数々の有力選手を指導する長光歌子先生が
フィギュアスケート界を楽しく語ります!

歌子の部屋

vol.13

対談企画 ゲスト:渡部文緒先生

髙橋大輔の専属トレーナーとしてチーム大輔を裏から支えた渡部文緒トレーナーにお話を伺いました。

スポーツメンタル

渡部文緒先生

スポーツ全般において、選手のメンタル部分は大事だと思うんですけど、渡部さんはどう考えますか?

ラグビーの日本代表が活躍して今スポーツメンタルが注目を浴びているのですが、日本国内ではスポーツメンタルという分野で働いておられる方は数多くはありません。そういう方に、ジュニアの 合宿などで講演していただいたりしているんです。「ルーティーンを作ってやりましょう。」だったり、モチベーションを作るためにはどうするべきかを考えたり。基本的には「プラス思考にしましょう」という学問なんです。でも(髙橋)大輔のようにマイナス思考から力を発揮する選手もいます。今の子たちはマイナス思考でも力を発揮することができる世代なんですかね…。あんまりメンタル強くないけどやれる。その子供たちはスパルタで鍛えていくのは向いていないですよね。メンタルの部分は選手たちにとって、とても重要な部分だと思いますが、十人十色なのでそこのケアはかなりシビアな部分ですよね。歌子先生こそ、コーチとして頭を悩ますところじゃないですか?

比較的女の子はスパルタでも耐えられるんですよね、でも意外と男の子が難しいんです。

そうですよね。その選手の持っている感情の部分は、すべて理解できませんから。それでも少しでも理解をしていくことが大事だということは(髙橋)大輔から学びました。彼の場合はマイナス思考を受け入れるところから始めました。

ニコライ(・モロゾフ)は(髙橋)大輔の気持ちのコントロールが本当にうまかったですよね。彼からするとニコライは神のような存在だったから、ニコライの言ったことは守っていましたね。トリノの前のGPファイナルに日本人で初めて3位表彰台に上った時に、私も大輔も満足してたんですよ。でもニコライは大輔を呼んで「お前は3番で満足しているのか?」って聞いて「お前は世界で1番をとれるんだ!こんなので満足するな」って怒ったんです。調子が悪い時には怒らないのに、良かった時に怒られたっていうのがとても衝撃だったみたいで、まだ上を目指せるんだっていう風に気持ちを持てたらしいです。

渡部さんについて

サッカーの指導者になりたくて、4年間くらいサッカーの指導をしてた時があったんですが、でも自分が上に立ってやるっていうのが性格上ちょっと違うなと思って、下から支えたいと思ってトレーナーを目指しました。当時日本はトレーナーに関してはまだまだ未知数なところがあり、アメリカに渡って勉強したんです。その後、札幌に帰ってきて日本でもう一 回勉強しようと思い、関西人の人柄にひかれて関西に行きました。そして2005年に5年間の契約で会社所属のトレーナーになったんですけど、その間に「髙橋大輔」という大きな存在に出会って、2011年に会社を辞めてフリーになりました。当時もそうですけど、僕がオリンピックについていくなんてことは思ってもいなかったです。

人との出会いって本当に不思議ですよね。その先の人生が変わることもありますし。

本当にそうですね。歌子先生や(髙橋)大輔との出会いは、とても素晴らしい出会いだったと思います。

ありがとうございます。渡部さんは今も色々な方々のトレーナーを務めていらっしゃいますけど、将来はどんな目標があるんですか?

そうですね…。僕たちトレーナーの仕事は、選手が結果を出してくれる事が、自分の仕事の結果にもつながるんです。だから、選手が結果を出せなかったときは僕も反省します。選手が結果を出してくれたときでも、あまり良い内容ではなかったとき、改善点を修正することに努めます。そうやって選手のために努力することで、選手が結果を出してくれたとき、やっとトレーナーとしての仕事ができたなと思うんです。だから目標ではないですが、日々選手のために最善を尽くしていくのが、僕のやるべきことだと思います。

やっぱり戦っている選手には一番良いコンディションでパフォーマンスをしてもらいたいですしね。

はい!その上で、上の世代が自分たちに伝えてきたものを、これからトレーナーをやっていく方々に伝えられたらと思います。

渡部さんの信念が受け継がれていくのを本当に楽しみにしています。やっぱり、私だけでは色々とダメになっていたかもしれないところを渡部さんやニコライ(・モロゾフ)がいたから頑張れたんですから!本当に感謝しています。今日はありがとうございました。

渡部文緒先生
長光歌子(ながみつ うたこ)
長光歌子(ながみつ うたこ)