エコアナ・藤村さおりリポート「環境とビジネスの関係」って?
[2008年2月18日更新分]
■講師・末吉竹二郎氏のコンセプトは「CO2本位制」
「CO2本位制」とは、これからの時代は決められたCO2排出量が経済や日常生活の価値を決めていくだろうというもので、こうなるとカーボンマネージマント(炭素管理)が出来ないCEOは烙印を押される。ゆえに、今このタイミングでこの問題に対処出来ない経営者はサヨナラの方向へ・・・・・と末吉氏は推測する。
金融も時流に乗り、ファイナンス各社は環境上評価できない企業にはお金を出さない動きに変わり始めているそうです。
2003年、当時の国連、コフィ・アナン事務総長が投資家に向かって言いました。
「皆さん、お気づきですか?地球の将来は、皆さんの手の内にあることを」
“風が吹くと桶屋が儲かる”の様な循環がここにはあるのだと私は理解しました。つまり、投資家の皆さんのお金を使い、生活の基盤を壊す様な企業に投資をし続けるという今までのスタイルではCO2濃度は上がる一方、それでよいのですか?
それより、社会が目指すゴールを達成するためにそのお金が使われるべきじゃないでしょうか。違う視点で投資しないといけない時代に突入したのではないですか?と訴えかけたといいます。
■EU諸国の取り組みは、ここまで来ている!
そもそも私はいくら苦肉の策とはいえ、実質排出量が減っていないのに「お金を出して減らしたことにする」排出権取引制度に少なからず疑問を感じているのですが、それに関し、少し救いになるような、国連環境計画・金融イニシアチブ 特別顧問の肩書きを持つ末吉氏らしい建設的な話しが聞けました。
カーボンニュートラル(自分たちが出しているCO2を他から権利を買ってきて相殺するのではなく、自分たちの本業で相殺)をしようとしている企業、国が増えてきていて、以下の様なことが実践に移されつつあるというのです。
どれも日本ではまだ議題にも到底上らないことだらけ。ましてや時代に逆行し、国内では現在60兆円かけて道路を作ろうと議論している。おまけに日本における温暖化対策法案は民主党で一本のみ。既にアメリカ議会にも抜かされた格好・・・・・これで日本は大丈夫?
■温暖化リスクを価値基準変化の機会にする!
そんな中、末吉氏は思い切ったアイディアを紹介してくれました。社会をコントロールするには
(1)法の規制
(2)社会規範
の二つがありますが、この二つで直接的な規制が出来ないのであれば、【環境税を課す】等の多面的な対応で乗り切ろうというもの。
2002年に施行された東京・千代田区の「歩きタバコ禁止条例」を思い出してみて下さい。現在では千代田区は歩きタバコの規制が当たり前の区になりましたが、規制施行前はここまでガラリと皆の目線やマインドが変わるなどと、誰が予想できたでしょう(私が調べたところによりますと、千代田区の例が呼び水となってそれ以降、全国の行政で様々なタバコに関する規制が敷かれているんです。ザッと数えただけでも40県市区村も!)。
CO2においてもこの様な【価値基準の変化】を求めたい。一番重要なことは、これから5年間でどれだけ「ギア」と「マインド」が変えられるか、だと熱く語っていらっしゃいました。
温暖化はrisk(危機)ではなくopportunity(機会)であると捉えるべし。環境は既に、今日・明日の問題になっているのだから。
講演を聴き、頭がよく"気付き"のある人は、考えることも、言うことも、やることも一味も二味も違うのだなと、今回もまた痛感してしまいました。と同時に、やはり「知ること」は大切で、「深く勉強をすること」はもっと大切なこと、と年頭の自分への教訓として受け止めたのでした。
末吉竹二郎
国連環境計画金融イニシアティブ特別顧問
環境問題や企業の社会的責任(CSR/SRI)について、各種審議会、講演、TV等で啓蒙に努めている。
著書多数。
藤村アナが参加した勉強会は、(財)社会経済生産性本部が主催した『環境と経営のビジネストレンド研究会』