数々の有力選手を指導する長光歌子先生が
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歌子の部屋

番外編

辻麻希選手インタビュー

1985年04月27日生まれ。6歳でスピードスケートを始める。ソチオリンピックでは500mと1000mへ出場し、2017年世界スプリント選手権総合6位。現在もナショナル強化選手として第一線で活躍している辻麻希選手にインタビューをしました。(インタビュー日:2020年9月16日)

辻麻希選手

辻麻希選手

辻選手のスケートについて

■スピードスケートの「ここが難しい」「ここが面白い」を思いつく限り教えてください―

 陸上で抜群のパワーや技術を兼ね備えていても、氷上では必ずしも全てを発揮出来るわけではないところが難しいところだと思います。
 幅数ミリのブレードの上にバランスよく立たなくてはいけないうえに、それを上手に使ってスピードを作っていく事は本当に難しいです。また、自分に合うブーツや自分に合うブレードを見つけるのもなかなか難しいですね。私は何度も新しいブーツを試したりしましたが、結局10年以上前に作ったブーツが一番しっくりくるので、今でもそのブーツを修理しながら使っています。
 自分の足を使って時速50キロ以上のスピードを出せることは魅力ですし、滑っていて楽しいと感じられる部分だと思います。
 観戦される方は、ゴールタイムだけでなくラップタイムにも注目してもらえると、さらに違った面白さを味わってもらえるのではないかと思います。

■練習中や競技中に感じる楽しかったり苦しかったりする事を教えてください―

 正直、トレーニングはほとんどが辛いし苦しいです。スケートの選手は氷に乗れない夏場はオフだと思われている方が多いと思うのですが、3月中旬から下旬頃にシーズンが終了した後、遅くても4月の中旬には本格的にトレーニングを再開するので、オフの時期は本当に短いです。
 そして夏場の体力づくりの期間は自転車を使ったトレーニングやウエイトトレーニングで身体をとことんいじめ、インラインスケートやスライドボードを使って技術練習もします。やらなくてはいけない練習がたくさんあって本当に毎日ハードで辛くて苦しいです。
 正直トレーニングは嫌いです(笑)。それでも最近はその辛さや苦しさそのものも楽しむようにしています。そしてその辛いトレーニングを乗り越えて、試合で結果を残せた時には本当に気持ちいいです!

ウエイトトレーニング

ウエイトトレーニング

■滑走中はどんなことを考えていますか―

 レースの時はスタート地点に立った時点で無です。色々と考えてスタートしたレースはだいたい良くない結果になるので(笑)。
 練習の時には毎日意識するポイントを決めて、徹底的に直すよう心がけています。

■ここはほかの選手には負けないというストロングポイントを教えてください―

 スタートの反応から加速の部分は誰にも負けない自信があります。
 もともとスタートは苦手だったのですが、ある時先輩からの助言でスタートの構えを変えたんです。それをきっかけにスタートが速くなりました。自分の構えやすい位置、スムーズに一歩目を出せる位置、号砲と同時に反応出来る位置、全てが一致したんですね。毎年少しずつ改善はしているのですが、スターターの方がいつも出やすいタイミングで鳴らしてくださるので、私はそれに合わせて反応するのみです。
 また、たくさんの経験がある事は強みかと思います。ジュニア時代から全国大会の優勝や世界大会を経験させてもらい、社会人になってすぐにワールドカップの初代表になる事が出来ました。順調に成長出来たかと思えば、オリンピックの代表にはなかなかなれず2度落選、ようやく2014年のソチオリンピックに出場出来ました。その後もワールドカップの年間ランキングで2位になることが出来たりと順調にいったかと思えば平昌オリンピックでは再び落選…。誰よりもオリンピックへ行く難しさを知っていると思います。良い時も悪い時も経験しているからこそ、どんな状況下でも這い上がっていける力は持っていると思います。

■今シーズンの目標を教えてください―

 怪我なく、スケートそのものを存分に楽しむ!そのうえで、昨シーズンの自分を超えることです!
 ここ2シーズンでは、目標としていた世界距離別選手権前に負傷してしまい、思うように調整が出来なかったり、思うようなレースが出来なかったりしていたので、まずは怪我をしないでベストな状態でレースに臨むようにしたいです。
 今年は新型コロナの影響でワールドカップ前半戦が全てキャンセルになってしまい、後半戦もまだわからない状況にはありますが、まずは国内戦でしっかりとスケートを楽しみつつ結果にもこだわり、今までとはまた違った辻麻希を皆様にお見せ出来るようにしたいです。

自転車で登坂インターバル

自転車で登坂インターバル

長光歌子(ながみつ うたこ)
長光歌子(ながみつ うたこ)