あらすじ
<第10回> <第11回> <第12回>

<第10回> 「感動の対面!止まらない涙」
 李理香(菅野美穂)が函館で基次郎(江口洋介)と衝撃的な対面を果たしたころ、柿崎プロデューサー(筧利夫)は、李理香を探し回っていた。テレビ生出演を控えているのに李理香の行方が分からなくなったからだ。柿崎は、中也(伊藤英明)に李理香の函館行きのことを聞き、李理香を連れ戻してくれることを頼む。「友達だろ」と柿崎から説得されて中也は引き受けることにする。
 一方、そのころ昴(陣内孝則)は、旅の準備をしていた。妻の昭子(真矢みき)が言う。「あの女と旅行ですか。あなたは何かを掴んだらそれで満足なのよ。面倒くさいことが嫌いだから人生をぶちこわしたり出来ないの。臆病者よね。あなたの弱さが分かったわ」。だが、絶対に自分のもとに戻ってくると自分のことを慰める一人ただずむ昭子の姿もあった。
 「蓮井朱夏」の情報漏れのもとを探っていた柿崎は、公衆電話でしゃべっている未明(原沙知絵)の後ろに立っていた。未明は、誰かに李理香と昴の関係を漏らしている。「どうも君が李理香の情報を漏らしているらしいね」。未明はしらをきりとぼけてその場を去っていった。
 そのころ、当の李理香は、基次郎の枕元に立ちすくんでいた。
「久し振りだね、李理香。嘘を謝らなきゃ。」
「基次郎は私の兄さんなの?」
「お前はただ一人の血をわけた妹だ。」
 基次郎の母・杏子(風吹ジュン)が説明する。「あの子は、難病の筋萎縮性側索硬化症なんです。原因も治療法もわかっていない病気なんです」。「文通していたのは知っていたけれど、相手があなただってすべてを打ち明けられたのは先週なんです。」「手紙は残るでしょう。匂いや、手触りが伝わってくる。そして手紙だから、あなたとこの長い時間の空白を埋めあうことができるって、思っていたみたい」
 検査が終わり、目を覚ました基次郎に李理香は、「基次郎に会えて人間らしく強く生きなきゃいけないことを知った。復讐心が醜い心だというのも知った。もう誰も恨んでも憎んでもいない」と話し掛ける。
 ベッドに横たわる基次郎は「せっかく会えたのにこんな調子ですまない。お前がどんなに真っ直ぐで優しい子かよく知ってるよ。だって僕は君の兄だからね」と言う。 
 病院の喫茶室に移って、杏子は李理香について知っていることを話してくれた。
 「あなたのお母さんは、あなたを生んですぐに亡くなったらしい。お父さんは丁度そのころ、こっちで事業に失敗し、二人の子供は育てられないと基次郎を児童養護施設に預けた。そしてあなただけ東京に連れてもどった。結局お父さんは東京でも事業に失敗して、あなたを親戚夫婦に預けたけれれど、その人達も離婚することになったので、その後、あなたも養護施設に入った・・・。基次郎は、父親の親戚に自分の病のことを話して、あなたの居所を教えてもらったそうです」
 李理香は、さらに基次郎に深い感謝の念を抱くのだった。
「基次郎が現れなかったら、私は悪魔のいいなりになって、人間の心を放棄していたかもしれない」
 翌日また見舞いに来ることを約束し、ホテルに帰ると、昴が待ち受けていた。函館中のすべてのホテルに電話をかけて探し当てたのだ。李理香は、ことの経緯を説明した。昴は「心配だから来たんだ。私は私なりに必死で生きようとしている今の君がいとしい。もう私の役目がないということが分かったけれど、せめて君に栄養だけは与えて東京に戻りたい」と、ほほ笑む。「君は、お兄さんのそばにいるだけでいいんだ。君は酷い女なんかじゃない。本当は優しい人間なんだ」と昴は優しく言いきるのだった。
 翌日、李理香は、再び基次郎のもとを訪ねた。
 ロビーに降りると、中也がいた。「なんだかお前が心配でさ、だって友達だから。近所の人にかたっぱしから会って、ここを突き止めた」。
李理香は、基次郎が兄だったことを告げ「東京で待っていてくれたらそれでいいの」と、心配そうな顔をする中也を置いてホテルへ向かった。
 ホテルへ戻ると、柿崎からの携帯が鳴った。
 「テレビの生出演があるから。明日の夜まで帰って来てくれ」
 「大事なことがあるんです」。李理香は迷わず携帯の電源を切ってしまった。そのまま病院へ向かおうしたところ、道の途中で中也が待ち受けていた。
 「何かやることがあったら、言ってくれ。この辺でいるから。適当に野宿しているからな」
 病室で基次郎を見守っていると、基次郎が目を覚ました。そして、李理香に顔を近ずけて「あの歌どうした?でも歌っている姿を一度でいいから見たかった」。

<第11回> 「今夜、テレビで歌います!」
函館の病院に入院している基次郎(江口洋介)を見舞っている李理香(菅野美穂)は、基次郎の母・杏子(風吹ジュン)と一緒に、看病を続けていた。だが、李理香は、「時間がない」と泣いてしまう。
杏子は「あなたが基次郎のために出来ることは、あなたが幸福になることと基次郎のことを心の中で生かし続けることよ」と諭す。
 李理香は号泣した。
 病室に戻った李理香に基次郎は、「短い人生だったけど、どんな兄妹より深く尊く付き合えた」と語りかける。基次郎の目からも涙が一筋流れ落ちるのだった。
 李理香が病院の外に出ると、中也(伊藤英明)が待ち受けていた。「兄のためテレビに出るわ」と言う李理香 と一緒に、中也は空港に向かった。
 羽田からのリムジンバスの中で李理香の携帯が鳴った。未明(原沙知絵)からだった。未明が言い放つ。「あなたの情報を売ったのは私よ。幸福なくせに、偽物の涙とインチキ孤独で大衆をだますな」
 楽器を取りに下北沢に戻る途中、中也は未明と出くわした。「李理香は君を許すだろう。君を取り巻く孤独の砂漠が悪いんだ」と中也。
 テレビが始まった。李理香が言う。「私たち兄妹のように、苦しみや孤独や不安を抱えるすべての人に捧げます」。その姿を、基次郎と杏子が病室で見ていた・・・。

<第12回> 「あなたの愛をありがとう!」
 蓮井朱夏こと李理香(菅野美穂)が、中也(伊藤英明)とともに初めてテレビ出演し「ZOO」を歌った。函館の病院に入院する基次郎(江口洋介)は、その姿を見つめながら、目を閉じた。そのまま基次郎は死の世界へ旅立った。
 歌い終わった李理香は、中也(伊藤英明)を探した。だが中也は黙って帰ったらしい。李理香は、音楽プロデューサーの柿崎(筧利夫)に「中也にお礼をいいたい」といって番組終了後の関係者の打ち上げにも出席せず中也を探しに下北沢へ向かった。李理香は、「幸福は足元にある」という基次郎の言葉を思い出していた。
 中也は、いつものガード下で歌っていた。歌い終えた中也に李理香は「色々ありがとう」と礼を言った。中也は自分のためにギターを弾いていたいし、お前にはもっとふさわしいギター奏者がいるといって立ち去ろうとするが、そんな中也に李理香は「私はあなたがいいの」と言う。
 その時、李理香の携帯が鳴った。基次郎の母・杏子(風吹ジュン)からであった。基次郎の死の知らせである。李理香の慟哭が夜を引き裂いた。
 李理香と中也は、函館で行われた基次郎の葬儀に参列した。そしてそのまま李理香が姿を消した。中也は、函館中を探し回り、やっと佇む李理香を見つけた。
「負けないで生きろ」と言う中也に、「幸福になると兄に約束したから大丈夫。それより、相談にのってもらいたいことがあるの」という李理香。李理香が話しをはじめた。そして、中也も「俺も相談にのってもらいたいことがある」と言う。


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