対談
対談〜数字で表れてこないユニセフ活動の本質〜 - 1234 -
小 形: 以前に「自分の寄付で特定の子どもが学校に行けるようにしたいのに、何故ユニセフでは子どもの仲介が出来ないんですか?」という苦情をいただいた事があります。
それに対して私は、「ユニセフは特定の子どもを助けるのではなくて、全ての子どもが学校に通えるようにするための活動をしています。
また、このためには啓発活動や栄養や保健面での支援も重要ですので、ユニセフでは、子どものための活動を包括的にやっています」と説明したんですが、相手の方は『私は自分がどの子を助けたか知りたい』とのご意見でした。
また、『自分は古着を役立てたいのに、ユニセフは何故お金でしか寄付を受け取ってくれないんですか?』とおっしゃる方もいました。
早 水: 確かに私達の所にも、10箱くらいの古着などが入った段ボール箱が宅配便で突然届いたりするんですよ。
しかし、結局それに対しては日本からの輸送コストがかかるわけですよ。その為に特別扱いをして他のドナーさんからのお金を使うわけにはいかないんですよね。それがはたして本当に効果のある支援なのか考えると、やはり我々の様にユニセフをサポートする立場からするとそれは違うと思うんです。
もちろん、神戸エンジェルの話しのように、それを子どもの真心から始まった象徴的な出来事として国民の皆さんに広めることも価値がある事だと思いますけれど。
事務局: FNSチャリティキャンペーンにもよく同じような電話があります。使われていない毛布や衣料などが活かされるのは良い事だと思います。
しかし、それを現地に送る為の保管や輸送にかかるコストや人件費が莫大にかかってしまう事は最終的には支援を受ける人々への他の支援の為のコストを圧縮してしまう事になるので、「それらに関するノウハウがユニセフには不足しているので」という言い方をして、物資に関しての専門の支援団体を紹介しているんです。
そちらにお願いした方が専門のスキルがあるので効率良く役立てられると思いますし…でも、それを予め市場に対してインフォメーションして理解していただく必要がありますよね。外務省などはそれがやり易いポジションだと思うんですが。
小 形: ユニセフだからこんな仕事が出来て、寄付をいただく理由があるということをはっきり分かるようにしなければならないですね。
早 水: ユニセフの仕事はトータルなところなので、中間コストは全てユニセフの中で吸収しなければならないのです。集まった古着を日本から送る、というのは全体から見れば効率的なやり方ではないですよね。
それでしたらむしろ現地や周辺国で生産して毛布を買う方がトータル的にはコストも安く、効果が大きいじゃないですか。且つロジもし易いですし、受け取った方もメンテナンスがやり易い。
そのへんはある種専門的な話になってしまうんですけど、そのくらいしっかり踏み込んでドナーの方には説明をしていく必要があるのかもしれません。
事務局: ロジスティックスなどのお金がかかりますよというのと、もう一つはそこに仕事が産まれて地場産業の発生につながるという事もありますよね。
早 水: ローテクでもいいからそのノウハウが地元にスキルとして定着するという事もあるんですよね。それが自立に繋がっていくわけです。ユニセフの井戸作りも10年以上かかって行っているのですが、あの井戸を一つ作り上げて今の形にするのにも色々な経験をしているんですよ。
それの一番重要な事は、地元のコミュニティーがそのメンテナンスも出来るという井戸でなければ駄目だという事なんです。そこに突然プロフェッショナルな人が来て、スイッチを押すだけで動くポンプを作っても意味はない。それは半年もつか1年持つかで結局その後は使われなくなってしまう。
そうではなくて、先々のコミュニティーの自立を促す為の起爆剤として井戸を提供し、地元にそのノウハウを残していく為には井戸掘りも出来ることなら、1日数ドルの日当を支払ってでも現地の人にそれをやってもらう。そうする事で井戸の構造をみんな理解するし、どうやってメンテナンスしていけば良いかのノウハウも自ずと分かっていくという事なんですよ。教育も正にその例だと思うんです。
小 形: 一番難しい分野ですよね。
早 水: そのとおりです。実際ユニセフが単独で教材作りやカリキュラム作成を手がけることは、まずありません。
それはその国の今までの伝統があり、現在見直している彼等なりの過去への反省もあると思いますし。それをいかに次の世代の子どもの教育へインプットしていくか、彼等自身が考えなければならないのです。
だからこそ、ユニセフは現地の担当機関と協議・連携しながらカリキュラム作りをしていくわけです。
小 形: これから何度も考えて、試行錯誤することになりますね。
早 水: アフガニスタンのように、子どもたちが何年も教育を受けられなかった国では、子どもたちが配られた教科書で勉強してノートに書き、それを親に報告して、親もそれを見て更に子どもをエンカレッジしていくというプロセスを作り上げるのがまず第一の目的です。中身の問題は次のレベルの問題ではないでしょうか。
それがある程度までいけば、正に自立的にやって行く事になります。今はまだ、学校に行くという事はいったいどういう事なのかという段階かもしれませんね。
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対談03-1
帰還民センターでの予防接種。
対談03-2
女子教育も堂々と行えるようになった。
対談03-3
安全な飲料水は都市にもほとんど無い。
対談03-4
井戸があるだけ恵まれている環境。
対談03-5
子供たちが働き家族の生活を支えている。
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