•  フィギュアスケートの全日本選手権は26日、長野市のビッグハットで開幕した。来年3月の世界選手権(中国・上海)などの代表選考会を兼ねた同大会には、日本のトップ選手が集結、限られた代表のイスを懸けて熾烈な戦いを繰り広げる。初日の男子ショートプログラム(SP)では、2007年の髙橋大輔以来となる全日本3連覇を狙う羽生結弦が、国際スケート連盟(ISU)の公認記録にはならないものの、今季自己最高得点となる94.36点で首位に立った。2週間前のGPファイナルで日本人史上初の2連覇を飾った羽生だが、中国杯での衝撃的なアクシデントからまだ1カ月半しか経っておらず、コンディションは万全の状態ではない。そんな中でも、五輪王者の実力は揺るがないようだ。冒頭の4回転トーループで鮮やかなジャンプを決めると、カウンターターンから入るトリプルアクセル(3回転半ジャンプ)もキレを見せて、GOE(出来栄え点)では最高の3点がついた。しかし、今季の課題となっている3回転ルッツからの連続ジャンプでは、ルッツジャンプで前のめりに着氷して2つ目のジャンプは2回転トーループにせざるを得なかった。昨年は103.10点という驚異的な高得点を叩き出したが、今年は大台を超えなかった。

     「今回もルッツジャンプの失敗はありましたが、まずまず臨機応変にできてまとめることができた。この点数で満足しないようにしっかりと自分を高めていきたい。全日本独特の緊張感というか、周りが日本人の選手なのでいままでと違った緊張感がありました。今日は今日、明日は明日。一つひとつやっていきたい」  27日のフリーについては気負わずに臨むという羽生の視界は良好のようだ。


  •  その羽生をぴたりと追いかけているのが、最終滑走でノーミス演技を披露した町田樹だった。冒頭の4回転トーループ+3回転トーループの連続ジャンプをきれいに決めて波に乗り、情感たっぷりのステップを踏んで観客を魅了。演技後はやり切った満足そうな顔が見られた。苦手なスピンでレベルを取りこぼしたこともあり、合計90.16点で羽生に次ぐ2位だった。

     「オフシーズンからこれ以上ないほど準備をしてきたので、あとは全てにおいて全力を尽くすのみ。今日のSPは完全無欠の状態ではなかったですけども、今シーズン4試合目にして一番思いを乗せる演技をすることができたし、すべてにおいて悔いはなく出し切れた演技でした。このSPは自分でもとても好きなプログラムです。フリーの『第九』は全日本のために作ったと言っても過言ではないプログラムですし、シーズン最初にファンの方たちに全日本で僕の『第九』を見に来いと言ったからには、最後まで全身全霊を懸けて演じ切りたい。自分で大きな壁を作りましたけど、それを乗り越えられたら自分の思う『第九』という作品ができると信じているので、「人事を尽くして天命を待つ」気持ちです」

     やるべきことをやってきた自分を信じ切れれば、町田に勝利の女神がほほえむはずだ。


  •  この2トップを脅かしそうな楽しみな逸材が躍動した。SP3位につけた17歳の宇野昌磨だ。先のジュニアGPファイナルでジュニアの世界歴代最高得点を更新して初制覇した全日本ジュニア王者は、独特の雰囲気を醸し出したミスのない演技を見せて、合計85.53点をマークした。今大会には11年の14歳から5度目の出場となる宇野は、SPで初めて入れた4回転トーループを成功させるなど、緊張して様子も見せずに堂々と滑りきった。フリーでもミスのない演技ができれば、表彰台に立つチャンスは高い。そうなれば、11年大会で同じ17歳のときに羽生が銅メダルを獲得した以来の快挙となる。

     「ジャンプばかりに気を取られて表現しきれなかったのが心残りで、ところどころ満足いかないところがあった。いい点が取れたことは嬉しいが、まだまだやれることがあると思いました。いい演技をすれば得点はついてくると思うので、フリーも満足いく素晴らしい演技をして見ている人に感動したと言ってもらえるようにしたい」  秘めた闘志を燃やしていた踊れるスケーターに大きな期待が懸かる。

     先のNHK杯で初優勝を飾った村上大介は合計81.28点で4位につけたほか、5位には合計78.54点の無良崇人、6位には合計72.39点の小塚崇彦、ジュニアGPファイナル銀メダルの14歳山本草太は合計67.19点の・・・7位と健闘、フリーでの演技にも期待したい。