数々の有力選手を指導する長光歌子先生が
フィギュアスケート界を楽しく語ります!
歌子の部屋
番外編
菊池純礼選手インタビュー
1996年1月15日、5人姉妹の末妹として長野県に生まれる。2012年のユースオリンピックではスピードスケート・ショートトラックの両競技でメダルを獲得、平昌オリンピックではショートトラック競技の日本代表に選ばれた。現在も性質の異なる両競技に積極的に出場している。(インタビュー日:2020年8月6日)
2020.8.31
■菊池純礼選手/直筆サイン。次ページ以降もご本人提供の写真を掲載しています。
はじめに
いま世界は混乱の中にありますが、自分の好きなこと、スケートができる幸せに改めて気付かせて頂き感謝の気持ちでいっぱいです。スケートを通じて、今を頑張る人たちと一緒にこの困難に立ち向かっていきたいと思います。
つらいこと、大変なこと、日々状況は変わりますが、この変化を乗り越えたその先にみんなで手を取り合い笑いあえる日常が戻ってくると信じています。一緒に前に進んでいきましょう!
ショートトラック・スピードスケートの違いについて
■ショートトラックとスピードスケートは全く異なる競技ですが、選手として感じる一番の違いはどんな所ですか―
ショートトラックは着順を争う競技です。激しいボディコンタクトはもちろん、戦略、技術、運など不確定要素が多くゴールラインを切るまで一瞬も気を抜けません。その臨場感が魅力です。
対してスピードスケートはタイムを争う競技です。選手は自分と向き合って、いかに限界まで力を出し切れるかが大事になるので、個人のドラマが感じられて、その選手のドキュメンタリーを見るような面白さがありますね。
■ショートトラックとスピードスケートの500mは同じ距離だと感じますか―
スピードスケートの500mの方が断然短く感じます!
ショートトラックの500mでは4.5周を他の選手の動向や戦略を考えながら滑りますが、スピードスケートの1周と100mは、自分の滑りをすることで精一杯です。また私の場合は、スピードスケートの最初の100mではトップスピードにまで至っていないことが短く感じる要因の一つだと思っています。
■どんな部分をもう一つの競技に活かすことができますか―
ショートトラックでは直線やスタートダッシュの精度が向上し、無駄に力まずスピードコントロールができるようになりました。
スピードスケートではカーブでの加速やスピード維持にショートトラックのコーナーリングが活きています。
2つの競技は異なるようで、やはり同じスケート。互いに活かせる部分が多くあるなと感じています。一方の競技での「気づき」をもう一方でもトライでき、新しい発見が多いというのも2競技に取り組む強みだと思います。
■2つの競技の両立をするうえで一番苦労するところはどこですか―
競技環境です。
現在ショートトラックナショナルチームに在籍し、長野県・野辺山を拠点に活動していますが、スピードスケート競技のできる一番近い400m屋内リンクまでは、車で2時間弱かかります。国内には例がありませんが、いつか400mリンクの内側でショートトラックが滑れるようになって両方の競技に取り組みたいと思う選手が増えたらいいなと思います。
■2つの競技の面白いところ、難しいところを教えてください―
ショートトラックは選手が縦横無尽にリンクを滑るところ、ボディコンタクト、転倒など白熱のレース展開で、最後まで誰が勝つかわからないハラハラ感が面白いですね。逆に一瞬の迷いや判断ミスが命取りになりますし、毎回状況が違うのでレースの組み立てが本当に難しいですね。また、予選から4レースを勝ち進み、決勝戦で自分のベストパフォーマンスを発揮できるように持っていく事も難しいと感じます。
スピードスケートは、シンプルに自分の限界に挑戦できるのが面白いです。また観戦する側としては、選手のラップタイムを追いながらどれくらいのタイムでゴールするか予想する事も面白いです。しかし、ショートトラックと違い1人でレーンを滑るのでペース配分は難しいと感じます。
■短距離種目の滑走中はどんな事を考えていますか―
両種目とも、自分が安定したパフォーマンスを発揮することを一番に考えています。コース取り、歩数を入れるタイミング、直線の押し、一つでも崩れるとうまくスピードに乗れません。
あとショートトラックに関しては、他の選手のコース取り、抜きに来る気配はあるか、どのタイミングで勝負をかけに行くか、チャンスが何度もやってくるわけではないので、チャンスを見逃さないように心がけています。
- 長光歌子(ながみつ うたこ)