巻上公一 |
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あれれっ、ブーメランのように指名が戻ってきました。びっくりです。 でも今回の羊のお話は、もっとびっくりです。
第30回の山下康さんが、シダのどこに羊が潜んでいるのかと書いていたのに、ちょっと心当たりがありました。そこで昔読んだ澁澤龍彦の「幻想博物誌」を引っ張り出しました。 ありました。「スキタイの羊」です。 澁澤さんは、14世紀に書かれたオデリコという宣教師の「東方紀行」という書物の中の「一頭の仔羊大の獣が生まれるメロンについて」を紹介しています。 「カディリと呼ばれる大王国には、カスピ山脈(現在のコーカサス山脈)と呼ばれる山々があり、この地には、非常に巨大なメロンが生ずるそうだ。メロンは熟すると二つに割れて、そのなかに一頭の仔羊ほどの大きさの小動物が見られるという。だから、このメロンは果実と、果実のなかの肉とを持っていることになる。」 一説では「スキタイの羊」はバロメッツと呼ばれることがあるとのことで、これは中国の北部に自生するシダの一種を意味するんだそうです。 ぼくはこのお話がとても気に入って、ヒカシューの「私の愉しみ」というアルバムの中の一曲目の曲名に「メロンの中の羊」というタイトルを付けました。 澁澤さんは、19世紀に書かれたヘンリー・リーの「タタールの植物子羊―ワタの木の不思議な伝説」という研究書において、それは綿のことだとしていることに不満を呈しています。やっぱり羊歯の方が似付かわしいと。ちなみにヘンリー・リーのこの書物は作品社から「スキタイの子羊」というタイトルで日本語訳が出ています。その中には、なんと16世紀頃それを食べた男爵が紹介されています。 「この植物には血もあるが、本当の肉の代わりにカニの肉のような物質を有しており、ひづめも子羊のそれのように尖ってはおらず、味はたいへんに美味だった」とのこと。 なんだか頭の中に羊が繁殖してきませんか? 次はこまっちゃの多田葉子さんはいかがでしょう。 |
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ミニ知識 スキタイは紀元前8〜7世紀に、中央アジアから南ロシアに移住してきた遊牧民族のことで、ケルトと繋がっているとの不可思議な説もあるほどロマンを感じる民族です。 巻上公一プロフィール ヒカシューのアルバムがニューヨークのレーベルTZADIKから10月に発売になります。24年間の超レアトラックスから最近のライブまでを網羅した「ヒカシューヒストリー」という作品です。 先行発売ライブか10月14日渋谷エッグサイトであります。 http://www.makigami.com/ それから10月20日から口琴映画「トルンピ」と口琴ライブを2週間に渡ってBOX東中野で展開します。たま、時々自動、関島岳郎、アントン・ブリューヒンなどなど豪華です。お楽しみに。 9月16日の先行上映会には、こまっちゃクレズマがライブをします。 http://www.makigami.com/trumpi/ |
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