数々の有力選手を指導する長光歌子先生が
フィギュアスケート界を楽しく語ります!

歌子の部屋

vol.13

対談企画 ゲスト:渡部文緒先生

髙橋大輔の専属トレーナーとしてチーム大輔を裏から支えた渡部文緒トレーナーにお話を伺いました。

2016.10.28

渡部文緒先生
渡部 文緒(わたなべ のりお)
渡部 文緒(わたなべ のりお)
高校卒業後に専門学校、米国での短大留学を経てコンディショニングコーチとして会社に勤める。2006年8月から高橋大輔の専属トレーナーを務める。現在はフィギュアスケートのジュニア選手やスポーツの若手選手の育成をサポートしている。

お二人の出会いについて

歌子(以下:歌)(髙橋)大輔は、元々ポルトガルのカルロス(・アビラ・デ・ボルバ)さんというトレーナーさんに付いてもらっていたんですけど、日本でトレーナーを探したいということで、見つけてもらったのが渡部トレーナーでした。フィギュアスケートのトレーナーになるのはものすごくイレギュラーなことですよね。

渡部文緒(以下:渡)すごく特殊ですね。

(髙橋)大輔と初めて会ったのは関西大学のリンクでしたよね。

関大のリンクに行くのに、野辺山か何かの合宿明けでリンクまで行く手段がないと髙橋(大輔)が言うので、高槻駅で待ち合わせをして車に乗せて行ったのが初めての出会いです。真っ黒でチャラチャラしてる感じだなあ(笑)と思いましたね。19歳でしたし、チャラ男だなあと思いました。それで車に乗せたらすぐに寝てしまったんですよね。リンクに着くまでのわずかの間に。

たぶんアメリカから帰ってすぐだったんですよね、時差もあると思うけど、車に乗るとすぐに寝るタイプだから(笑)

でもその後滑っている姿を見たときに、これまでフィギュアスケートを間近で見た事がなかったので、ものすごく驚きました。氷の上をすごいスピードで泳いでいるような感じで。

私もそのリンクについた時に初めて渡部トレーナーとお会いしたんですよね。(髙橋)大輔に後で「どんな感じの人?」って聞いたら「うん、いい。いい感じ」みたいな反応をしていました。

最初半月くらいは合うか合わないかもわからないし、試用期間みたいな感じだったんですけどね。

こんなに長い付き合いになるとは(笑)

息子が0歳の時からの付き合いなので、息子の年齢=付き合いみたいな感じですね。

トレーナーの仕事について

渡部文緒先生

日本には3種類のトレーナーがあって、僕らのようなフィジカルコーチをするトレーナーと、鍼灸のような東洋医学を行うトレーナーと、理学療法士の西洋医学のトレーナーとがいるんですが、僕はケガをしない予防のトレーニングがメインで、ケガをした選手のトレーナーとは全く異なりますね。だから僕が(髙橋)大輔についている間はマッサージをほとんどしなかったですね。

マッサージされるのも嫌っていましたしね、渡部さんの考え方はケガをしないよう自分の身体のコンディションを整えようというのが基本ですので、(髙橋)大輔自身がそれに反したくなかったみたいです。色々な試合に行くと、色々な先生が来るんですけど、昔試合前に男の子たちが帯同したトレーナーさんから、普段受けていないマッサージを受けて身体が緩んじゃって、ジャンプが全然飛べなくなっちゃったこともありました。

普段から練習とマッサージを交互に受けている人だったらそれでもいいんですが、普段と違うことをするとバランスから何から壊れてしまうんですよね。

選手のメンタルの部分をコントロールしやすい立場なので、そこに入り込んでしまうトレーナーさんも時々いらっしゃいましたね。トレーナーさんが選手のメンタルを主にコントロールすると、コーチとの信頼関係のバランスを崩してしまうことにもなりかねませんから。渡部さんは絶対にそういうことはしなかったので、ずっと信頼して来ました。

やっぱりチームは崩しちゃいけないんですよね。領分を出ることは絶対にしないです。選手が一番困るので。

渡部さんには本当に助けていただきました。今もですけど…。

全然そんなことはないですよ!自分に足りないものは外から、僕みたいに専門的な人間を快く受け入れてくれて、チーム大輔というのか、そういう環境を作れるというのは本当に感謝しています。

長光歌子(ながみつ うたこ)
長光歌子(ながみつ うたこ)