津へ向かった。真鍋平太郎(金田明夫)も後を追った。朝比奈の妻りん(萬田久子)が土産に求めるのは唐津焼である。
唐津の飲み屋で朝比奈は、つい先日まで藩の山役人をしていた桜井仙十郎(佐戸井けん太)という浪人と知り合った。桜井は朝比奈の腕を見込んで頼みごとをした。明日、ある神社に来て自分の用心棒をしてくれれば金をはずむという。そして懐から袱紗を取り出して、朝比奈に預けた。中には二つ柏の家紋の印籠が入っていた。
その夜、桜井は藩の物産奉行長田多門(ベンガル)に斬り殺された。現場を通りかかった真鍋は、虫の息の桜井が長田の名を口にするのを聞いたが、夜の見回りの役人に犯人と間違えられて追われ、ある小屋に逃げ込んだ。陶工仁右衛門(益富信孝)の元で働く卯之助(遠藤憲一)の小屋だった。卯之助は若いが腕の良い陶工だった。
桜井には佐世(及森玲子)という娘がいた。佐世も仁右衛門の窯で働いていた。
さる高貴な人のための焼き物を求めて唐津に来たと言う朝比奈を、佐世は翌日仁右衛門の窯に案内した。そこで真鍋と再会する朝比奈だが、もちろんたがいに知らぬ顔である。 仁右衛門のところには、大坂の豪商松浦屋孫兵衛(佐々木勝彦)と、長田多門が来ていた。三人は二十年前に、ある悪事をきっかけに深いつながりを持った仲間だった。それが献上品の絵皿の謎とも関係していた。
松浦屋はかってこの地域の海を支配し、朝鮮、明国にまで進出した海の豪族松浦党の子孫で、持っていた絵皿には金銀財宝の隠し場所が描かれていた。孫兵衛は宝を掘り出そうとしたが、その場所には由蔵(加藤寛治)という陶工が家族で住んでいた。
二十年前、孫兵衛は陶工の下働きをしていた仁右衛門と二人で、由蔵夫婦とその弟子を殺した。惨劇の後にその現場に来たのが、貧しい山役人だった長田多門。事情を知った長田は欲に目がくらんで、家に帰って来た由蔵の姉と弟に刃を向けた。斬られる時、姉は長田の印籠をつかんで息絶えた。その手が体の下になったため、長田は気がつかなかった。 一味が引き上げた後で現場に来て、その印籠を拾ったのが桜井。ずっと黙っていたが、浪人となり金が必要になって長田をゆすり、斬られたのだった。
幼い弟は逃げる途中で谷へ落ち、一味は死んだものと思っていた。
だが弟は生きていた。大人になった弟は陶工としての修行を積み、仁右衛門窯で働きながら、父母の仇を討つ機会をうかがっていた。それが卯之助だった。
卯之助の腕で仁右衛門窯の評判が上がり、今年は献上品を作るまでになった。そこで、皿の一枚を松浦党の古い絵皿とすり替えて、公儀に二十年前の悪事を訴えたのだ。
地獄耳の松浦屋は、幕府が献上品の異変に気づき、隠密奉行が唐津に向かったのを知った。そして朝比奈と真鍋が疑われる。卯之助から全てを聞いた朝比奈が、怒りに燃えて動きだした・・・・。
<第5回>『伊予松山姫さまと無理心中』
伊予松山藩主の孫娘光姫(小田茜)と、松山藩から分家した松山新田藩主の嫡子真太郎(志村東吾)とは相思相愛の仲である。兄弟藩どうしでめでたいようだが、両藩は対立していた。
祭りの夜、変装した二人の密会の場で真太郎は、松山藩士に命を狙われ、刺客を突き倒して逃げた。ところがその後松山藩から、真太郎が家臣を殺したので身柄を引き渡せ、と言ってきた。真太郎には覚えがない。
両藩の対立は老中土屋相模守(船越英二)の耳にも入る。松平壱岐守(神山繁)を藩主とする松山藩十五万石は徳川家康にも縁がある親藩。隠密奉行朝比奈河内守正清(北大路欣也)が伊予へ向かう。りん(萬田久子)にとぼけられながらも、真鍋平太郎(金田明夫)も後を追った。
両藩の仲が悪いのは昨年、松山藩が飢饉で苦しんだ時に新田藩が助けなかったという理由。だが、それを口実に松山藩の城代家老前園左門(小沢象)が陰謀をめぐらし、対立をあおってやがては新田藩を取り潰そうという思惑があった。真太郎暗殺に失敗した刺客が殺されたのも、「次の手」を考えた前園の命令だった。
新田藩は、家老の高山勘六(中田浩二)が先頭に立って真太郎を守る体制に見えたが、実は前園が高山に、取り潰し後に江戸家老にするという闇取り引きを持ちかけていた。
真太郎は山寺で密かに光姫と会っていた。仲を取り持つのはお花(永住千夏)という庄屋の娘。朝比奈がたまたまその寺に来ていた。そこへ松山藩の追っ手が押しかける。高山が裏切って秘密の場所を教えたのだ。しかし朝比奈がその場を救った。
光姫と真太郎は手に手を取って逃げた。河原で二人は、崖から飛び下り心中した若い男女の死体を見つけた。顔が分からないくらいに潰れている。
追い詰められた光姫と真太郎は自分たちも心中をと考える。そこに姿を見せた朝比奈が二人を思い止まらせる。そしてある計略を実行に移した。
男女の死体の着物を真太郎と光姫のものに着替えさせて、お花の父の庄屋覚兵衛(外山高士)の家に運ぶ。お花が、真太郎と光姫が心中したと言うと、驚いた覚兵衛は松山藩の役人を呼んだ。駆けつけた松山藩目付の砂川一蔵(木村栄)は衣装と持ち物から、真太郎と光姫の死体だと信じた。
役人は男の死体だけを埋めた。続いて砂川が先頭に立ち、光姫の着物を着た死体を新田藩の陣屋に運んだ。砂川は逃亡中の真太郎が、足手まといになる光姫を崖から突き落としたと詰め寄る。そして、藩主壱岐守は公儀に訴えて新田藩を取り潰すつもりで、そうなれば藩士領民は路頭に迷う、と脅しながら、取り潰される前に家臣と領民が松山藩に戻れば生活は守られるとも迫った。すかさず新田藩家老の高山が「戻る」と言う。
そのやりとりを陣屋の天井裏から朝比奈、真鍋と見ていた真太郎は怒り、天井板をはがし、飛び下りた。朝比奈も隠密奉行と名乗って登場。砂川、高山やその家臣と激しい斬り合いになった。
<第6回>『逃げる女 鳥取砂丘の決闘』
隠密奉行朝比奈河内守正清(北大路欣也)は因幡鳥取の砂丘の砂の中から女の櫛を拾った。朝比奈はその櫛を手掛かりに、殺された夢路(河合綾子)という廓の女の謎を追う。夢路は因幡鳥取藩の国家老荒木田監物(山本亘)の愛人で、最近赤ん坊を生んだ後、何者かに斬殺された。赤ん坊は行方不明である。
隠密奉行が鳥取の一遊女のことを調べるのには訳があった。因幡鳥取藩主池田忠勝(吉田次昭)には最近嫡男が生まれたが、荒木田との間が上手く行かず、藩政が揺らぐ恐れがあった。そして、荒木田は廓の女に入れ込んでいるとの情報が幕府に入っていたのだ。
朝比奈は自分を追って鳥取に来た真鍋平太郎(金田明夫)に、荒木田を見張るように頼んだ。その結果、加菜(佐藤友紀)という荒木田の奥用人の召使いと、加菜が連れている赤ん坊を必死で探していることが分かった。
藩主の池田家と荒木田家は本家・分家の関係。若い藩主は監物の甥でもある。それが面白くなかった荒木田は、夢路が生んだ自分の子供と藩主忠勝の赤ん坊が共に男子で、同じ時期に生まれたことから、恐ろしい陰謀をめぐらした。
若君の乳母が奥用人の木山喜平(堀部隆一)の妹だったことを利用して赤ん坊をすり替え、加菜に若君を殺すように命じた。しかし加菜には罪もない赤ん坊を殺せず、連れて逃げていた。一方忠勝は、すり替えられた子を自分の子供と思っていた。荒木田はやがて忠勝を毒殺し、若君の後見人として藩政を牛耳るつもりでいた。
加菜は名峰大山を望む大山寺領に近い村まで逃げた。寺領内には藩の支配は及ばない。だが加菜は高熱を発して苦しんでいた。運の良いことに、通りがかった朝比奈が加菜を助ける。乳が出ない加菜のために、赤ん坊を抱いて貰い乳をし、おしめを替える朝比奈。妻りん(萬田久子)との間に子供がいないためにてんやわんやである。
そこに荒木田一味の追っ手が来た。真鍋が応戦し、その間に朝比奈と加菜、そして若君は寺領内に入った。しかし真鍋は一味につかまった。
ほっとした加菜は朝比奈に荒木田の悪事をすべてを話した。さらに、自分は捨て子で木山に拾われたこと。篠原一馬(井田州彦)という藩の若侍に恋をして子供が出来たが、流産。その時の、「母になりたかった」という思いで若君を殺せなかった、などと語った。 加菜は篠原が自分たちの味方になってくれると思い、朝比奈に内緒でに会いに行った。実は篠原も荒木田一味で、夢路を斬ったのも篠原だった。篠原は加菜を捕らえた。
荒木田は、若君を連れてくれば真鍋と加菜を返す、と朝比奈に言ってきた。大山の麓の野原。単身現れた朝比奈の剣が冴える・・・・。
荒木田、篠原、木山ら悪人をことごとく斬った朝比奈は鳥取城で忠勝に若君を渡す。自分の不徳を詫びる忠勝だった。
朝比奈の、りんへの土産に流し雛があった。「子供がいれば・・」と言うりんに朝比奈は「子育ては疲れた」とポツリ。それを、どこかに隠し子がいるのではと誤解したりんの表情がけわしくなる。言い訳にやっきとなる朝比奈だった。