<< つぎのひと
第32回(2001.08.22)
まえのひと >>

岸野雄一

さてさて永田一直くんのエッセイに引き継いで書いてるんだけどさ、羊が登場する歌として60年代に北原謙二が歌った「羊を数えて夜があけた」という曲が大好きなんだ。内容は、ケンカしたまま家に帰ってきて、あの娘のことが気になって眠れない。しょうがないから羊を数えていたら、いつのまにか羊があの娘に見えてきた。という他愛ないものなんだけど、歌の中に登場する「ワン、ツー、スリー、フォー」という歌詞の部分が、まるで催眠術の掛け声みたいでとてもファンタジックで好きなんだ。あまり聴かれる機会のない歌だけど、僕が永田君と一緒に開催してるDJイベントでよくかけているので、機会があったら聴きに来てね。

ところで夢の中に出てくる定番の場所ってあるよね。現実には何処にもない場所なんだけど、夢の中には必ず現れる場所。起きているときは忘れているんだけど、眠りかけの、睡眠の浅い状態になると現れて来て「ああ、今日の夢の舞台はあそこかあ」なんて思い出せる場所。それはきっと何処かに存在すると思うんだよね。だって毎回同じなんだもの。一時期その場所の地図を作成しようとしたことがあって、枕元に大きな紙を用意していたんだ。「あの丘の向こうに団地があって坂を降りるとおなじみの店があって、、、よしよし」と、覚えているうちに描き込む習慣をつけて、段々と「夢の地図」は大きく正確に記述されていった。でも日によって地図とおりではない例外が登場してくるようになる。「あれ?いつもの団地に行くのに今日は山を二つ越えなくちゃ行けないのか」といったように。結局、夢の中の「いつもの場所」って、曖昧でその時々によって位置が変わってしまうみたい。あれらの場所は本当は一体どこなんだろう。僕は時々、町を歩いていて、現実の中で知っているはずの風景が、ふと夢の中の地図のように変わってしまう恐怖を感じることがある。それは怖さと地続きではあるけれど、ちょっと気持ちがふわっとして、気持ちのよい瞬間でもあるんだ。で、そんな感じを人に起こさせるように、自分の表現のなかで心掛けているってわけ。

というわけで、次のエッセイはこういった「羊の話」には事欠かない巻上公一さんが再び登場です。今度はどんな話(ネタ)を披露していただけるのか楽しみ…。


岸野雄一プロフィール

63.1.11東京生まれ。著述、俳優、声優、講師、音楽制作と多岐に渡る活動を包括する肩書きとして「スタディスト(勉強家)」を名乗り活躍中。ヒゲの未亡人に扮したミュージカル仕立てのライブで本領発揮。よく「外国のアニメみたいな声」と評されることが多いので、ぜひともアニメの吹き替えをやってみたいのです。誰かやらせて下さいませ。

HPのアドレスは
http://www.geocities.co.jp/MusicStar-Guitar/4327/

<< つぎのひと

まえのひと >>


バックナンバーを見る


コピー禁止 このページに掲載されている写真はすべて著作権管理ソフトで保護され、掲載期限を過ぎたものについては削除されます。無断で転載、加工などを行うと、著作権に基づく処罰の対象になる場合もあります。なお、『フジテレビホームページをご利用される方へ』もご覧下さい。
著作権について