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<第1回>『南国土佐 よみがえる海賊船』

 幕府の隠密奉行である朝比奈河内守正清(北大路欣也)が土屋相模守(船越英二)の命で、藩の御用船が海賊をしているという疑惑のある土佐に向かう。妻のりん(萬田久子)は土佐の銘菓を土産に頼んだ。例によって御小人目付真鍋平太郎(金田明夫)がその後を追った。
 土佐に着いた朝比奈は、お豊(喜多嶋舞)という江戸の娘と出会った。芸名松風斎玉豊といい、縄脱け術の名人である。朝比奈の男気に惚れたお豊は朝比奈の後についてくる。
 やがて朝比奈は海賊一味と思える男たちと出会い、叩き伏せる。逃げた一人が落とした財布から、ある寺に絵馬を奉納した時の受け取りが出てきた。朝比奈とお豊はその寺へ急ぐ。数多い絵馬の中からオランダ船の絵馬を見つけたお豊は、「お父っつあんの船だ」と叫んだ。
 お豊の父弥平次(寺田農)は船大工で、航海中に漂流してオランダ船に救われ、三年間オランダの造船所にいた。運良く帰国出来た弥平次だが、海外渡航は厳罰の時代だった。弥平次の留守中に妻は死に、お豊は人買いに買われていたが、弥平次はそれを捜し出した。お豊はそう父から聞いていた。弥平次は普通の大工として江戸でひっそりと暮らしていた。その時、密かに作っていたオランダ船の模型をお豊は覚えていた。
ある日、弥平次は何者かに拉致された。「土佐の海に船を浮かべるまでの辛抱」という書き置きが残っていた。それでお豊は父を探しに土佐に来たのだ。
 弥平次を拉致したのは土佐藩浦奉行の神谷右京之介(伊藤高)。神谷は海事の責任者の立場を利用して、海賊と組んで私腹を肥やしていたが、ついに性能の良いオランダ船の建造を計画した。そして、海賊の頭の北斗ノ左源太(曽根晴美)から、彼の幼なじみである弥平次の話を聞いて、土佐に連れて来たのだ。海辺の小屋で図面を引いていた弥平次を朝比奈が捜し出した。しかし、ようやく朝比奈に追いついた真鍋が姿を見せたがドジを踏み、真鍋の命を助けるために朝比奈とお豊は捕らえられてしまう。
 弥平次は左源太に、お豊の本当の父親は左源太だと言う。お豊の母には弥平次も惚れていた。漂流から帰った弥平次は、左源太に捨てられた女が死に、娘が売られているのを知ってお豊を買い戻し、父親として育てた。お豊が持つ守り札の字は、左源太の筆跡だった。朝比奈、真鍋、お豊は縛られて朽ち寺の本堂に入れられる。しかしお豊は縄脱けの名人だ。三人は神谷、左源太とその手下と対決する。一味の敗色濃厚となった時、神谷がお豊の首筋に刀を突きつける。その時、お豊をかばった左源太が神谷に斬られる。直後に朝比奈が神谷を斬った。「最後に親らしいことが出来た」、と言って息絶える左源太。
 土佐藩は海賊行為の被害は全て償うと言った。朝比奈は弥平次が土佐の国を離れたことはない、という一札を藩国家老から取って、事件は公にしないこととした。弥平次とお豊は長崎に向かい、朝比奈と真鍋は江戸に帰った。

<第2回>『讃岐丸亀 女のいない町』

 隠密奉行朝比奈河内守正清(北大路欣也)は妻のりん(萬田久子)と、久々に芝居見物に行く約束をしていた。ところが急に老中土屋相模守(船越英二)に呼び出され、四国丸亀藩に行くように言われる。
 藩主義信(田中隆三)は病的な性格で、ささいな家臣の過ちにも切腹を命じ、領民を死罪にしていた。このため人心は荒廃し、大騒動が起こりかねない状態になっていた。
 丸亀に着いた朝比奈は、例によって朝比奈の後を追ってきた真鍋平太郎(金田明夫)の到着を待って城下へ入る。町に活気がなく、女の姿が全くないのが異様だった。
 立ち寄った居酒屋の主人喜平次(丸岡奨詞)の話で、女たちが藩主の横暴に抗議してあちこちの寺に立てこもっているのが分かった。発端は、さち(秋本美恵)という腰元が義信の好きな皿を割ったことにあった。義信はさちを手討ちにするという。
 あまりのことに、国家老大野木主馬(清水糸宏治)の妻ゆい(姿晴香)が寺にこもった。ゆいは人望があり、武家の女はもちろん町人の女も立てこもりに参加した。
 朝比奈は身分を偽ってゆいに会ったが、怪しまれて真鍋ともども捕らえられてしまう。朝比奈は、さちを座敷牢から救い出してくるから自由にしてほしいとゆいに取り引きを申し出る。真鍋が人質に残った。
 朝比奈は単身家老大野木に会う。優柔不断ではあるが、内心藩主の行為は良くないと思っていた大野木は朝比奈を見逃した。無事救出されたさちだが、次席家老の河合織部正(森下哲夫)は大野木の仕業ではないかと疑う。
 藩の侍たちが、ゆいたちがこもる寺を囲んだ。大野木はゆいに、さちを引き渡せと言うが、ゆいは離縁されても出来ないと断る。義信は籠城を解かねば女たちを皆斬り捨てると怒った。もはやこれまで、と思ったゆいは、女たちに家へ帰るように言った。
 ゆいは自らの死を覚悟し、朝比奈に「あなたのような勇気のある人に会えて良かった。もし生まれ変われたら妻になりたい」と言うのだった。朝比奈はゆいに、このまま死ねばすべてが無になる。せめて殿の前で思っていることを話してから、と言う。
 城内でゆいは義信を諌める。怒った義信が刀を抜いた瞬間、家臣が公儀大目付朝比奈河内守が到着した、と駆け込んできた。正装した朝比奈を見てゆいは驚いた。
 朝比奈は義信に対して、国家老大野木から「藩主乱心につき隠居」との上申書が出ていると言う。もとより偽の上申書である。書面を見た河合は、「家老の印がない」と指摘する。朝比奈は、この場で大野木が血判を押せば有効だ、と切り返した。
 迷う大野木をゆいが見つめる。二人の目が合い、大野木は血判を押した。それを見て義信は大野木に斬りかかる。刃先をはね上げる朝比奈。斬り合いとなるが朝比奈が河合や藩士たちを斬り、義信を気絶させた。朝比奈は大野木に後事を託して江戸へ引き上げた。

<第3回>『備前岡山でもらった手紙』

幕府大目付の朝比奈河内守正清(北大路欣也)が、江戸城内で書類の山と取り組んでいる。ふと目にしたのは、美作国津山藩士、桂木新十郎の娘志乃についての仇討ちの許可証。志乃は二十歳という。
 二十歳の娘の仇討ちの行方が気になった朝比奈は、備前岡山藩領内で水争いが絶えないという別の報告を理由に、実情視察のため山陽道へ向かう。朝比奈の「女難」を心配する妻りん(萬田久子)は、朝比奈の後を追う小人目付けの真鍋平太郎(金田明夫)に、旅先での朝比奈の行状をつぶさに調べるように頼む。
 備前岡山城下に着いた朝比奈が泊まった宿には、お弓(濱田万葉)という品のある女中がいた。お弓と親しい同じ宿の女中お袖(松尾あぐり)が、お弓は武家の出だと言った。実は、お弓が志乃だった。もう一年間も、父の下男だった弥平(早川純一)という初老の男と二人で仇を探していた。
 探す相手は元津山藩士の平田三右衛門(立川三貴)。桂木新十郎(中嶋俊一)は、上司である勘定組頭の平田が、密かに藩米を岡山藩の商人に横流ししている証拠をつかんだ。そのことを問いただすと、平田は桂木を斬り、姿を消した。
 弥平の努力で、岡山藩郡奉行稲葉掃部(伊藤敏八)の屋敷に平田が匿われていることが分かった。稲葉はその立場を悪用し、産物問屋の備前屋作左衛門(頭師孝雄)と組んで私腹を肥やしていた。隣の藩である津山藩の平田もその一味だった。
 仇討ちの機会を狙って稲葉の屋敷の動静を探っていたお弓と弥平は、稲葉の家来に気づかれ、弥平が斬られる。そこへ朝比奈が来て稲葉の一味は逃げるが、弥平の傷は重い。強くてやさしい朝比奈を慕うようになったお弓は、自分の身の上を話した。
 お弓の看病の甲斐もなく、弥平が息を引き取った。稲葉の屋敷の動静を探っていた真鍋が、屋敷に備前屋もいると報告に来た。これで三悪人がそろった。朝比奈はお弓を連れて稲葉の屋敷に行き、お弓を門前に待たせる。
 朝比奈の怒りが爆発した。門番をあっという間に倒し、奥の書院に踏み込む。岡山藩士たちとの斬り合い。朝比奈は公儀大目付と名乗り、悪党たちを次々と倒す。稲葉を斬り、備前屋を斬り、逃げる平田の太股を刺した。
 足を引きずりながら門の外に逃げようとする平田。そこに待ち受けていた鉢巻きにたすきがけの志乃が平田の胸に小太刀を刺し通した。志乃は見事に本懐を遂げた。それを見届けて朝比奈は真鍋とともに江戸へ帰る。真鍋はりんに「殿様は旅先では何もなかった」と報告した。安心したりんだが、朝比奈の着物を畳んでいると、「ご恩は一生忘れません」と書いた女文字の手紙が出てきてしまう。あわてて、高級料理屋での食事に誘って話題をそらす朝比奈である。


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