対談
対談〜数字で表れてこないユニセフ活動の本質〜 - 1234 -
財団法人 日本ユニセフ協会 事務局長 早水 研
外務省 大臣官房海外広報課 小形 友子
(元)総合外交政策局 国際社会協力部人権人道課
FNSチャリティキャンペーン事務局 赤澤 幸弘
事務局: 今回の現地視察で感じた事は、国連ってすごい組織だなって思いました。国連のあらゆるセクションが集結し、その組織はあらゆる国の人々によって構成されており、更には様々なNGOとリンクしてコントロールし、システマチックに支援活動が行われている事には大変驚きました。
小 形: 凄い底力がありますよね。
事務局: 担当セクション間には様々なギャップが生じていて大変な事になっていますが、それは全ての部門で支援材料(人間や文化の違いも含めて)が不足しているので仕方のない事は理解できます。
その中で一番驚かされた事は、他のセクションにクレームをつけている人々も相手の状況を把握している点と全てのセクションが同じ目的意識をもって意思統一されている事でした。
小 形: ロジスティックの強さとセキュリティーチェックの強さも凄かったですよね。何も無い所で物を揃え、働ける体制を短期間で整え、人間も安全も確保する…。あのノウハウは普通の組織では考えられないものがあります。
早 水: 昨年末の空爆が始まったばかりの11月には、ユニセフのアフガニスタン人スタッフは70名だったんです。
しかし、今年7月の視察時に聞いたら300名に増えていました。オフィスも当時6ケ所でしたが、先日地図見たら倍の12ケ所に増えていました。この短期間でそれだけ見てもロジスティクスの強さとノウハウの大きさがわかりますね。現地で見てわかる通りに全てがセンターからのロジというスタイルは絶対不可能です。
まずは各ローカルな拠点にいかに人を送って、そこから先はコミュニティーでありNGOであり、次はそこに司令官が必要になります。その数は6ケ所では絶対に足りないでしょうね。
小 形: NGOの活動はわかり易く、現地のニーズにきめ細かく対応することができるという評価をよく耳にしますが、NGOの活動の特色は、まず目の前にある具体的な問題に取り組むといった現場に即した直接的な活動にあると思います。
事務局: それに対してユニセフを初めとした国連の各セクションがプロデューサーとういう立場で戦略を組み、現場に近いポジションでNGOの人達がそれを形にし、そして全体最適を構築するといった構造がきちんとできている様に感じました。また、国連の各セクションや各NGOの人達もそのスタイルを十分に把握している様でした。
早 水: そうですね。もちろん不具合や意思疎通を欠いているところなどいっぱいあると思うのですが、それは全体が不足しているわけだから仕方がないですよね。それを越えたところで何かしら皆が理念を共有しているので、少々のトラブルが起こったところで先へどんどん進めるというスタンスだと思います。
NGOはNGOでやはり彼らの強みがあって、そこの分野で自分達はここをやるよと言ったらそこは徹底的にやる。そして、それ以外の部分で何かが必要になったら、ある程度めどがついた時点で次に行くという話になるわけですよ。
事務局: 縦のシステムだけでなく、横断的なプロジェクトもしっかりできていますよね!
どこの国がどこの部分をどの様に支援するか、あるいは任務も細分化されていてどのNGOがどの様な任務を行うのかといった事が詳細に決められていますよね!
更には権限と責任が明確に委譲されている様に見えました。地雷撤去作業1つを見ても、このエリアはどの国がやりますよって国単位で決まっていたり、医療もそうですよね。
小 形: でもドナーの調整も大変なんですよね。
早 水: そうですよね。やはりドナー国それぞれの利害もありますからね。
小 形: ドナー諸国は、国民に対する援助の成果についての説明責任という観点から、自分たちの支援を目に見えるものとしてアピールすることに高い関心を持っています。ただ、支援を受ける国や機関の側がその様なドナーの関心を踏まえながら実際に支援を調整するのは本当に大変だと思います。
早 水: その点での議論になると、ユニセフって政府にせよ民間にせよ全部ボランタリーなコントリビューションでやっているので、それに対するフィードバックは徹底されていなければいけないのです。それがアカウンタビリティーですから。説明責任的なものが組織として上から下まで統一されてるのはユニセフの強い特色です。
小 形: ユニセフでは、総収入の中で民間募金の占める割合が大きいので、そのような意識があるのでしょうね。民間募金は、個人の意思に基づいて行われますので、寄付をされた方の気持ちに応え関心と信頼を確保するためには、その貢献の効果について各国政府に対するよりも更に具体的な情報の提供といった、きめ細かなフィードバックが必要となります。
- 1234 -
対談写真01-1
ユニセフの車
対談写真01-2
各国が地域を分担して決死の地雷撤去作業が行われている。
対談写真01-3
ハイウェイの両サイドに並ぶ赤白に塗り分けられた石。白の内側は地雷撤去が終了した安全な場所、赤石の外側は果てしなく続く地雷原。
対談写真01-4
アフガニスタンのトップへ戻る
copyright