数々の有力選手を指導する長光歌子先生が
フィギュアスケート界を楽しく語ります!

歌子の部屋

vol.25

対談企画 ゲスト:佐藤信夫先生

荒川静香さんや浅田真央さんを始め数々の名選手を育成された佐藤信夫先生にお話を伺いました。

オリンピックについて

佐藤信夫先生

今年はオリンピックシーズンになりますが、オリンピックという舞台は信夫先生にとってどのような存在ですか。

僕が現役の頃は、どちらかというと周りが「オリンピック、オリンピック」と言うのでオリンピックに出なきゃいけないんだと思っていましたね。だから出場できて良かったと思いますね。

その当時はまず外国に行くことですら大変だったんじゃないですか。

スコーバレーオリンピックの時、当時は飛行機でしたがまだプロペラ機でした。サンフランシスコへ行くのに、羽田からアンカレッジでトランジットをしてからサンフランシスコへ行く旅程だったのですが、アンカレッジまでの便が、重量オーバーでした。そこで飛行機のガソリンを減らして、その分スピードを落として飛ぶことになったんです。アンカレッジまで16時間かかりましたね。さらにアンカレッジからサンフランシスコまで14時間かかりました。

へー!丸一日以上ですね。

そうですよ。よく覚えています。すごい長旅でしたね。

昔は、コンパルソリーがあって、フリーがあって、靴も衣装もそれぞれあるから今より荷物も多かったですよね。

女性の場合は、パーティー用に日本の着物も持って行っていましたから、荷物も多かったですね。

着物も珍しかっただろうし、パーティーなどですごく喜ばれたんじゃないですか。

そうですね。男の人はタキシードでした。その当時パーティーは格式の高い場所だったんですけれど、1965年のコロラドで行われた世界選手権のパーティーでは、カウボーイ姿で出てこいということになったんです。そこからパーティーもガラッと変わったと思います。

コーチ観について

信夫先生とは本当に長いおつきあいをさせていただいていますが、改めて信夫先生のコーチ観についてお伺いしたいのですが、信夫先生は選手を演技に送り出す時、どういった想いで送り出していらっしゃるのですか。

送り出す前は、こういうことも言おう、ああいうことも言おうと色々と考えるのですが、直前になると考えていることはどっかにすっ飛んでしまって、親のような気持ちで、ただ「頑張ってね!」と言って送り出すだけになってしまいます。

そうなんですね。練習の時など教えるにあたって気をつけていることなどはありますか。

やっぱりなんだかんだ言っても「基本を大切にしなさい。」というところですかね。僕独自の教え方みたいなものはないと思いますね。

信夫先生の生徒さんたちは、スケーティングが本当に皆さんしっかりしていますよね。それが「基本を大切に。」という信夫先生の教えなんだなって思いますね。
生徒は一人一人得手不得手な部分があると思うのですが、先生はどのようにご指導なさっていますか。

一時は、全ての生徒に対してきちっとした形をまずは身につけさせないといけないと考えた時期もありました。けれど生徒一人一人練習の環境や生い立ちなどは違いますから、同じ型にはめるというのはどうなのかと考えるようになりました。だからそれぞれの選手にそれぞれの最適な方法で教えていこうと考えています。もちろん自分なりの信念は持っています。けれど、それを全ての生徒に全て同じ言葉で伝えることはできません。生徒はそれぞれ同じ人はいませんし、似ていたとしても微妙に違いますから、それをちゃんと把握して教えていくことが大事だと思います。

そうですね。同じようなことを伝えていても生徒一人一人捉え方が違うので、その辺を見極めていかなければいけない時代ですよね。信夫先生のおっしゃる通り、生徒それぞれ環境が違いますし、だからこそそれぞれ方針が違うわけで、そういったことを親御さんたちにも理解してもらいたいと、私も心掛けています。

そうですね。その生徒にあった個性がありますし、私たちはその個性をしっかりと受け止めて、スケートを感じとれるような環境をつくってあげる必要がありますよね。

長光歌子(ながみつ うたこ)
長光歌子(ながみつ うたこ)