髙橋大輔選手シングルでは最後の全日本となりましたが、演技はどうでしたか

　とにかくずっとコンディションが良くなかったので、少しずつ練習ができるようになってきたのが全日本の3週間前くらいでした。あのショートプログラムは激しくてきついので、全部ランスルー（通し練習）してしまうと次の日練習ができなくなってしまいます。なのでパートごとに練習をしてつなぐという形で、実は本番まで一度もランスルーしていませんでした。本番で、身体の状態が良く、すべてのエレメンツがミスなく出来たらなんとか行けるかもしれないと、わずかな期待を持っていましたが、アクセルが空中分解した時には「あ、これは最後までもたないな」と思いました。でも、よく最後まで滑り切ってくれました。ステップもレベル２でしたし、スピンも残念な感じでしたが本当にフリーに行けて良かったです。大輔も言っていましたが通過できないかと思いました。もっといい状態で皆さんに見ていただけると良かったのですが。ショートプログラムが終わった後、話題にも上らないだろうと思っていたのですが、メディアの方も温かく書いてくれたり、観客の皆さんの反応も良く、SNSでも褒めてくださったので勇気をもらいました。
　フリーももうちょっとできて欲しかった。「最後までよく滑り切ったね」と大輔には褒めましたが、皆様にはもっと良い演技を見ていただきたかったです。でも前回は世界選手権に出れずにそのままフェードアウトしてしまいましたから、本人はできればちゃんとご報告をして皆さんの前で締めくくりたかったのだと思うので、今回はそれができたことが良かったと思います。本当にショートプログラムで通過できなかったらどうしようかと思いました。また、フリーの滑走順は運よく２グループ目の最後で整氷前でしたので、皆さんの温かい声援を頂いたり、あの花のサプライズをしていただけたりという時間が生まれました。他所に行っても良いのに大輔は最後までうちのチームで居てくれて感謝しています。最後までやり続けてくれました。

全日本選手権、歌子先生が考えていたことは

　全日本の前の週はそろそろ調子が上がってくるころかと思っていましたが、思ったより上がってきませんでした。そして明けて月曜日はまた最悪なコンディションだったのですが、そこからエッジの位置を変えたりして、火曜日はちょっとマシな感じで滑って、水曜日に会場入りをしました。そうしたらアクセルですらパンクが多かったのが、ほとんど外すことなく降りて、練習の最後には4回転も降りてしまったので、大輔は本当に凄いなと思いました。渡部トレーナーも「今までの中で一番身体がいいですよ」とお墨付きでした。ですが、今シーズンはやはり積み重ねたものがなかったので、公式練習で終わってしまいましたね（笑）ショートプログラムの日の朝、練習の時に髭は剃らないのかと聞きましたが濁されてしまいました。フリーで剃ってきたので良かったです（笑）

キス・アンド・クライでのサプライズについて

　あれは泣きそうになったので、ものすごく我慢しました。前の日に大西先生が山田さくら選手に桜の枝の素敵なサプライズをしているのを見て、私も大輔に何かしてあげないといけないかな、まあまだショーもあるし良いかと思っていたら、あんな風に向こうが花束を差し出してきたのでびっくりしてしまいました。泣きそうになってしまいましたね。でも他人の事だと泣けるんですけれど、自分の事だと我慢してしまいます（笑）
　去年フジテレビの番組で、ソチの時のフリーの映像を見た時、思わず泣いてしまいました。今回のも後で一人で見たら泣いてしまうかもしれませんね。泣けなかった理由をもう一つ上げるとしたら今回の公式練習で大輔は真の底力を出し意地を見せてくれましたが、今季色々な事情が重なったとは言え、本番で本来の大輔の演技ができるよう持ってこれなかった自分の力のなさを感じ、大輔がこの演技で終わる事への無念さと、観客の皆様への申し訳ない気持ちとで、泣けなかったのかもしれません。

ショートプログラムの振付について

　最近はショートプログラムもみんなスローテンポな曲を使いますよね。大輔自身も去年のショートプログラム（The Sheltering Sky）がゆっくりだったので、最後はちょっと「ダンサブルに早く」というのをシェリル（・ムラカミ）さんに伝えたら、本人も予想以上に速くて「あ、これか～」と、びっくりしていました。私も初めてアメリカから届いた動画を見て、あまりにも激しくて「ジャンプもスピンも入らないでしょこれ！」って思いましたね（笑）

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