数々の有力選手を指導する長光歌子先生が
フィギュアスケート界を楽しく語ります!

歌子の部屋

vol.28

平昌オリンピック、世界ジュニア選手権を終えて。そして世界選手権について

歌子先生に平昌オリンピック、世界ジュニア選手権を終えてのお話と世界選手権について伺ってきました。

平昌オリンピックについて

■田中刑事選手にとってもすごいプレッシャーの中での演技だったと思いますが―

長光歌子先生

 今回の江陵の会場はショートトラックとリンクをシェアしていたこともあって、刑事君が本番リンクでショートプログラムの練習ができたのが、ショートプログラムの前日の夜だけだったんです。翌朝練習は早いですし、練習の後本番までもほとんど時間が空いていなかったので調整が大変だと思いましたが、さすがに一度は本番リンクで感覚を味わいたいという事もあって、前日の夜も日本選手では1人だけ練習に入りました。その時は流れだけでも通してできればと思っていたのですが、その夜の練習はお客さんにもオープンになっていて、日本からたくさんの皆さんがいらしていました。曲かけ練習ではすべてのジャンプをミスなく降り、そのまま本番まで行って欲しかったのですが、お客様の前なのでアドレナリンを少し早く出しすぎてしまったのかもしれません。でも上手くいかない時はそういうものです。刑事君にとっては本当に素晴らしい経験にもなったと思いますし、またこれから頑張っていってもらいたいですね。

■女子シングルの演技はどうご覧になりましたか―

 女子の試合の時私はすでに日本に帰ってきていたので、関大のリンクで練習中にみんなとスマートフォンで見ていました。全然練習になりませんでしたね(笑)。
 宮原知子選手は本当に良かったですね。感動でした!惜しくもメダルには届きませんでしたが、順位とかメダルとかは関係ないって感じですよね。ショートプログラムもフリーも記憶に残る素晴らしい演技だったと思います。あれこそが練習は裏切らないという典型ですよね。宮原選手がずっとコツコツ練習していたのを知っているので、それが実って本当に良かったと思います。海外選手に比べて体格的に小柄ですしジャッジの評価も不利に働くことがあったかもしれません。それでも指の先まで神経が行き届いた細やかな演技で、これこそ「日本人の演技」というのを確立してくれたのではないでしょうか。
 坂本花織選手はどんどん伸びていますよね。本当に怖いもの知らずというか、どこまで成長していくかこれからも楽しみです。
 海外勢ではやはりロシアがびっくりするくらい強いですよね。あそこまでのレベルですと、どちらが良かったかなどは、人ぞれぞれの感覚的な部分になってくるのではないですかね。アリーナ・ザギトワ選手は後半のポイントが1.1倍になるところにジャンプを全部持ってきているので、点数も高くなりますよね。それでもそれをやり切る技術、体力、それと精神力が凄いと感じました。
 エフゲニア・メドベージェワ選手の演技は本当に素晴らしかったと思いました。どちらが勝ってもおかしくなかったと思います。私としてはメドベージェワ選手の方がより強く印象に残りました。
 カナダのケイトリン・オズモンド選手もすごかったですね。正直あそこまでやるとは思っていませんでした。最後の最後まで魅せてくれましたよね。
 カロリーナ・コストナー選手はこれぞフィギュアスケートという演技で感動しました。大ベテランですけれど全然衰えていないばかりか、ジャンプなどもまだまだ進化していますよね。本当にすごいです!
 オズモンド選手もコストナー選手もスケールの大きさに圧倒されました。

■ペア、アイスダンスの演技はどうご覧になりましたか―

 ペアもアイスダンスも本当にレベルが高い戦いでしたね。
 ペアの金メダルを取ったアリオナ・サフチェンコ選手とブルーノ・マッソ選手ですが、サフチェコ選手は昔からよく存じ上げている選手です。いつも彼女はスーパーウーマンだなと尊敬します。ウェンジン・スイ選手とクォン・ハン選手ですが、私はすごく演技が好きですし、ショートプログラムは2位をかなり離しての1位だったので逆転されて意外でしたが、それでも銀メダルですから素晴らしいですよね。
 須﨑海羽選手と木原龍一選手のカップルもフリーへは進めませんでしたが、ショートプログラムで自己ベストを更新した素晴らしい演技でした。点数が出た時はフリーに進めるかも?と思ったほどです。演技の後良い表情をしていましたよね。すごく成長していますし、これから楽しみです。
 アイスダンスですがテッサ・バーチュー選手とスコット・モイア選手は素晴らしかったですね。彼らがシニアに上がった頃から、一緒にいる機会も多かったので、頑張って欲しいと思っていました。金メダルをとれて心からおめでとう!って言いたいですね。
 あとは大輔のショーにもよく来てくれるケイトリン・ウィーバー選手とアンドリュー・ポジェ選手も7位に入ってよかったと思います。
 でもやはり村元哉中選手とクリス・リード選手ですよね。本当に良かったです。哉中ちゃんは本当に上手になったと思います。ツイズルの失敗もなく素晴らしい演技を見せてくれました。あの衣装が変わる演出も上手く決まって良かったですよね。昔は小道具としてスカーフを血に見立てたカルメンがあったりもしましたが、あれだけガラッと変わるのは見たことがないです。
 昔は、アイスダンスで日本が上位にはいるのは無理じゃないかと思う時期もありましたが、今本当に伸びてきていますし、カップル競技も盛り上がって行くと団体戦でのメダルも見えてくると思います。

■他の競技はご覧になりましたか―

 色々な競技をテレビで観ましたが、私はスピードスケートの小平奈緒選手の金メダル獲得に本当に感動しました。小平選手は以前お会いした時も本当に謙虚な方で、今回も色々な所から彼女の人となりや努力のさまを見聞きし、ますますファンになりました。所作や礼儀も本当にアスリートの鑑ですよね。
 500mでオリンピックレコードが出た直後も、次に滑る選手が集中できるように盛り上がる観客の方々に向かって「シーッ」ってしていましたよね。人への配慮であったり、インタビューでの受け答えであったり本当に素晴らしいと思います。ライバルのイ・サンファ選手と、競技後に抱き合ったシーンは本当に感動しました。金メダリストに相応しい選手だと心から思いました。

長光歌子(ながみつ うたこ)
長光歌子(ながみつ うたこ)