数々の有力選手を指導する長光歌子先生が
フィギュアスケート界を楽しく語ります!

歌子の部屋

vol.28

平昌オリンピック、世界ジュニア選手権を終えて。そして世界選手権について

歌子先生に平昌オリンピック、世界ジュニア選手権を終えてのお話と世界選手権について伺ってきました。

2018.3.20

長光歌子先生

平昌オリンピックについて

■歌子先生にとっては4度目のオリンピック参加でしたね―

 今回私は田中刑事選手に付いて現地に行ったのですが、今までトリノ、バンクーバー、ソチに行っていた時は、事前の合宿も含めると、1か月くらい家を空けていましたので、今回は火曜日に行って翌週の月曜日に帰国と凄く短く感じました。江陵の選手村や競技施設はすごくコンパクトにまとまっていて、ダイニングもすぐそばにあり、バンクーバーやソチに比べると施設への移動が大変楽でした。
 それと会場でニコライ(・モロゾフ)に会ったのですが、すごく驚いていました(笑)公式練習の時に「ニコライ」って声をかけたら「なんでいるの!?辞めるって言ってたじゃないか!」って言われましたよ(笑)。本当に喜んでくれていました(笑)。
 選手もコーチも昔馴染みが多く、たくさんの方に再会できて嬉しかったですね。

■試合をご覧になっていかがでしたか―

 今回はミニマムポイントを取れないと参加資格が得られないというルールも手伝ってか、どの選手も大変上手だと思いましたし、男子シングル、女子シングル、ペア、アイスダンス全てにおいてハイレベルな戦いでしたよね。
 そんな中で何と言っても日本男子の金メダル、銀メダルは本当に素晴らしいと思います。羽生結弦選手は足のケガもまだ治りきっていない中でしたし、尋常じゃないプレッシャーがあったと思います。けれどそんな中でもショートプログラム、フリー共によくまとめて金メダルをとったなと本当に感心します。更に宇野昌磨選手!初出場でおまけにフリーでは最終滑走というとんでもないプレッシャーがかかる中、素晴らしい演技をしてくれましたよね。彼の演技に私は胸を打たれました。もしかしたら金銀はあり得るかもとは思っていましたが、本当にとれてしまった事に驚き日本人として誇りに思いました。田中刑事君は結果こそ振るいませんでしたが、良い経験になったと思っています。
 海外勢ではネイサン・チェン選手のショートプログラムは残念でしたね。団体戦での演技がトラウマになってしまったのかも知れませんが、フリーではこれぞネイサンという迫真の演技を見せてくれましたよね。次の世界選手権は本当に楽しみです。
 ハビエル・フェルナンデス選手はショートプログラムで本当に素晴らしい演技を見せてくれましたね。その場を支配する感じというか、会場全体を完全に取り込むような演技は圧巻でした。
 後はパトリック・チャン選手の必死で自分のスケートをしようとしている姿や、アダム・リッポン選手の持ち味でもある表現力豊かなスケートなどたくさん感動させていただきました。
 また、ミハル・ブレジナ選手はこれまで身体能力は素晴らしいけれど練習ではあまり緊迫感を感じないことが多かったのですが、今回はどれだけ密度の濃い練習を積んできたか、こちらにビシビシと伝わってくるような緊張感のある練習内容で本番も頑張って欲しいと思いながら観ていました。
 ロシアのドミトリー・アリエフ選手、ミハイル・コリヤダ選手も素晴らしかったですよね。アリエフ選手は、正統派の端正なスケーティングをする選手だなと思いました。コリヤダ選手は(髙橋)大輔とは一緒の試合がなかったので、実際に会ったことはないのですが、最近は映像で彼の演技を見る度に素晴らしいスケーターだなと思っていました。今回、初めて彼と会場ですれ違った時に何度もテレビでおなじみになっている顔なので、すでに面識があると思いこみ、他の顔見知りの選手と同じように「ハーイ」と声をかけたら怪訝な顔をされてしまいました…(笑)。
 それから個人的には、ベルギーのヨリック・ヘンドリックス選手が大変印象に残りました。4回転ジャンプはないのですが、彼のスケートやスタイルがすごく好きになりました。

長光歌子(ながみつ うたこ)
長光歌子(ながみつ うたこ)